人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

神の試練~ダンジョン攻略⑪~

 第40階層のボスは巨大なミノタウロスだった。俺が入ってすぐに遭遇したミノタウロスの何倍もデカい。しかもその周りにはコバンザメの様に群がっているケンタウロスにオーガ、オーク、そしてミノタウロスの群れ。軽く100は超えて居そうだな。
 そんな魔物たちは俺に気付いたようでこちらに向かってくる。ケンタウロスの群れが翻弄するように左右に動きながら突進を行いオークとオーガがその後ろから続く。ミノタウロスはボスらしき巨大なミノタウロスの周りを固めている。ここに魔法や遠距離武器を持つ奴らがいないのが唯一の救いだがこれはいくら何でも多すぎる。そう思いつつも俺がやる事は決まっている。
 俺は上空に向かて水玉を作り出すと上空で破裂させて周囲を水浸しにする。そしてその部分にケンタウロスが入って来るのを見届けると雷の魔法を使った。途端に足から感電し震えるケンタウロス達。先程と同じように分単位で電撃を浴びせていく。全身から煙を上げながらその場に崩れ落ちるケンタウロス達。これで20体程は倒しただろう。残りは約80体だ。

「ちっ! やっぱりそう簡単にはいかないか……!」

 俺が水と雷でケンタウロス達を全滅させたのを見た残りの魔物は警戒してこちらに近づかなくなった。更に厄介な事に巨大なミノタウロスが持つ斧の範囲内に下がってしまっている。これで俺が近づけば上からミノタウロスの攻撃がやって来る事になるだろう。魔法などを使った遠距離で倒そうにも配下の魔物ならともかくあの巨体相手には分が悪い。
 この状況をどう打開しようかと悩んでいるとミノタウロスが動き出した。ミノタウロスは地面に拳を下ろし石畳の床を砕くと無造作にその破片を手に取った。それを見て何をしようとしているのかを理解した俺は回避行動に入る。と言っても壁になる物がないこの場においては難しい為水を生み出し瞬時に凍らせるとその足元で屈む。
 それと同時にまるで巨大なショットガンが放たれたように石の欠片が降り注ぐ。巨大なミノタウロスが投げたそれらはまるで銃弾の様に素早く、破壊力を伴い地面に食い込んでいく。当たれば俺の体に風穴があくだろう。一発でもあたっては駄目だ。そう思う俺をあざ笑うように氷の壁は一発の石も防げずにあたるたびに砕かれていく。だが、幸いにも俺にあたる事は無く無数の石の欠片の雨をやり過ごす事に成功したのだった。

「これは、接近戦しか難しいか……」

 遠距離ではただただ不利だと悟った俺は刀を抜くと大分距離が出来てしまった魔物たちに向かって駆けだした。

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