じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。
4-1 働き口
4-1 働き口
「なんだったんだ、あいつら……」
俺は消えていったギルドの男たちの背中を見つめて、ぼやいた。やたらグイグイ来たと思ったら、あっちゅう間にいなくなったぞ。フランは男から押し付けられた石ころを見下す。
「これ、絶対ただのガラクタだよ……」
「うーん……まだわかんないけどな……」
石ころは、本当にただの石ころに見える。宝石のように輝いているとかもなく、ただ所々、錆びたような赤茶けた汚れが付いていた。そのおかげで、ただの石ころよりも一層汚らしい……
「……いる?これ」
「……まぁ、もしかしたら価値あるものかもしれないし……」
「本気で言ってる?」
「……半分くらいは」
ただ、あいにくと俺は、こういうのをすぐには捨てられない性分だった。一応カバンにしまっといて、ほんとにガラクタだとわかったら捨てちまおう。
かくして嵐のような出来事が過ぎ去り、すっかり気が抜けた俺たちがぐったりしていると、兵士たちがドタドタと広場へなだれ込んできた。
「おい!なにか大きな爆発が起こったと通報があったが、一体何をしていたんだ!?」
兵士の一人が叫ぶ。げっ、そうか。この兵士たち、さっきの騒ぎを聞きつけてやってきたのか。あー!しかも、主催者だった魔術師ギルドの連中は人っ子一人いなくなってる!これじゃあ、俺たちが主犯格みたいじゃないか。
「あ、あの~……これには、いろいろわけがあって……」
俺がしどろもどろ説明しようとすると、兵士たちの中でも、ひときわ立派な鎧に身を包んだ一人が、奇妙な声を上げた。
「んん?お前たちは……!」
「え?あ……あんたたしか、騎士団だかのリーダーの……たしか、エドガーだ!」
前に王城で、ロアと話し合った時以来だな。その時は大けがをしていたが、今は歩き回れるくらいにはなったらしい。ただ、前見た時よりかは、少しだけやつれたような気もした。
「む……!やっぱり、お前たちのしわざかぁ……!」
エドガーは、俺たちが元勇者一行だとわかると、唇をぐにゃりと歪めた。
「また貴様らは、碌でもないことをしおって!今度はなにをしでかした!」
「ち、違うちがう!不慮の事故はあったけど、好きでやったんじゃないって!」
「なにぃ?だいたい、まず何をしたらこんなになるんだ!正直に申さんか!」
「いや、その~……ホントに、壊そうと思ってたわけじゃないんだぜ?」
俺は前置きしてから、そろりと指を突き立てて、ぶっ壊れた家の屋根へと向けた。
「ん?ん~……あ!これか、爆発音の正体は!」
「こ、これには理由があるんだって」
「馬鹿者、そんなことは後回しだ!住人の安否確認はしたのか!?」
「え……あ!」
俺が叫ぶと、ウィルも同時にぱっと口を押えた。そうだった、怪我人がいないか確認するのを忘れていた。家から人の声は聞こえなかったけど、ひょっとすると中で気絶しているかもしれない。
「お前たち、家主がいないか捜索しろ!崩れるかもしれん、気を付けろよ!」
エドガーが兵士たちに命令すると、兵士たちはいっせいに壊れた家へと向かった。俺たちがハラハラしながら見つめるなか、住居の捜査が行われる。しばらくして、兵士の一人がエドガーへ叫んだ。
「どうやら、空き家だったようです!人の住んでいる気配はありません!」
ほっ……ああよかった。中は空っぽだったようだ。エドガーもうむとうなずく。
「よし、被害は最小限のようだな……では、話をじっくり聞かせてもらおうか?んん?」
エドガーが青筋を立てながら、俺のほうへ顔を突き出す……ひえー、今日は怒られてばかりだな。俺はこれ以上印象を悪くしないよう、必死に事のあらましを説明した。
「……ってことなんだけど」
「ふむ……法外な賞金に、ギルドへの強制加入か。なるほどな」
一連の出来事を説明すると、エドガーは納得したようにうなずいた。
「お前たちが遭ったのは、魔術師ギルドの違法勧誘だろう」
「違法、勧誘?」
「最近王都で増えているのだ。詐欺まがいの手口で魔術師を釣り、ギルド員に無理やりさせる悪質な事件がな」
おお、まさにさっきの出来事だ。そうか、俺たちだけじゃないんだな、ああいう目に遭ったの。
「でも、なんだってそんなことが?」
「うむ。魔術師ギルドも、優秀な魔術師の獲得に必死になっているからなんだろうが……」
「へー。人材不足ってやつか?」
