人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

横やり

「和人さんは私達騎士団の人間ではないですし本来ならこの戦に巻き込まれる理由なんてないのですが……。我々には兵もなく援軍も見込めない状況です。少しでも戦力は多い方が助かりますがだからと言って死ぬまでタたかう事は強要しません。ですので不利になれば逃げていただいて構いません」
「……」

 レナードさんは真剣にそう言ってくれる。……本当に最初に出会ったのがレナードさんでよかったな。俺は心の中で笑みを浮かべると返事をした。

「勿論そのつもりだよ。レナードさんには悪いけど俺にはやりたい事もあるしこんなところで命を失いたくはないからね」
「それで構いません。むしろ我々は共に戦ってくれるだけでうれしいです」
「流石に暫く寝泊まりをさせてもらったんだ。最低でもその分の礼は返さないとね」
「ふふ、ですがこちらには命を助けていただいた御恩がありますし五千の兵を退けてくれた礼もありますよ」
「あ、そうだったな」

 そう言って俺たちは笑う。これで俺も覚悟は出来た。レオル帝国の兵士たちよ。何時でもかかってこい!

















「フハハハハハ!これは僥倖!僥倖!」

 レオル帝国とサジタリア王国を結ぶ一本道。その道をレオル帝国軍一万は行軍していた・・・・。そう、していた・・・・のである。現在レオル帝国軍一万はその数を百にまで減らし異形の化け物に囲まれていた。生き残った兵士たちは誰もが傷つき血を流していた。中には立ち上がる気力もないのか膝をついている者もいた。
 そんな彼らを緑の皮膚を持つ化け物が笑い飛ばす。彼は人間程度なら握りつぶせる両手を叩きながら見下ろしていた。

「いやはや、まさかこんなに良質な餌が手に入るとはな。当分は飢えずに済みそうだな」
「ふ、ふざけるな!俺たちは誇り高きレオル帝国軍だぞ!」
「知るか雑魚ども」

 生き残った兵士の激昂に彼は詰まらなそうに手を払う。それだけで十を超える人間が頭部をなくし力なくその場に倒れ込んだ。生き残った兵の誰もが恐怖する。彼は先ほどとは違い詰まらなそうに生き残りの兵に背を向けると周りの部下に指示を出す。

「よし、お前ら。喰っていいぞ。ただしきちんと分け合えよ」
「うおぉぉぉぉっ!」
「人間!喰ウ!」
「く、くそがぁぁぁぁっ!!!!」

 バケモノたちが殺到する。あるものは四肢をもがれ、あるものは頭部から丸かじりされ、またある者は生きたまま腹に穴をあけられ内蔵を啜り食べられていた。
 そんな光景を笑みを浮かべていた彼は一区切りをつけ叫んだ。

「よし!お前ら!次はこの先の砦を落とすぞ!我らの実力を見せつけてやれ!魔王様万歳!」
「「「「「魔王様万歳!!!」」」」」

 彼ら、魔王軍は緑色の体色をしたオーガに率いられ三万・・のゴブリンを率いてベアード砦に向かうのだった。

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