じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。
6-1 奇妙な信仰
6-1 奇妙な信仰
さて、教会を探すことになった俺たちだが、その場所はさっぱりわからない。町をさまよい歩いてもいいけれど、それだと町を回りきる前に日が暮れてしまいそうだ。
「しかたない、誰かに聞いてみようか……」
さっきの酒場のマスターの反応を見るに、この町もよそ者には優しくなさそうだ。今までの経験則から、こういう町での聞き込みは大変苦労するのだ。過去の苦い記憶の数々がよみがえる……イマイチ気乗りはしなかったが、やるしかない。俺は町を歩く中、トウモロコシが実る畑に差し掛かった所で、そこで仕事中のおばさんを見つけた。ええーい、ままよ。俺はおばさんにおずおずと声をかけた。
「あのー、すみません……」
「うん?なんだい、あんたら……見かけない顔だね」
おばさんは俺たちに振り向くと、首に巻いたタオルで汗を拭きながら、怪訝そうな顔をした。う、来るか……よそ者とみるや、すぐさま攻撃的に……
「もしかして、旅の人かい?よく来たねぇ、ようこそセイラムロットへ!」
へ?おばさんに満面の笑みで出迎えられて、俺はかえって面食らってしまった。
「どうしたんだい?宿はもう取ったの?何だったら、ウチに泊めてあげようか?」
おばさんは親切にそう申し出た。あれぇ、思ったより全然優しいな。
「あ、いや、宿はもう取ったんで。それより、ちょっと聞きたいんだ」
「何だい?観光名所でも知りたいの?」
「いや、教会の場所を教えてくれないか?」
「教会?そんなもの、この村にはないよ」
え?ない?そんなはずは……しかし、おばさんは別に意地悪を言っている様子はなかった。どういうことなんだろう。
「あんた、何かと勘違いしてやいないかい?」
「そう、なのかな……わかった、ありがとう」
俺は礼を言うと、おばさんと別れた。親切そうで助かったけど、謎は深まってしまったな……
「無いってさ。ほんとかな?」
「ううむ……吾輩たちの勘が外れている、婦人が嘘をついている、そもそも教会のない信仰である……どれも考えられますな」
「ま、もう少し探してみるしかないか」
それから俺たちは、教会を探して町をさまよい歩いた。田舎町だから大して時間はかからないだろうと思っていたんだけど、どうやら見通しが甘かったらしい。教会らしい建物はさっぱり見つからず、むしろほとんどの家が例のコウモリのエンブレムを掲げているもんだから、どの建物も怪しく見えてきてしまう。おまけに道行く人にたずねても、誰一人として教会の場所を知る者はいなかった。
「いやぁ、まいったな。どうなってるんだ?」
「どの町民も、悪意があるようには思えませぬが……」
エラゼムも頭を捻っている。そうなんだよなぁ、基本的に会う人はみんなニコニコしていて、親切なんだ。それなのに、みんな揃いも揃って教会はないと言う。
「ふぅ〜。ずっと空振りだと、こたえるな」
「申し訳ありません、桜下殿ばかりに損な役回りを……」
「ははは、エラゼムが話しかけるとみんな怖がって逃げちゃうからな」
俺は冗談めかしたつもりだったんだけど、エラゼムはよりいっそう落ち込んでしまった。エラゼムがくそまじめだってこと、忘れてた……
俺がフォローをしていたその時、ふいにこちらへ話しかけてくる人物が現れた。
「あら?あなたたち……」
「あ!あんたは、さっきの!」
そこにいたのは、さっき俺がぶつかってしまった黒髪の少女だ。ラッキーだ、この子なら教会について知っているかもしれない。何たって、神父と仕事をしているんだからな。
「よかった、またキミに会いたいと思ってたんだよ」
「え……あなた、ナンパ師の方ですか……?」
少女は警戒するように、一歩後ずさる。
「ああ、違うちがう。そうじゃなくて、助けて欲しいんだ」
「はぁ。助ける、ですか?」
「ああ。俺たち、教会を探しているんだ。あんたなら、場所を知らないかな?」
「教会?」
