条件付きスキル「スキル吸収」を駆使し、冒険者から成り上がれ

ノベルバユーザー538903

38話 バラ

徹夜でデザインを考え、制作してもらいネックレスがついに完成した。



そして、また王城に呼ばれる。



アスランは、イヤそうにナデルに話かけ、

「ねぇ、今回は僕はいらないと思うんだけど。渡すだけだよね」

「まぁ、まぁ、アスラン君。献上するだけと思っていたんだが、アスラン君を一緒に連れてこいと言われれば、逆らえるわけないでしょ」



こうして、ナデルと一緒に王城に入り応接室まで案内された。

応接室で待っていると、



バタン



凄い勢いで扉が開かれ、

「アスランできたんですわね。早く早く」



後ろにいるベルトラン王やエリーナでさえ驚いている

「お、お母様?王妃としての嗜みはよかったのですか?」

「ここでは、いいのですわ。2週間も楽しみに待っていたのですよ」



アスランは冷や汗をかきながら、

「あの、プレッシャーが凄いんですが?」

「大丈夫よ。アスランですから。お母様に見せてあげて」



エリーナからの謎の信頼を受けとって、ネックレスを見せる。



見せられたネックレスは、咲いたバラの花の中心にピンクの大きな宝石が埋め込まれていて、花の先端には小さな宝石が色とりどりに絶妙なバランスでつけられ、見事な技術で綺麗に美を表現している。



「す、すごいですわ」

「う、美しいですわ」

「神秘的ですわ」

「ここまでのネックレスのデザインを見るのは余でも初めてだな」





みんなの反応を見ながら安心したアスランは、

「次はベルトラン王のネックレスですね。こちらになります」



ベルトラン王には、六角形の中に☆を描き、その中心には大きな虹色の宝石をはめ込み、星形の先には魔法属性の色を表した六つの小さな宝石がつけられている。そして武を示す意味で宝石を守る形で双剣を×の形にして飾られたネックレスを渡す。





「これまた凄いですわ」

「綺麗と凛々しさが共存してますわ」

「デザインも凄いが、これを加工する技術が素晴らしい」



それぞれが絶賛しながらネックレスをつけた。



「貴方、どうかしら」

「素晴らしいな。エリネスの美しさが一段と際立っている」

「貴方も素敵ですわ。こんな圧倒的な存在感のあるネックレスは見たことないわ」





アスランは小声でナデルに

「僕、もう帰っていいですか?」

「ダメに決まってるでしょ」



小声でそんな会話をしていると、

「アスラン、よくやった。この二つのネックレスは3年間の特許をやろう。しかし、始めの1年間はナデル商会であっても取り扱いを禁止する。実際には2年間の特許期間だな。しかし、始めの1年間は売上にならないお詫びに、アスランとナデル商会に白金貨50枚ずつを褒美に渡す。それで納得してくれ。」



「もちろんでございます。感謝致します。」

「え、白金貨50枚?5000万ギルですよ?貰っていいのですか?」





ベルトラン王はニヤリと笑いながら、

「このネックレスにはそれ以上の価値がある。遠慮するな」

「そうよ、アスラン。私達が1年間独占するのだから遠慮なく貰いなさい」

「有り難うございます」



「ところでアスランよ、これからもネックレスのデザインはするのか?」

「簡単に加工できてオシャレな物にはしますが、今回の様な一点物はしないと思います」



「そうか。それは助かるな。では、デザイン者の名前は隠していた方がいいな」

「それは助かります。宜しくお願いします」

「ナデルもよいな。あと、鍛冶師に白金貨10枚と紫綬褒章・加工技術A級を授ける」

「有り難うございます」



ベルトラン王は上機嫌で、

「これでナガラ商会もさらに忙しくなるな。ところで、鍛冶師はナガラ商会が雇っているのか?」

「それが、鍛冶師はルリと言う者なのですが、雇っているのはアスラン君なのです」



「アスラン、またお主か?」

「また…と言われましても。店が潰れて困っているところを腕を見込んで雇っただけです」

「そうですわ、私達も一緒に話を聞きましたわ」



「そ、そうか。ところで冒険者登録はできたのか?」

「冒険者ギルドとの打ち合わせも終わったそうで、間もなく冒険者登録できると聞いています」



「時間がかかっているな。後で大臣に聞いて急がせておこう」

「有り難うございます」



こうして、予定外の褒章を貰い、来た時とは打って変わって帰りはご機嫌なアスランであった。





場所は変わって、アクセサリー製作所の鍛冶場にて



「良かったなルリ」

「え、いきなり何ですか?」



アスランはニヤリと笑い

「王様と王妃様が大層喜んでいたよ」

「それはよかったです。安心しました」

「ついでにルリにも褒美がでたから、渡しとくね」



白金貨10枚に紫綬褒章・加工技術A級の証明書を渡す。



「な、なんですかこれは?」

「え、1000万ギルと紫綬褒章だけど」

「そんな簡単に言われても」

「ルリの技術が評価されたんだよ。その調子で固有スキルも伸ばしながら頑張って」



ルリは目に涙を溜めながら、

「は、はい。ホ、ホントウにアリガトウゴザイマス」



それを嬉しそうに見ながら、

「あ、あと給料アップね。それに紫綬褒章・加工技術A級の技術者であれば、独立した方が稼げると思うから好きにしていいよ」



涙を溜めた目からは、次第と驚きに変わり、

「え、ずっとここにいますよ。商売のことを考えずに好きなことをやれて、こんな素敵なデザインのアクセサリーを作れる私は幸せ者ですよ。一生ついていきますよ」

「ま、まあ、それならいいけど。何かあったら遠慮なく言って」

「有り難うございます」

 

ルリは心の中で、アスランに感謝しながら、いつか絶対に恩をかえそうと決意したのであった。

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