青春クロスロード

Ryosuke

夏休み その1 ペンギンランド➀

 一学期を無事終え、待ちに待った夏休み2日目。天気は快晴、最高気温32度の7月に入り一番の暑さという天気予報通りの夏真っ盛りのこの日、三佳達7人はペンギンランド駅前で、最後のメンバーの一人を待っていた。

「お・そ・い、あのバカ二郎!」

 約束の時間である9時を1分過ぎたところで、忍はこの場に居ない二郎に向けて、鬼の形相を浮かべ怒りをぶつけた。

「まぁまぁ、もうつくから落ち着いて、乗り換えの時に少し電車が遅れたみたいだ。今、メールが来たよ。俺が駅に着いたときもアナウンスで言ってたからさ。間違いないよ」

 慣れたように一が忍をなだめながら、周りのメンバーにも聞こえるように説明した。

「それにしたってギリギリに来るのが悪いわ、エリカも服部君も工藤君も30分以上前から来てるんでしょ。あのバカが待たせてしまってごめんね」

「まぁ成田さん、俺らはそんな気にしてないよ、勝手に早く来ただけだしさ。もう来るなら大丈夫だよ」

 二郎の代わりに謝る忍に、拓実が大丈夫だと声を掛けた。

 そんな話をしている最中、当の本人がやってきた。

「わりぃね、電車が遅れちゃって、乗り換えの電車に間に合わなくて。全く参ったぜ」

 二郎が俺は悪くないという口ぶりで、改札を抜けながら軽く謝罪を入れた。

「全くじゃないでしょ、バカ。初めて遊ぶ相手がいるのに待たせてどうするのよ。声かけた私の立場を考えてよ」

「あぁごめん、ごめん。そうだったわ。すいません、遅れてしまって申し訳ないです」

「いや大丈夫だよ、災難だったな。同級生だし変な敬語は無しにしようぜ」

 二郎と忍の激しいやり取りに少し驚きながらも、剛がフォローを入れた。

「そりゃありがたいわ、今日は楽しく過ごそうぜ。ありがとう、良い奴らだな。俺が遅れたのは謝るからさ。部活じゃあるまいし、忍もせっかくの夏休みなんだからあまりカリカリするなって」

「もうバカ二郎が!遅刻しないように気をつけてって何度も言っておいたのに。私がこのバカを誘ったもんだから、本当にごめんなさい」

「マジで大丈夫だからさ、成田さん、まぁこの話はここで終わりしようや。それでいいよな、みんな!」

「はいはい。全員そろったしそろそろ行こうよ」

 二郎の言葉を受けても、相変わらず謝り続ける忍に拓実と剛が話しを切るように続けて全体に向けて言った。

 駅から入場門までは歩くと約20分で、バスだと5分程度で着く。ちょうどシャトルバスがすぐ来る時間だったので、8人はバスで入場門へ向かうことにした。

 二人がけの席では剛と拓実、すみれとエリカ、三佳と忍、そして一と二郎が隣同士になった。これが初期状態の関係と言ったところか。この関係が一日のデートを経て、どうなっていくのかと、それぞれがそれぞれの思惑を胸に、揺れるバスの中で思いやるのであった。 

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