「いや、王城からの覚えをめでたくしたいからだろう。前回の反乱のあとから、魔術師ギルドに関する規定が厳しくなったのだ」
ん?どういうことだ?俺たちが首をかしげると、エドガーが目をしばたいた。
「ああ、そうか。お前たちは王都を離れていたから、詳しくは知らんのか。ほら、前に起きた王都での反乱の時のことだ。そのとき魔術師ギルドは、あろうことか王城からの要請を断り、手を貸そうとしなかった。まったくけしからんことに!」
「ああー、そういえば……」
王都を出る時に、そんなような話を聞いた気がする。いま振り返ってみても、たしかに魔術師たちが反乱軍と戦っている様子はなかった。
「王都にギルドがいくつもあるなら、それなりの魔術師軍団ができていたはずだもんな」
「ああ。全く驚いた、魔術師ギルドの王家へ対する忠誠があれほど薄れていたとは……そこで、反乱後はロア様自ら指揮を執り、魔術師ギルドとの関係の再構築が始まったのだ。援助金を垂れ流すだけのつながりを改め、より優秀な魔術師を育成・輩出するように規定を定めた。それらの活動を積極的に行っているかの査定もすることとなった」
「ははぁ。それで、ギルドのほうもうかうかしていられなくなったってことか」
「そういうわけだ。古豪のギルドはともかく、弱小ギルドは魔術師の質も低く、ノウハウもない。となると、査定をパスするために最も手っ取り早い方法は、優秀な魔術師をギルドに迎え入れる事というわけだ。そのためになら手段を選ばないのだ、ああいう輩は。まったく愚かしい、浅ましい連中よ!」
エドガーは吐き捨てるように言った。王城が陥落寸前だったのに、手を貸さなかった連中だもんな、王城側からの印象は最悪だろう。
「それで、さっきみたいな派手なショーとかで、魔術師を集めようとしてたってわけだな」
「うむ。お前たちが引っ掛かったのもそれだろう……まぁ、お前たちの事情はわかった。申請もなくイベントを行い、また安全確保もできていなかったギルド側の落ち度だろう」
おお、助かった。俺たちの罪は問われないらしい。
「おい、そのギルドの名前はわかるか?」
「あ、うん。確か、黒手団って名乗ってたけど」
「黒手団……落ち目の弱小ギルドだ。ふん、とうとう落ちるとこまで落ちたな。よしわかった、連中に話を聞くとしよう」
「それじゃ、俺たちは無罪放免でいいんだよな?」
「なにぃ?馬鹿を言うな!確かに責任の大半はギルドにあるがな、それでも実際に家を壊したのは、お前たちではないか!」
「う……それは、まあ事実だけど」
「さらに、複数の家で突風によって窓ガラスが割れる事案が発生している。これらに関する損害賠償責任は、当然お前たちに課される!」
「えぇ!」
「当たり前だ!壊した人間が払わないでどうする!」
それは、確かにそうだけども……だけど、俺たちにだって言い分はあるぞ。
「確かに、あんな威力の魔法を町中でぶっ放したのは悪かったけど。けどさ、それだって、魔術師ギルドの連中が絶対安全だからって言ったからなんだぜ。あいつらが、防護壁があるから大丈夫だって言ったんだ」
「なに?むぅ、そうか……それならば、情状酌量の余地はあるかも知れんが。だとしても、お前たちの責任は無くなりはせんぞ。こういう場合は、事故を起こした側にも、少なからず責があるものだ」
「う……俺たち、金なんてほとんど持ってないのに……」
「ふん。金欠なのは、勇者をせずにあちこちふらふらしているからだろうが。ロア様の好意をむげにしおってからに」
む。人をちゃらんぽらんみたいに言いやがって……しかし、まいったな。金を稼ぐつもりが、いきなりマイナスからスタートすることになっちまうぞ。エドガーの言うことももっともなのだが……俺は藁にも縋る思いで頼む。
「なあ、けど本当に今は金がないんだ。俺たち、しばらく王都にいるつもりだからさ。ゆっくり返金していくんじゃだめか?」
「……なに?本当に、それだけの金もないのか?」
「ないこともないけど……それを全部吐きだしたら、俺たち一文無しになっちまうよ。それじゃ宿にも泊まれないだろ」
「ぬぅ……」
エドガーは唸ると、口元に拳を当てた。悩んでいるぞ、チャンスだ!俺は両手を合わせ、言葉を重ねる。
「俺たち、この王都でしばらく稼ぎ口を探すつもりなんだ。それで金ができたら払うから、それまで待ってくれよ。な?」
「……仕事は、もう決まったのか?」
「え?いや、それもこれからだけど……」
するとエドガーは腕を組み、空を見上げて固まってしまった……いったい、何を考えているんだろう?