少女は首をかしげた。まさか、この子も知らないんじゃ……
「……ああ。あなたたち、外から来た人だものね。旅をしているんでしょう?」
少女は唐突にそうたずねた。
「あ、ああ。そうだけど」
「やっぱり。この町では、教会って呼び方はしないの。ここでは“御神堂”って言い方が正しいのよ」
「えっ。そうなのか……」
それはどおりで、教会の場所をたずねても誰も教えてくれないわけだ。
「外から来た人はみんな間違うのよ。町の人たちは教会なんて知りもしないから、ややこしいのよね……でも、どうして御神堂を探しているの?」
「ああー、それはだな。ほら、俺たちは旅人だろ?その先々の文化とか、信仰とかを、ぜひ学んでみたいんだ」
「そうなの。旅人というより、学者みたいね?」
「ははは……研究者気質なんだ」
少し苦しい言い訳だが、少女は納得してくれたようだ。
「いいわ。マレビトには神の教えを授けるべしと、聖典にも書かれているもの。それにあなたたち、運がいいわ」
「うん……?それは、どういう?」
「うふふ。私、教会に仕えるシスターなの」
お、やっぱりそうだったのか。エラゼムの予想がビンゴだ。それならこの子と仲良くなれれば、いろいろと町についても教えてもらえるかもしれないな……ちょっと打算的な気もするけど。
「そりゃあ、確かにラッキーだ。あ、なあ。シスターの名前はなんて言うんだ?」
「リンよ。あなたは?」
「俺は桜下だ。こっちはエラゼムと、ライラ。俺の旅の仲間だよ」
「へぇ……ずいぶん変わったお仲間なのね。親子なの?」
「いや、そうではないんだけど……まあ、研究仲間?みたいなもんだよ」
リンはふーんとうなずいた。完全に納得はしてなさそうだったが、これ以上突っ込まれたら面倒だからな。
「なあ、この町の宗教は、何て名前なんだ?」
俺はリンと連れ立って歩きながら質問した。
「シュタイアー教よ。この町を守護する神様を奉る教えなの」
「へ~……」
シュタイアー教、か。聞いたことはないな。ウィルの宗派はゲデン教だったけど、聞いたらわかるだろうか。
「その、この町を守る神様って言うのは?」
「シュタイアー神よ。ずうっと昔、何百年も前にここに降臨されて、以後ずっと町を守って下さっているの。そのおかげでこの町は、モンスターや盗賊の襲撃に何度あっても、いままで無事でいられたのよ」
「それは、すごい神様だな。あ、なあ。この町に来てから、あちこちにエンブレムを見かけるんだけど。あれもそのシュタイアー教の何かなのか?」
「ええ。これでしょ?」
リンは自分の首元に掛かっている、コウモリのようなエンブレムをつまんで見せた。
「これはシュタイアー教のシンボルなの。シュタイアー神が現世に現れる際には、コウモリの姿になって飛んでこられることからきているそうよ」
うぇ、ほんとにコウモリなんだ……コウモリに変身する神様ねえ。その神様ってのは、ほんとうにカミサマなんだろうか……?
「……なんて、いろいろ言ったけれど……実は、私も最近知ったばかりなんだけれどね」
「え?」
リンは恥じらうように頬をかいた。どういうことだ?
「だってリンは、そのシュタイアー教のシスターなんだろ?」
「ええ。でも、正式なシスターになったのは去年からなの。まだまだ新人よ」
「え、そうなんだ。シスターにも下積みとかがあるってことだ?」
「もちろんよ。去年までいたシスターが……っと、いけない」
うん?リンが一瞬しまったという顔をした。去年のシスターが、どうかしたのかな。
「まあとにかく、私なんかまだまだ未熟なんだけど、神父様が強く推薦して下さって。それで去年から、正式なシスターとして働き始めたのよ。ちょうど一年くらい前になるわ……だから、こうして誰かにシュタイアー教の教えを伝えるのも初めてなの。きちんとシスターとしての役目を果たさせてもらうから、あなたたちもしっかり教えを覚えて帰ってね!」
リンは気合十分とばかりに、力こぶをつくるような仕草をした。その拍子に袖が捲れて、細い手首が露わになる……
(……っ!)
