条件付きスキル「スキル吸収」を駆使し、冒険者から成り上がれ

ノベルバユーザー538903

34話 総合部門2

そして、最終試合リベリア王国vs獣人連合国の試合は始まった。





先鋒 オリバvsニケ(タイガー種・トラ)  試合始め



両者一斉に走りだした。ニケの方が身体能力が高く一気に間合いをつめて攻撃を開始。それをギリギリで躱し反撃するが、相手の方が速く徐々に攻撃をくらっていく。どうしようもないオリバは一撃にかけ、格闘スキルに魔力操作で魔力を腕に込め最大の速さで腕を振るった…。



………。



相手には一歩届かず、障壁の上から衝撃が伝わり地面に倒れたオリバがいた。



そこまで。勝者、獣人連合国



獣人連合国の応援席は歓声が上がっていたが、負けじとリベリア王国の応援席も盛り上がっていた。





「タイガー種相手に良く頑張ったぞ」

「後一歩だった。素晴らしい試合だったぞ」

「手に汗にぎる試合を有り難う」



負けたはずのオリバ選手にも拍手が飛び交っていた。





オリバは選手席に戻り、悔しそうに

「ごめん。全力で戦ったけど勝てなかったよ」

「気にするな。いい試合だった。後は僕とエリーナに任せて」



Sクラス全員が労い、クロードとエリーナに後を託した。





そして中堅戦の試合が始まる。



中堅 クロードvsミケ(タイガー種・ヒョウ)  試合始め



クロードは剣を逆手に持ち腰を据えて体制を整えるて待っている。

ミケは一瞬警戒したがクロードに向かって走りだした。



中間地点まで走ってきたミケに剣を一閃した。

ミケは横に飛び斬撃を転げながら交わした…が、横に飛んだことですぐには動けない。



クロードは躱したミケに間髪入れずに、な、なんと魔法を放ったのだ。

ミケは為すすべなく、驚きながら魔法をくらい、障壁が赤色に変わった。



そこまで。勝者、リベリア王国



実はクロードは斬撃を放つ振りをして剣を一閃しただけだった。

そして、相手が飛んで躱した瞬間に、用意していた魔法を放ったのだ。





獣人連合国は選手が負けたことに驚愕した。

逆にリベリア王国は勝てると思っていなかった試合に勝ち、クロードを称えるいる。

拍手や歓声がひと際大きくなるなか、クロードは選手の席に戻っていった。



「クロード、流石だね。おめでとう」

「有り難う。オリバの敵は討ったぞ」

「クロード、有り難う」

「素晴らしい試合でしたわ。最後は私の番ね」

「エリーナ、最後は任せたよ」



そうしてエリーナは試合会場に向かった。





最終試合、大将戦の試合が始まる。



大将 エリーナvsランゲル(タイガー種・ライオン)  試合始め



ランゲルは一気に走りだした。

それに合わせてエリーナは、2本のファイヤーアローを詠唱し放つ。



ランゲルは一本目を軽く躱し、2本目はなんとか横に飛び躱したが、スピードは落ちることなくエリーナに向かっている。



それを見たエリーナが必死に逃げるが、相手のスピードの方は速い。

もう間もなく追いつくというころで、エリーナは振り返り一瞬にして魔法を放ったのだ。



勝利を確信しているエリーナを余所に、ランゲルも驚愕しながら負けまいと最後の力を足に振り絞り、瞬間的に間合いを詰め拳を振るったのだった。





ドゴーン。



凄い音が響き渡ったあとには、しばしの静寂がおとずれた。



審判は間に入り、手をかざしながら、



「そこまで、勝者………」



「判定し審議とする」



エリーナも自分の障壁が赤く染まっていることに驚き、唇を噛みしめた。



応援席も何がなんだか解らずに判定を待っている。

しかし、時間が経つにつれて先程の試合を振り返っていた。



「おいおい、今年の一学年はどうなってるんだ?」

「振り返りながら魔法を使ったわよね?」

「じゃあ、逃げながら詠唱していたの?」

「凄すぎるだろ」

「いやいや、タイガー種も凄かったぞ」

「魔法を放つと判ってからの、最後のスピードなんてハンパないぞ」

「これは5学年の試合だったとしても驚く試合だぞ」

「最後、両者ともに凄い一撃だったわよ」





そして、5分経過したころに審判が戻り結果を発表する。

皆、固唾を呑み結果を待ち構えた。





両者渾身の一撃が放たれ、障壁が赤く染まるタイミングが同じだったため、エリーナvsランゲルの試合は引き分けとする。



1勝1敗1分となり、よって補欠選手による延長試合を開催する。

両国共に、選手を決め10分後に会場に上がってくるように。以上。





獣人連合国の選手席では、タイガー種が3人も出場して勝てないとは情けないなどの罵声も聞こえたが、勝負に勝つために誰を出場させるか真剣に話し合っていた。





一方、リベリア王国の選手席では、涙を溜めながらエリーナが、

「ご、ごめんなさい。ヒッㇰ。みんなに。ヒッㇰ。み、みんなの頑張りを、私が台無しに…うぇ~~~~ん。ごめんなはぁい。わ、わたくしが…ごめん…なさい。」



エリーナの声がかすれ、すすり泣く光景を見て全員でなだめるも、エリーナは泣き止む気配はない。

誰もが心を打たれ、いたたまれない気持ちになった。





アスランでさえも…、

こんなに一生懸命で、誰よりも責任感が強いエリーナが泣くほど悔しい思いをしているのに、僕は目立ちたくないという理由だけで責任を押し付けて、何が友達だ。ふざけるな。自分が情けない。

