人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

神の試練~ダンジョン攻略⑧~

 100階層をクリアするというのは予想以上に大変だ。第5階層をクリアし6、7、8、9と順調にクリアしていった。しかし、第10階層で俺は致命的とも言えるダメージを受けてしまった。幸いにもポーションで最悪の事態は免れたが苦戦している事に変わりはなかった。その階層のボスモンスターはかなり凶悪でこちらの攻撃はあまり効かず、第5階層の様に遠距離からの攻撃を余儀なくされた。それでも相手も遠距離の攻撃を持っている為こちらも手傷を負ってしまった。
 そうやってようやく倒した俺はここから傷を大なり小なり受けつつも階層をクリアしていった。10層、20層、30層とクリアしていき遂に第40階層を迎えた。

「ぐっ!」
「ガァァァッ!!!!」

 俺は自身の身長よりも大きい斧を間一髪で避ける。対峙する魔物ミノタウロスは巨体に似合わない俊敏な動きでこちらを翻弄しつつ完璧とも言えるタイミングで必殺の一撃を放ってくる。第40階層で最初に出会った魔物なのにかなり手強い。このままだと負ける可能性すらある。

「はぁっ!」
「っ!?」

 しかし、俺は手に持っている曲刀だけが武器ではない。ミノタウロスが曲刀に目を向けた瞬間に俺は魔法を使って曲刀を光らせる。薄暗い通路を白一色に染め上げる程強力な光にミノタウロスはうめき声を上げて手で目を塞ぐ。その隙をつき俺は曲刀をミノタウロスの首に向けて放つ。相変わらずの切れ味でミノタウロスの首を両断するとそのまま倒れ込み起き上がる事は無かった。

「ふぅ……」

 強敵だったが何とか倒すことが出来た。流石にこのころになると一桁台の階層の魔物が弱く見えてくる。今なら最初に出会ったオーガに素手で挑めそうだ。
 そんな事を思いつつ俺は部屋を探す事は無くその場に座り込む。この空間でお腹が空く事は無いようだが疲労や痛みは感じる。あんな強敵の戦闘をいきなりこなしたから肉体的にも精神的にもきつい。今は少し休みたい。

 ……が、このダンジョンはそこまで甘くはないようだ。遠くから聞こえてくる地響き。目を凝らせば奥の通路から大量の魔物の影が見える。だがその動きは騎馬の様であり近くまで来て漸く分かった。
 下半身は馬、上半身は人。だけど頭部は馬に似ている生物。ケンタウロスだ。それも群れできている様で明らかに10はいる。武器も槍や剣、弓で武装している。接近戦は危険すぎる。直ぐに立ち上がり火の玉を生み出すとそれを思いっきり投げる。しかし、今度の球体は当たる直前で破裂し通路中に火の粉を降らす。突然の焼ける痛みに先頭を走っていたケンタウロスはその場に倒れ込むがそれで後ろの同族を巻き込み通路をケンタウロスで山積みにする。
 そこを付く様に今度は氷の弾を投げる。弾は当たるとその周囲を凍らせていきケンタウロスの動きを封じていく。更に2発、3発と続けて投げると大分凍らすことに成功した。これで動く事はますます困難になっただろう。通路を塞ぐ結果となったが幸いにも通路は3つある。正面の通路が行き止まりになろうと選択肢は2つ残っている。

「それが罠。とは言い切れないけどそうなったらそうなったときだ」

 俺は行き先を決めるとケンタウロス達が起き上がらないうちに右の通路へと足を踏み入れるのだった。

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