俺はそこに、包帯が何重にも巻かれているのを見てしまった。手首に、包帯?たまたまそこを怪我してしまったのだろうか。それとも……?
「あ、そろそろ着くわよ。ここは迷いやすいから、しっかりついてきて」
俺の懸念もよそに、リンは家と家の隙間の、狭い裏道へ入って行ってしまった。こんなところに教会……いや、御神堂があるのか?
路地の曲がり角を一つ、二つ曲がると、唐突に真っ白なのっぺりした建物が姿を現した。いちおう窓はついているものの、モグラの巣穴かってぐらいに小さく、おまけに木の柵がはまっている。
「これが、御神堂ってやつなのか……?」
「そっちは事務所よ。御神堂はこっち」
リンはその白い建物のわきに回り込んだ。狭い隙間を通って裏手に回ると、そこには地下へと続く無機質な階段だけが、ぽっかりと口を開けてたたずんでいた。
「御神堂は地下にあるの。シュタイアー神は陽の光を避けるかららしいわ」
「へ、へー……まあ、コウモリに変身するんだもんな……」
「ええ。あ、それと。御神堂に武器は持ち込めないから、ここに置いて行ってもらうことになっているの。剣は外してね」
え。そうなのか……俺とエラゼムは思わず顔を見合わせた。リンの言うことももっともな気もするが、ここまであからさまに怪しいと、丸腰になるのも怖い……けど、ここでごねてリンの信用を失うわけにもいかないか。俺とエラゼムはおとなしく剣を外し、ついでにウィルのロッドも建物の壁に立てかけた。
「これでいいか?」
「はい。それじゃあ、ついてきて」
リンは地下への階段を一歩ずつおり始めた。階段には手すりも、照明も取り付けられていない。一歩おりるごとに、暗がりが色を濃くしていく……建物一階ぶんほど下りると、目の前に扉が現れた。リンがその扉を開く。ギギギ……
つづく
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読了ありがとうございました。
続きは【翌日0時】に更新予定です(日曜日はお休み)。
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さて、教会を探すことになった俺たちだが、その場所はさっぱりわからない。町をさまよい歩いてもいいけれど、それだと町を回りきる前に日が暮れてしまいそうだ。
「しかたない、誰かに聞いてみようか……」
さっきの酒場のマスターの反応を見るに、この町もよそ者には優しくなさそうだ。今までの経験則から、こういう町での聞き込みは大変苦労するのだ。過去の苦い記憶の数々がよみがえる……イマイチ気乗りはしなかったが、やるしかない。俺は町を歩く中、トウモロコシが実る畑に差し掛かった所で、そこで仕事中のおばさんを見つけた。ええーい、ままよ。俺はおばさんにおずおずと声をかけた。
「あのー、すみません……」
「うん?なんだい、あんたら……見かけない顔だね」
おばさんは俺たちに振り向くと、首に巻いたタオルで汗を拭きながら、怪訝そうな顔をした。う、来るか……よそ者とみるや、すぐさま攻撃的に……
「もしかして、旅の人かい?よく来たねぇ、ようこそセイラムロットへ!」
へ?おばさんに満面の笑みで出迎えられて、俺はかえって面食らってしまった。
「どうしたんだい?宿はもう取ったの?何だったら、ウチに泊めてあげようか?」
おばさんは親切にそう申し出た。あれぇ、思ったより全然優しいな。
「あ、いや、宿はもう取ったんで。それより、ちょっと聞きたいんだ」
「何だい?観光名所でも知りたいの?」
「いや、教会の場所を教えてくれないか?」
「教会?そんなもの、この村にはないよ」
え?ない?そんなはずは……しかし、おばさんは別に意地悪を言っている様子はなかった。どういうことなんだろう。
「あんた、何かと勘違いしてやいないかい?」
「そう、なのかな……わかった、ありがとう」
俺は礼を言うと、おばさんと別れた。親切そうで助かったけど、謎は深まってしまったな……
「無いってさ。ほんとかな?」
「ううむ……吾輩たちの勘が外れている、婦人が嘘をついている、そもそも教会のない信仰である……どれも考えられますな」
「ま、もう少し探してみるしかないか」
それから俺たちは、教会を探して町をさまよい歩いた。田舎町だから大して時間はかからないだろうと思っていたんだけど、どうやら見通しが甘かったらしい。教会らしい建物はさっぱり見つからず、むしろほとんどの家が例のコウモリのエンブレムを掲げているもんだから、どの建物も怪しく見えてきてしまう。おまけに道行く人にたずねても、誰一人として教会の場所を知る者はいなかった。