今さらだが、みんなと一緒に勝利を掴み取りたい。熱い感情が沸き上がり、全力で試合に挑むと決意した。



アスランは、みんなを見渡しながら、

「エリーナ良く頑張ったね。あの選手は1学年の実力を遥かに飛びぬけている。そんな中引き分けたんだ。胸を張れ。後は僕に任せてくれないか?みんなも僕が代表でいいかな?」





「アスランお前?いいのか?」

「ヒッㇰ。アスラン。」

「アスランがいいなら、誰も文句はないさ」

「アスラン様にお任せいたしますわ」



そっと空を見上げた後に、真剣な眼差しで一人一人を見て、

「有り難う。みんなの想いを一つにして全力で挑むよ」



アスランは試合会場に足を運んだ。



相手選手はすでに待っていた。



「お前も可哀そうだな。素行が悪くて補欠になっていたが、実力だけなら俺はランゲルと同等の実力なんだよ。ご愁傷様」

「ああ、確かにな。お前も後悔するなよ」

「ハッ、誰が後悔するか。恥をかかせてやる。お前のせいで敗北…クックック、非難・罵声の嵐だろうな」

「………。」



アスランは目を閉じ、エリーナのことを考えていると、



審判が駆けつけてきて試合が始まる。



延長試合 アスランvsジャカル(タイガー種・ジャガー)  始め





アスランは足に力を込め、足を上げたあとに大地に足を踏みつけた。

ジャカルは一瞬警戒したが、何も起こらないことで一気に走りだした。



アスランはそれを見て、後ろに振り返り選手席の方へ歩きだした。

ジャカルはさらに走る。



一歩一歩、ゆっくりと空を見上げながら歩くアスラン。



そして、ジャカルがアスランの開始の立ち位置を越えようとした時…、

アスランは拳を握り、凄い勢いで地面を殴りつけた。



ジャカルは気にせず走る。

後一歩でアスランに届くと言う距離で…審判が、





そこまで。勝者、リベリア王国。



ジャカルは何が起こったのか解らず止まった。



応援席や対戦国もがアスランを見て、その後ジャカルを見た。



そこには障壁が赤く染まったジャカルが立っていた。本人も解らずに首を傾げている。



応援席も各国の貴族達も訳がわからずに口ずさむ。





「スゲ~~~~。」

「何が起こったの?」

「鳥肌がたったぞ。マジか」

「あいつは何者だ」

「地面を殴ったように見えたが?」

「誰か説明してくれよ」

「リデリア王国の勝利よ」

「まさか、タイガー種が何もできずに負けたのか?」

「あいつは何をしたんだ?」

「ブラボ~~~~」

「頼むから誰か教えて」



審判は解説席に説明を求めた。

「こちら解説席です。こちらでも状況を把握している最中ですが…」

「ドケ。俺が説明してやる」



突如、試合会場に降りてきた人物を見て、応援席も貴族席も驚きながらも納得していた。



「俺はSランク冒険者のジョニーだ。今の試合の説明を簡単にしてやる。もし今の試合を見て解った奴は一流の観察眼持ちか魔法に精通する実力者だろうな。さて、詳しく説明したいがそれをすると彼の切り札を晒すことになる。だから一言で表すことにした。彼は魔法を使って攻撃したってことだ。以上。もしそれ以上の詮索をするのなら金を払ってでもするんだな。」



言い終わると、Sランクのジョニーは観客席へと戻っていった。



Sランクのジョニー様の確認により、アスラン選手の勝利は間違いありません。皆様盛大な拍手をお願いします。



リベリア王国側では大興奮だ。何が起こったのか解らないが、勝利の報告を受けると拍手や歓声が凄い勢いで響いていた。



「マジ、ヤベ~~」

「リベリア王国の勝利よ。やったわ」

「魔法で攻撃していたのか、素晴らしい」

「アスラン君って言うのね」

「きゃ~、結婚して」

「おい、今年の一学年はオール優勝じゃないか?」

「え、ほんとだ」

「今年の一学年はどうなってるんだ?」

「王国の未来は明るいな」

「よく頑張った。アリガト~ウ」





様々な声が響き渡る中、アスランは選手席に戻った。



「みんな、敵は討ったよ」



「アスラ~ン」

エリーナは一目散にアスランに抱き着いた。



「信じてたわよ。アリガトウ」



アスランはエリーナを支えながらも

「エリーナ、嬉しいけど恥ずかしいよ」



エリーナは真っ赤な顔して離れようとした時、エミリアやクロード達も抱き着いてきた。

全員でアスランを揉みくちゃにしながら健闘を称えたのだ。





「それにしても凄い試合だったな」

「ええ、アスラン様の本気を見せていただきましたわ」

「相手の国の驚きようが面白かったですわ」

「それにしても何をしたんだい?」



あ~、あれ?足で地面を踏みつけた時に魔力の塊を一面にばらまいたのさ。

その後に歩きながら詠唱し、地面を殴った時に魔法で地面からジャカルに攻撃したんだ。魔力を留める技術とタイミングが難しいけどね。



「そんな魔法をサラッと使いやがって」

「流石はアスラン様ですね」

「試合も終わったことだし応援席に戻りましょう」

「そうですわ。全部門優勝ですから、胸を張って戻りましょう」

「そうだね。先頭はエリーナだね」





エリーナを先頭に応援席に戻ると、案の定生徒達に揉みくちゃにされながらも健闘を称えられた。



アスランは本気を出し注目を浴びたが、みんなと一緒に優勝できたことが嬉しかった。

何よりもエリーナの涙が、アスランの心のすき間を埋めたことは間違いなかった。

こんな学園生活もいいもんだなと考えながら、5学年生の試合を見届けるアスランであった。


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