条件付きスキル「スキル吸収」を駆使し、冒険者から成り上がれ

ノベルバユーザー538903

16話 盗賊

王都へと向かう当日。

馬車に向かって歩いていると、馬車の前で待っている冒険者が見えた。

彼らはB級パーティの竜の瞳という5人のパーティだそうだ。B級だけあって装備も良い物を使っているのだろうか?今までの冒険者より良い装備にみえた。他にも少し離れた所にDランクパーティの5人も待機しており計10人が今回の護衛らしい。



アデールと冒険者が挨拶を終わると王都へと向かって進みだした。

今回はアドリーヌの希望によりハクは小さくなり馬車の中で一緒にいる。もちろん、アドリーヌの膝の上である。その隣にセレストが引っ付きながらハクを撫でているのだ。



その後もそんな後景を見ていたが、

馬車に乗っている時間は長く、本を読んだり、オセロをしながら数日が過ぎた。



アスランはオセロをしていたら、ふと疑問に思った。

オセロはあるが他の娯楽道具はあるのだろうか?



「父様、オセロ以外に娯楽道具は沢山あるのですか?」

「チェスと言った駒を使った物やトランプと言われる物があるぞ」



それを聞いて、アスランは日本で好きだった将棋を思いだす。

「父様、将棋なる娯楽道具はありますか?」

「ショウギ?ショウギとは聞いたことがないが、どの様な娯楽道具なのだ」

「いえ、僕も解らないのですが、街でその様な名前を聞いたような気がして…気のせいかな」



アスランは誤魔化しながら、将棋について考えていた。

トランプなども日本と同じ名前なので、王都で将棋を確認して無いようなら、今後作ることを考えてもいいかもな。その為にも商人と仲良くならないとな。黒い笑みを浮かべながらアスランは考えていると





ハクが馬車の扉の前に行き、外の森を見ながら吠えたのであった。

「ワォ~~~~~~~ン」

いつもの鳴き声とは違って、何かを訴えているように感じる。



冒険者が慌てた様子でその方角を確認すると

「森の木々がすこし揺れている、総員戦闘準備」



慣れているようで竜の瞳のリーダーが声を張った。

数秒後森の中から人影が見えた

「盗賊だ。フォーメーションBだ。ただちに殲滅しろ」



馬車の護衛と残りは前衛と後衛に分かれて動き、盗賊との戦闘が始まる。

「盗賊の人数は倍だ。前衛時間をかけろ。後衛は弓と魔法で的確に狙え。相手の弓は結界で対処しろ。俺がすこしずつ人数を減らすから無理はするな」



冒険者の戦闘を馬車の中から見ていたが、何人かの盗賊が死ぬと状況が変わり、盗賊達は逃げて行った。

こちらの被害は重症が一人だけで、残りは魔法で治る傷程度である。



「父様、今回の冒険者は凄いですね」

その隣でセレストも目を輝かせて頷いている。



「今回はBランクパーティだからな。アーバイン領でも優秀な冒険者だ。後、魔法使いが優秀だと戦況が変わりやすいから良く覚えておけ」

「はい、父様。状況を見たいので、死亡した盗賊のところに行ってもいいですか?」

「まあ、いいだろう。一緒に行くぞ」



盗賊は4人亡くなって、一人は捕虜として捕まっていた。





ついにスキル吸収を試す機会がきたぞ。アスランはワクワクしながら鑑定をおこなった。

よし運がいいぞ。5人の盗賊の内にほしいスキルがあったのだ。

アスランはガッツポーズをしながら、再度鑑定する。



《剣術》《短剣術》《斧術》《身体強化》《気配察知》《気配遮断》《金剛》《殺人者》《盗人》《腕力強化》《器用値強化》《隠蔽》《農業》《洗濯》……などのスキルと固有スキルがあった。



なんかスキルもいろいろあるな~。殺人者や盗賊は称号だけではなくスキルにもなっているし、固有スキルに農業や洗濯などピンポイントスキルもあった。ハクの様な固有スキルだけのスキルもあるのだろうと考えながら盗賊の元へ向かった。



取り敢えず一番ほしい隠蔽のスキルを持っている盗賊の胸に手を当て、スキル吸収をおこなった。

微かに光り、胸の中に何かが入った感じがすると無事に《隠蔽 Lev1》が手に入った。



続けて他のスキルをスキル吸収すると、



「………。」



何も起こらなかった。

他の盗賊の胸に手をあて試してみるが、



「………。」



何も起こらなかった。



なんでやねん!

心の中で叫びながら考える。



スキルレベル1だから、レベル1以外のスキルは吸収できない?でも隠蔽は固有スキル(弱)でLev3だった。スキル吸収はレベル1だから、隠蔽レベル1を吸収したのは解る。でも何で他のスキルは吸収できない…。イライラしながら考える。



考えた結果おそらくレベルによって、1日に吸収できる数が決まっているのではないかと予想し、



アデールのところに行き

「父様、捕まえた盗賊はどうするのですか?」

「王都まで後2日の距離だから、連れていって警備兵に引き渡すぞ」

「そうなんですね。勉強になります」



上手く誤魔化しながら情報を得たので、明日盗賊にスキル吸収を使い確かめることにしたのだ。



重傷者と付き添いの冒険者1人に縄で縛った盗賊を荷馬車に乗せ王都へと向かう。





翌日、馬の休憩の時にアデールの了承を得て、盗賊の元へ向かった。



盗賊に後ろから近づき、肩に手をあてた。盗賊はこちらに振り向いたので、ゆっくりと手を離し尋ねた。

「おじさんは何故盗賊になったの?」

「お坊ちゃんには解らないことだ」

「何故?食べる余裕もなく、しかたなく盗賊になったの?」



盗賊は小さい子供の考えに驚きながら

「そうだ。重税に苦しみ逃げた結果が盗賊だ」



アスランは興味が無くなった素振りを見せながら

「ふ~ん。でも罪は罪。人をまだ殺してないのなら、罪を償ってから新しい人生を生きな」

冷たい言葉を残してアスランは立ち去った。



ちなみにアスランは異世界に転生して決めていたことがある。

日本とは違う異世界なので、殺人者には躊躇なく殺すと心に決めていたのだ。

今の実力で、優しさをみせる余裕はない。そんな隙を見せれば異世界では生きていけないだろうと…。

同情はしない。自業自得なのだから。その考えのせいか、盗賊の死に目を見ても問題がなかった。


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