「いやぁ、まいったな。どうなってるんだ?」
「どの町民も、悪意があるようには思えませぬが……」
エラゼムも頭を捻っている。そうなんだよなぁ、基本的に会う人はみんなニコニコしていて、親切なんだ。それなのに、みんな揃いも揃って教会はないと言う。
「ふぅ〜。ずっと空振りだと、こたえるな」
「申し訳ありません、桜下殿ばかりに損な役回りを……」
「ははは、エラゼムが話しかけるとみんな怖がって逃げちゃうからな」
俺は冗談めかしたつもりだったんだけど、エラゼムはよりいっそう落ち込んでしまった。エラゼムがくそまじめだってこと、忘れてた……
俺がフォローをしていたその時、ふいにこちらへ話しかけてくる人物が現れた。
「あら?あなたたち……」
「あ!あんたは、さっきの!」
そこにいたのは、さっき俺がぶつかってしまった黒髪の少女だ。ラッキーだ、この子なら教会について知っているかもしれない。何たって、神父と仕事をしているんだからな。
「よかった、またキミに会いたいと思ってたんだよ」
「え……あなた、ナンパ師の方ですか……?」
少女は警戒するように、一歩後ずさる。
「ああ、違うちがう。そうじゃなくて、助けて欲しいんだ」
「はぁ。助ける、ですか?」
「ああ。俺たち、教会を探しているんだ。あんたなら、場所を知らないかな?」
「教会?」
少女は首をかしげた。まさか、この子も知らないんじゃ……
「……ああ。あなたたち、外から来た人だものね。旅をしているんでしょう?」
少女は唐突にそうたずねた。
「あ、ああ。そうだけど」
「やっぱり。この町では、教会って呼び方はしないの。ここでは“御神堂”って言い方が正しいのよ」
「えっ。そうなのか……」
それはどおりで、教会の場所をたずねても誰も教えてくれないわけだ。
「外から来た人はみんな間違うのよ。町の人たちは教会なんて知りもしないから、ややこしいのよね……でも、どうして御神堂を探しているの?」
「ああー、それはだな。ほら、俺たちは旅人だろ?その先々の文化とか、信仰とかを、ぜひ学んでみたいんだ」
「そうなの。旅人というより、学者みたいね?」
「ははは……研究者気質なんだ」
少し苦しい言い訳だが、少女は納得してくれたようだ。
「いいわ。マレビトには神の教えを授けるべしと、聖典にも書かれているもの。それにあなたたち、運がいいわ」
「うん……?それは、どういう?」
「うふふ。私、教会に仕えるシスターなの」
お、やっぱりそうだったのか。エラゼムの予想がビンゴだ。それならこの子と仲良くなれれば、いろいろと町についても教えてもらえるかもしれないな……ちょっと打算的な気もするけど。
「そりゃあ、確かにラッキーだ。あ、なあ。シスターの名前はなんて言うんだ?」
「リンよ。あなたは?」
「俺は桜下だ。こっちはエラゼムと、ライラ。俺の旅の仲間だよ」
「へぇ……ずいぶん変わったお仲間なのね。親子なの?」
「いや、そうではないんだけど……まあ、研究仲間?みたいなもんだよ」
リンはふーんとうなずいた。完全に納得はしてなさそうだったが、これ以上突っ込まれたら面倒だからな。
「なあ、この町の宗教は、何て名前なんだ?」
俺はリンと連れ立って歩きながら質問した。
「シュタイアー教よ。この町を守護する神様を奉る教えなの」
「へ~……」
シュタイアー教、か。聞いたことはないな。ウィルの宗派はゲデン教だったけど、聞いたらわかるだろうか。
「その、この町を守る神様って言うのは?」
「シュタイアー神よ。ずうっと昔、何百年も前にここに降臨されて、以後ずっと町を守って下さっているの。そのおかげでこの町は、モンスターや盗賊の襲撃に何度あっても、いままで無事でいられたのよ」
「それは、すごい神様だな。あ、なあ。この町に来てから、あちこちにエンブレムを見かけるんだけど。あれもそのシュタイアー教の何かなのか?」
「ええ。これでしょ?」
リンは自分の首元に掛かっている、コウモリのようなエンブレムをつまんで見せた。
「これはシュタイアー教のシンボルなの。シュタイアー神が現世に現れる際には、コウモリの姿になって飛んでこられることからきているそうよ」
うぇ、ほんとにコウモリなんだ……コウモリに変身する神様ねえ。その神様ってのは、ほんとうにカミサマなんだろうか……?