「……わかった」
「え?」
「私が、仕事を回してやる。それで稼いだ金を賠償に充てるがいい」
えぇ?そりゃ、こっちとしても仕事を探す手間が省けるけど……どういう風の吹きまわしだ?
「どうせお前たちみたいな妙ちくりんなやつらは、まともな仕事など探せんだろう」
「みょ……まあでも、そうだと思うよ」
「ならばお前たち。城に来い」
「は?城?」
「今は、反乱で傷んだ城内外の修復で人手が足りん。お前の仲間の馬鹿力なら、土木作業にうってつけだろう」
俺はフランと、それからエラゼムを見た。確かに二人は力があるし、アンデッドだから疲れ知らずだ。
「わたしは、それで構わないけど」
フランはその案に賛成した。エラゼムも隣でうなずく。しかし二人はよくても、他のみんなはそうもいかない。
「でも、力仕事だと全員じゃできないな……」
「問題ない。お前たちには魔術師がいるだろう。基礎工事のような大掛かりな工事には、いつも魔術師の力を借りるのだ」
へー、なるほど。けど、まだ問題がある……肝心の俺が、何にもできないじゃないか!とほほ……
「あの~……それ以外にも、なんか簡単な仕事はないかな?誰でもできるような……」
自分で言っていても情けないが、かといって俺だけのんきに散歩しているのも嫌だ。するとエドガーは、まなじりを吊り上げはしたが、しぶしぶ首を縦に振ってくれた。
「なにぃ?ちっ、わがままなヤツめ!わかった、それもなんとかしよう。これで文句はないか!?」
おお、それなら大助かりだ。下手なところに雇われるよりも、国の仕事の方が安心できるしな。
つづく
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長期休暇に、アンデッドとの冒険はいかがでしょうか。
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俺は消えていったギルドの男たちの背中を見つめて、ぼやいた。やたらグイグイ来たと思ったら、あっちゅう間にいなくなったぞ。フランは男から押し付けられた石ころを見下す。
「これ、絶対ただのガラクタだよ……」
「うーん……まだわかんないけどな……」
石ころは、本当にただの石ころに見える。宝石のように輝いているとかもなく、ただ所々、錆びたような赤茶けた汚れが付いていた。そのおかげで、ただの石ころよりも一層汚らしい……
「……いる?これ」
「……まぁ、もしかしたら価値あるものかもしれないし……」
「本気で言ってる?」
「……半分くらいは」
ただ、あいにくと俺は、こういうのをすぐには捨てられない性分だった。一応カバンにしまっといて、ほんとにガラクタだとわかったら捨てちまおう。
かくして嵐のような出来事が過ぎ去り、すっかり気が抜けた俺たちがぐったりしていると、兵士たちがドタドタと広場へなだれ込んできた。
「おい!なにか大きな爆発が起こったと通報があったが、一体何をしていたんだ!?」
兵士の一人が叫ぶ。げっ、そうか。この兵士たち、さっきの騒ぎを聞きつけてやってきたのか。あー!しかも、主催者だった魔術師ギルドの連中は人っ子一人いなくなってる!これじゃあ、俺たちが主犯格みたいじゃないか。
「あ、あの~……これには、いろいろわけがあって……」
俺がしどろもどろ説明しようとすると、兵士たちの中でも、ひときわ立派な鎧に身を包んだ一人が、奇妙な声を上げた。
「んん?お前たちは……!」
「え?あ……あんたたしか、騎士団だかのリーダーの……たしか、エドガーだ!」
前に王城で、ロアと話し合った時以来だな。その時は大けがをしていたが、今は歩き回れるくらいにはなったらしい。ただ、前見た時よりかは、少しだけやつれたような気もした。
「む……!やっぱり、お前たちのしわざかぁ……!」
エドガーは、俺たちが元勇者一行だとわかると、唇をぐにゃりと歪めた。
「また貴様らは、碌でもないことをしおって!今度はなにをしでかした!」
「ち、違うちがう!不慮の事故はあったけど、好きでやったんじゃないって!」
「なにぃ?だいたい、まず何をしたらこんなになるんだ!正直に申さんか!」
