人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

シェダル村

 スケルトンとの戦いから一夜明けた。スケルトンはあれ以上出ることはなかったが交代で見張りを行い襲われてもすぐに対処できるようにしていた。

「結局あのスケルトンはなんだったんだろうな……」
「……不明」

 ナタリーもそこまで詳しくはないようなのでこれ以上の事は分からなかったがそもそもそこまで首を突っ込みたい案件でもない。今回の事は不思議は残るが忘れることにした。
 朝食も食べ終えた俺たちは荷物を持ち再び歩き出した。それはそうとこの世界は銃火器が存在しないようだな。レナードさんもみた事ないような感じだったしナタリーも知らないと言っていた。そうなると俺の武器は弾薬の補給が出来ないことになる。既にスナイパーライフルは半分消費し自動式拳銃はまだまだ余裕があるがマシンガンに至っては帝国軍との戦いで使い過ぎてマガジン一つ分しか残っていない。とは言え銃火器がないという事は刀でも十分対応できるという事で水魔石で強化されているため問題はないだろうな。
 そうして歩いていると街道を挟むように建つ村が見えてきた。宿場町と農村を兼ね備えたような村で俺とナタリーは村に入った。村人は通行する人に慣れているのかこちらを一目見るが直ぐに自分たちの仕事に戻っていく。
 村は街道に面している部分に宿や飲食店が一つずつ並んでいる。流石にそこまで大きい村ではないようだから規模自体は小さいようだな。この村にいるのか夕暮れ時とかなら宿泊も考えたが今は日も昇りきっていない10時頃だ。特に不足している物もない為このまま進もうと思っている。ナタリーも特に用事がないのか特に言う事もなく俺の隣を歩いていく。
 そのまま進んでいくと川とそれにかかる橋が見える。王都を出てからすぐに見えた川だがそれなりに幅が広い。畑はこの川の水を使っている様で水路に流れ込んでいるのが見える。
 そんなことを考えていた時だった。俺とナタリーは数名の子供たちに囲まれた。村の人と比べれてもボロボロの服を着ている子供たちは一斉に話しかけてくる。

「ねぇねぇ、今日はこの村に泊まるの?それなら僕たちの孤児院に泊まってよ!」
「薬草はいかがですか?山で採れたもので品質は保証しますよ」
「これ僕が作ったんだけど買って!」

 どうやら旅人相手の押し売りらしい。子供の一人が言っていたが孤児院の子供たちらしく、必死に俺たちに話しかけて、と言うよりは買ってもらおうとしている。正直なところ泊まる予定はないし薬草に関しては良く分からないため買っても使う可能性は無い。最後の子は木工品のようなものだが正直そこまで上手とは言えなかった。そもそも子供たちは10歳いかにしか見えない。しかも少し痩せすぎなような気がする。
 ……ここで無視して進む事は出来るだろう。子供だし少し走れば振り切れる自信はある。というか普通に追いつけないだろう。それでも、ここまで必死に頼んでくる子供たちを見て振り払える程薄情な人間ではない、つもりだ。ナタリーの方を見れば俺の言いたい事を察して小さくうなずいてくれた。

「……とりあえず、今日は君たちの所に泊まるよ」
「本当!ありがとうございます!」

 年長と思われる少女が笑みを浮かべてそうお礼を言ってきたのを見て俺は苦笑いを浮かべつつ今日は予定を変更して孤児院に泊まることにした。

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