「……なんて、いろいろ言ったけれど……実は、私も最近知ったばかりなんだけれどね」
「え?」
リンは恥じらうように頬をかいた。どういうことだ?
「だってリンは、そのシュタイアー教のシスターなんだろ?」
「ええ。でも、正式なシスターになったのは去年からなの。まだまだ新人よ」
「え、そうなんだ。シスターにも下積みとかがあるってことだ?」
「もちろんよ。去年までいたシスターが……っと、いけない」
うん?リンが一瞬しまったという顔をした。去年のシスターが、どうかしたのかな。
「まあとにかく、私なんかまだまだ未熟なんだけど、神父様が強く推薦して下さって。それで去年から、正式なシスターとして働き始めたのよ。ちょうど一年くらい前になるわ……だから、こうして誰かにシュタイアー教の教えを伝えるのも初めてなの。きちんとシスターとしての役目を果たさせてもらうから、あなたたちもしっかり教えを覚えて帰ってね!」
リンは気合十分とばかりに、力こぶをつくるような仕草をした。その拍子に袖が捲れて、細い手首が露わになる……
(……っ!)
俺はそこに、包帯が何重にも巻かれているのを見てしまった。手首に、包帯?たまたまそこを怪我してしまったのだろうか。それとも……?
「あ、そろそろ着くわよ。ここは迷いやすいから、しっかりついてきて」
俺の懸念もよそに、リンは家と家の隙間の、狭い裏道へ入って行ってしまった。こんなところに教会……いや、御神堂があるのか?
路地の曲がり角を一つ、二つ曲がると、唐突に真っ白なのっぺりした建物が姿を現した。いちおう窓はついているものの、モグラの巣穴かってぐらいに小さく、おまけに木の柵がはまっている。
「これが、御神堂ってやつなのか……?」
「そっちは事務所よ。御神堂はこっち」
リンはその白い建物のわきに回り込んだ。狭い隙間を通って裏手に回ると、そこには地下へと続く無機質な階段だけが、ぽっかりと口を開けてたたずんでいた。
「御神堂は地下にあるの。シュタイアー神は陽の光を避けるかららしいわ」
「へ、へー……まあ、コウモリに変身するんだもんな……」
「ええ。あ、それと。御神堂に武器は持ち込めないから、ここに置いて行ってもらうことになっているの。剣は外してね」
え。そうなのか……俺とエラゼムは思わず顔を見合わせた。リンの言うことももっともな気もするが、ここまであからさまに怪しいと、丸腰になるのも怖い……けど、ここでごねてリンの信用を失うわけにもいかないか。俺とエラゼムはおとなしく剣を外し、ついでにウィルのロッドも建物の壁に立てかけた。
「これでいいか?」
「はい。それじゃあ、ついてきて」
リンは地下への階段を一歩ずつおり始めた。階段には手すりも、照明も取り付けられていない。一歩おりるごとに、暗がりが色を濃くしていく……建物一階ぶんほど下りると、目の前に扉が現れた。リンがその扉を開く。ギギギ……
つづく
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