「いや、その~……ホントに、壊そうと思ってたわけじゃないんだぜ?」
俺は前置きしてから、そろりと指を突き立てて、ぶっ壊れた家の屋根へと向けた。
「ん?ん~……あ!これか、爆発音の正体は!」
「こ、これには理由があるんだって」
「馬鹿者、そんなことは後回しだ!住人の安否確認はしたのか!?」
「え……あ!」
俺が叫ぶと、ウィルも同時にぱっと口を押えた。そうだった、怪我人がいないか確認するのを忘れていた。家から人の声は聞こえなかったけど、ひょっとすると中で気絶しているかもしれない。
「お前たち、家主がいないか捜索しろ!崩れるかもしれん、気を付けろよ!」
エドガーが兵士たちに命令すると、兵士たちはいっせいに壊れた家へと向かった。俺たちがハラハラしながら見つめるなか、住居の捜査が行われる。しばらくして、兵士の一人がエドガーへ叫んだ。
「どうやら、空き家だったようです!人の住んでいる気配はありません!」
ほっ……ああよかった。中は空っぽだったようだ。エドガーもうむとうなずく。
「よし、被害は最小限のようだな……では、話をじっくり聞かせてもらおうか?んん?」
エドガーが青筋を立てながら、俺のほうへ顔を突き出す……ひえー、今日は怒られてばかりだな。俺はこれ以上印象を悪くしないよう、必死に事のあらましを説明した。
「……ってことなんだけど」
「ふむ……法外な賞金に、ギルドへの強制加入か。なるほどな」
一連の出来事を説明すると、エドガーは納得したようにうなずいた。
「お前たちが遭ったのは、魔術師ギルドの違法勧誘だろう」
「違法、勧誘?」
「最近王都で増えているのだ。詐欺まがいの手口で魔術師を釣り、ギルド員に無理やりさせる悪質な事件がな」
おお、まさにさっきの出来事だ。そうか、俺たちだけじゃないんだな、ああいう目に遭ったの。
「でも、なんだってそんなことが?」
「うむ。魔術師ギルドも、優秀な魔術師の獲得に必死になっているからなんだろうが……」
「へー。人材不足ってやつか?」
「いや、王城からの覚えをめでたくしたいからだろう。前回の反乱のあとから、魔術師ギルドに関する規定が厳しくなったのだ」
ん?どういうことだ?俺たちが首をかしげると、エドガーが目をしばたいた。
「ああ、そうか。お前たちは王都を離れていたから、詳しくは知らんのか。ほら、前に起きた王都での反乱の時のことだ。そのとき魔術師ギルドは、あろうことか王城からの要請を断り、手を貸そうとしなかった。まったくけしからんことに!」
「ああー、そういえば……」
王都を出る時に、そんなような話を聞いた気がする。いま振り返ってみても、たしかに魔術師たちが反乱軍と戦っている様子はなかった。
「王都にギルドがいくつもあるなら、それなりの魔術師軍団ができていたはずだもんな」
「ああ。全く驚いた、魔術師ギルドの王家へ対する忠誠があれほど薄れていたとは……そこで、反乱後はロア様自ら指揮を執り、魔術師ギルドとの関係の再構築が始まったのだ。援助金を垂れ流すだけのつながりを改め、より優秀な魔術師を育成・輩出するように規定を定めた。それらの活動を積極的に行っているかの査定もすることとなった」
「ははぁ。それで、ギルドのほうもうかうかしていられなくなったってことか」
「そういうわけだ。古豪のギルドはともかく、弱小ギルドは魔術師の質も低く、ノウハウもない。となると、査定をパスするために最も手っ取り早い方法は、優秀な魔術師をギルドに迎え入れる事というわけだ。そのためになら手段を選ばないのだ、ああいう輩は。まったく愚かしい、浅ましい連中よ!」
エドガーは吐き捨てるように言った。王城が陥落寸前だったのに、手を貸さなかった連中だもんな、王城側からの印象は最悪だろう。
「それで、さっきみたいな派手なショーとかで、魔術師を集めようとしてたってわけだな」
「うむ。お前たちが引っ掛かったのもそれだろう……まぁ、お前たちの事情はわかった。申請もなくイベントを行い、また安全確保もできていなかったギルド側の落ち度だろう」
おお、助かった。俺たちの罪は問われないらしい。
「おい、そのギルドの名前はわかるか?」
「あ、うん。確か、黒手団って名乗ってたけど」
