人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

神の試練~ダンジョン攻略⑲~

 振り下ろした刀から感じたのは硬い感触。肉でも骨でもなく、ただただ硬く斬れない・・・・感触だ。よく見ればカドミエルは俺の火炎放射を防いだ光の壁を展開している。流石に完全に防ぐ事は出来なかったのか壁には罅が入っている。どうやらもう少し力を籠めればこの壁は突破できるようだ。
 そう思いつつ追撃は行わずに一度距離を摂るために地を蹴り後ろに飛ぶ。何故なら俺がいたところに光で作られた天使の羽根が上から降り注いだ。地面を軽く砕いていく様子から動かなければ俺は肉塊へと変わっていただろう。
 代わりに電気の球を生み出すとそれを発射する。中級魔法の一つだがカドミエル相手では力不足だな。実際、先程の光の風を使って雷の球を消し飛ばしてしまった。だが、本来の目的である一旦距離を取るという事に関しては成功した。

「……驚きました。正直に言って、切り落とされるとは思っていませんでした」

 カドミエルは切り落とされた自らの足の甲を見て呟くように言った。既に足元には血だまりが出来ておりこのままいけば俺の勝利になるだろう。尤も、そう簡単にいくとは思っていないがな。実際、カドミエルが何かを呟くと足回りが光り、出血が止まり、失われた足が生えてきた。部位の欠損程度は直ぐに治ってしまうようだがそれでも相手に力を使わせたのは事実だ。

「もう少し本気で行きましょう。死なないでくださいね?」
「俺はお前に勝って迷宮をクリアしたいんでな。死ぬ気は最初からない」

 カドミエルは両手で握り拳を作ると親指側の側面同士を合わせる。例えるなら刀を左手が鞘の先を、右手で柄を持った形だ。両手で鍔を挟む感じだな。そしてそこから光があふれ出るとゆっくりと刀を抜く様に手を離していく。するとそこに光の剣が現れた。西洋で一般的な両刃のロングソードだろうが。明らかにそれとは別物だな。

「貴方が得意であろう剣技にて相手をして差し上げます」

 そう言うがカドミエルは真っすぐこちらに突っ込んでくる。俺はそれを真正面から受け止めるように刀を振り下ろす。対するカドミエルは光の剣を振り上げてくる。上と下なら重力の力を加えられる上段からの一撃が有利だ。しかし、俺の刀は光の剣と触れるとピタリと止まる。まるで勢いを吸い・・・・・取られたように・・・・・・・

「っ!?」
「ハァっ!」

 驚いている一瞬の間にカドミエルは俺の刀を弾くと剣を地面と垂直に構え神速の突きを放ってくる。狙いは俺の心臓。寸分違わぬ正確さで俺の命を狙ってくるがそれを膝を崩し、倒れ込む事で回避する。同時に弾かれた刀をそこから勢いをつけて横なぎに払う。

「何?」
「そう簡単にやられねぇよ!」

 俺の頭上すれすれを光の剣が通過すると同時に俺はカドミエルの骨盤の上あたりを一気に反対側まで切り裂いた。
 瞬間、俺の目の前に大量の血が飛び出してきた。

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