人体強化人間の異世界旅路

鈴木颯手

人体強化人間VS闇の勇者その3

「ぐっ!」

 顔面にナタリーのパンチを受けた和人。これを見たナタリーは勝利を確信した。
 自身の闇魔法により強化された一撃である。更に『永続ダメージ』の付与に『ダメージ増加』を加えたのである。普通の人間ならこれで気絶どころか絶命する一撃であった。
 ……そう、普通の相手なら。
 和人の顔面を捕らえた右手を和人の左手が掴む。まさか動けるとは思っておらずナタリーは硬直してしまう。そして、その一瞬を見逃すほど和人は甘くも未熟でもない。

「う、そ……!」
「お返しだ!」

 グギャ。ナタリーの右腕からなってはいけない音が出る。ナタリーが右手に視線を移せばそこには和人の・・・左腕の・・・握力で・・・潰された・・・・右腕《・・》の姿があった。

「あ……、あ……、あ……」

 理解すると同時に襲ってくる激痛。

「あああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!」

 ナタリーは涙を流しながら叫んだ。初めて感じる痛みにその場に蹲り左腕で右腕を抑える。しかし、今は戦闘中である。そして相手はただ叫ぶナタリーを見逃すほど甘くない。

「ひぐっ!?」

 ナタリーの顔面に和人の蹴りがめり込む。ナタリーは変な声を上げて後ろの壁まで吹き飛び背中を叩きつけた。ざらざらとした壁の感触が背中越しに伝わって来る。右腕のみならず顔、背中を襲う激痛。意識が朦朧とする。

「……どうした?もう終わりか?」
「……あ」

 ゆっくりとこちらに近づいてくる和人。ナタリーは薄れゆく意識の中産まれて初めて感じる恐怖に包まれながら意識を失った。

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