「黒手団……落ち目の弱小ギルドだ。ふん、とうとう落ちるとこまで落ちたな。よしわかった、連中に話を聞くとしよう」
「それじゃ、俺たちは無罪放免でいいんだよな?」
「なにぃ?馬鹿を言うな!確かに責任の大半はギルドにあるがな、それでも実際に家を壊したのは、お前たちではないか!」
「う……それは、まあ事実だけど」
「さらに、複数の家で突風によって窓ガラスが割れる事案が発生している。これらに関する損害賠償責任は、当然お前たちに課される!」
「えぇ!」
「当たり前だ!壊した人間が払わないでどうする!」
それは、確かにそうだけども……だけど、俺たちにだって言い分はあるぞ。
「確かに、あんな威力の魔法を町中でぶっ放したのは悪かったけど。けどさ、それだって、魔術師ギルドの連中が絶対安全だからって言ったからなんだぜ。あいつらが、防護壁があるから大丈夫だって言ったんだ」
「なに?むぅ、そうか……それならば、情状酌量の余地はあるかも知れんが。だとしても、お前たちの責任は無くなりはせんぞ。こういう場合は、事故を起こした側にも、少なからず責があるものだ」
「う……俺たち、金なんてほとんど持ってないのに……」
「ふん。金欠なのは、勇者をせずにあちこちふらふらしているからだろうが。ロア様の好意をむげにしおってからに」
む。人をちゃらんぽらんみたいに言いやがって……しかし、まいったな。金を稼ぐつもりが、いきなりマイナスからスタートすることになっちまうぞ。エドガーの言うことももっともなのだが……俺は藁にも縋る思いで頼む。
「なあ、けど本当に今は金がないんだ。俺たち、しばらく王都にいるつもりだからさ。ゆっくり返金していくんじゃだめか?」
「……なに?本当に、それだけの金もないのか?」
「ないこともないけど……それを全部吐きだしたら、俺たち一文無しになっちまうよ。それじゃ宿にも泊まれないだろ」
「ぬぅ……」
エドガーは唸ると、口元に拳を当てた。悩んでいるぞ、チャンスだ!俺は両手を合わせ、言葉を重ねる。
「俺たち、この王都でしばらく稼ぎ口を探すつもりなんだ。それで金ができたら払うから、それまで待ってくれよ。な?」
「……仕事は、もう決まったのか?」
「え?いや、それもこれからだけど……」
するとエドガーは腕を組み、空を見上げて固まってしまった……いったい、何を考えているんだろう?
「……わかった」
「え?」
「私が、仕事を回してやる。それで稼いだ金を賠償に充てるがいい」
えぇ?そりゃ、こっちとしても仕事を探す手間が省けるけど……どういう風の吹きまわしだ?
「どうせお前たちみたいな妙ちくりんなやつらは、まともな仕事など探せんだろう」
「みょ……まあでも、そうだと思うよ」
「ならばお前たち。城に来い」
「は?城?」
「今は、反乱で傷んだ城内外の修復で人手が足りん。お前の仲間の馬鹿力なら、土木作業にうってつけだろう」
俺はフランと、それからエラゼムを見た。確かに二人は力があるし、アンデッドだから疲れ知らずだ。
「わたしは、それで構わないけど」
フランはその案に賛成した。エラゼムも隣でうなずく。しかし二人はよくても、他のみんなはそうもいかない。
「でも、力仕事だと全員じゃできないな……」
「問題ない。お前たちには魔術師がいるだろう。基礎工事のような大掛かりな工事には、いつも魔術師の力を借りるのだ」
へー、なるほど。けど、まだ問題がある……肝心の俺が、何にもできないじゃないか!とほほ……
「あの~……それ以外にも、なんか簡単な仕事はないかな?誰でもできるような……」
自分で言っていても情けないが、かといって俺だけのんきに散歩しているのも嫌だ。するとエドガーは、まなじりを吊り上げはしたが、しぶしぶ首を縦に振ってくれた。
「なにぃ?ちっ、わがままなヤツめ!わかった、それもなんとかしよう。これで文句はないか!?」
おお、それなら大助かりだ。下手なところに雇われるよりも、国の仕事の方が安心できるしな。
つづく
====================
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