吸血鬼との戦い・３

　何とかギリギリ持ったな。襲ってきた吸血鬼のうち、リーダー格っぽいやつを倒したことで敵を全滅させた。もしかしたらほかにも潜んでいるかもしれないが気配は感じられないしいても精々一人か二人だろう。今回のような大規模な襲撃を仕掛ける事は出来ないだろうし俺を狙っての暗殺も実力差から返り討ちにできる自信がある。少なくとも吸血鬼たちの脅威はなくなったといえるな。

「これは一体……」
「あー、なんか吸血鬼が襲い掛かってきた感じでさ。一応すべて倒したから心配はしなくていい」

　人除けの結界でも張られていたのだろうな。身体強化の魔法を解きその場に座り込むと野次馬が集まってきた。そのうちの一人に襲撃を受けたことを伝えつつ脅威はなくなったことを伝えるけどそれ以前の問題だよな。

「き、教会がこんな姿に……！」
「魔王軍が攻めてきたのか？」
「それよりも神父様たちは……」

　どうやら俺がいる場所は教会らしいが建物が半壊しておりその機能を維持できるかは疑問だ。こういうところは信仰の対象としてだけではなく病院としての機能も持つ。ここがケラースだとして他に教会があるのか分からないが医療関係における混乱は起きるだろうなぁ。

「済まないが誰か手を貸してくれないか？　起きたばっかりで体が動かなくてさ」
「あ、ああ。分かった」
「それとほかにもけが人がいるかもしれないからその確認も頼む」
「わ、分かった。おーい！　誰か手を貸してくれ！」

　俺の言葉に従い教会の片づけとけが人の救助が始まる。次々と教会の関係者と思われる人たちが俺が寝ていた部屋に運ばれていく。扉は壊れてしまっていて、魔法の応戦で壁や天井に穴が開いてしまっているが寝床があるので自然とここに運ばれていく。

「……」

　そして運ばれてくる者たちだが、半数近くが死んでいる。それも苦しみながら死んだと思われる表情で。生きている者も今にも死にそうなほどの重傷を負っている者が多かった。吸血鬼たちはこいつらをなぶり殺しにしたのだろうか？

「神父様！」

　そして最後に運ばれた者が一番重傷だった。体中ぼろぼろでありもともと白かったと思われる服は真っ赤に染まっている。とはいえ出血は止まっているようで血が流れている様子はなかった。それでも辛うじて生きている程度ではあったがな。
　しかし、俺ここは本当に何処なんだろうな。どれくらい寝ていたのか分からないから確かな情報が欲しい。それに、ナタリーは何処にいるんだ？　これだけの騒ぎにも関わらずに近くにいる様子はない。まさか俺に愛想をつかして離れてしまったのだろうか……。せめて何か情報でもあればいいんだけどな……。