El Dorado,Eden【エルドラド・エデン】

おでん

第一話

歩く……歩く……歩く……
ここはどこだろう??そんなの知らない。少なくともあそこに戻るよりは数倍良い。
ただ、気がかりだったのは逃げ遅れた親友二人だった。
あいつらは無事だろうか??
でもだからと言ってあそこには戻れない。戻ってはいけない。あいつらに助けられた俺のこの命を守らねばいけない。
そしていつか……俺がもっと強くなったらあいつらを必ず……
やがて俺はどこか知らない国にたどり着いていた……


エルドラド大陸~エルド連邦国、城下町~
「クリス!!起きろクリス!!!」
女性の声で白銀の髪を持つ齢、18くらいの青年が唸りながらベッドから体を起こす。
眠気眼を擦り、横を見ると黒髪の女性が腰に手を当て不機嫌そうに眉間に皺を寄せながら青年を見つめている。
「クリス!!いつまで寝てるつもりだ!!もう13時だぞ!?」
女性の言葉に青年、クリスはむっとした顔をする。
「どーせ休みなんだからいいだろうが!!」
「お前、昨日の国王陛下の言葉を忘れたのか!?」
クリスはそこで少し昨日のことを考える。暫くしてあっという驚きの声を出す。
「そうだ!フリーランスの傭兵を今回のエデン残党狩りに連れて行くんだったよな!?」
クリスがそういうと女性はふうとため息をつく。
「そうだ、やっと思い出したか、馬鹿者が。私とお前が組むことになって1年になるが貴様のその癖にはいつも悩まされているわ」
「うるせぇなー、忘れちまったんだから仕方ねぇだろ、ツバキ」
クリスはベッドから出た。クリスは着替えをすると言ってツバキと呼ばれている女性を部屋から出した。
「全く、あの男は……」
ツバキはため息を一つ付いた。


「そんで??詳しい条件とかは何なんだよ??」
「お前、そんなことも知らなかったのか!?」
「ああ」
「はぁ……昨日の話は覚えてるよな?」
「あぁ。危険宗教団体のエデンの残党が東の旧エデン研究施設で再び危険な研究を行っているとかそんな話だっただろ??」
「正解。かつて国総出で潰した筈の研究所を再び使われていると情報をつかんだまでは良かったが国は今、遠征作戦で
多くの兵をアイスクル地方に送り込んでしまっていた。そんな状況で出せる兵がいないこの国では戦闘経験のある我々の様なフリーランスの傭兵
や元兵士などを集めて研究所をつぶそうと考えた。報酬はそれなりに貰えるし、功績を立てた人物は国から更に報酬を出してくれるらしい。
これほど我々にうれしいこともあるまい??」
「まぁ、それはそうだな。それで??どこでその募集をしてんだ??」
「昨日言っていたであろうが、馬鹿者!!エルドラド大陸全土で使われている集会所ギルド
で募集資格を満たしていれば登録する様にと言ってただろうが!」
そこまで行ったところでツバキは足を止める。そこそこ立派な白い建物が目の前に現れた。
「ここがギルドだよ」


ギルド内部には厳つい男や怪しい女、様々な人種が集まっている。
「ほー、結構人がいるな……」
「すまない、傭兵登録をしたいのだが……」
クリスの言葉を無視してツバキは受付と書かれた場所に行き、そこの眼帯を付けた男に話しかけた。
「……戦闘経験は?」
「私は5年。この男は……」
「10年」
クリスはそういうとツバキと並ぶ。眼帯の男は二人をじろじろと見る。暫くして再び話し始めた。
「それを証明できるものは??」
「これでどうだろうか」
そういうとツバキとクリスは手帳を取り出し、受付の男に渡す。
「ハンター手帳……ここに住む前はローアに住んでいたのか?」
「あぁ、と言っても半年ほどだがね」
「エルドラドに来たのは??」
「一か月前。ここの方がいい仕事をもらえると聞いてな」
「ふむ……確かに戦闘歴は偽りではないようだ……疑ってすまんな。お前たちの参加を認めよう」
そういうと男は棚から紙を取り出し、そこにスタンプを押す。
「これが参加許可証だ。お前たちの活躍を祈っている」


「これで明日のエデン討伐作戦に参加できる。ちょうど金も尽きてきたところにこの仕事……運が良い」
「ツバキがもっと食事を抑えてくれればあと1か月は持つんだがねぇ……」
「な!?わ、私はそんなに食べてない!!!」
「何が食べてない!だ。米は一日5杯以上、肉から魚、いくらあっても足りねぇぐらい食うじゃねえか!!」
クリスがそこまで言うと、ツバキはげんこつでクリスの頭を思いっきり殴った。
「あがぁ!?」
「女性に対しての対応が出来ないのか、貴様は!!!」
「女性だっていう自覚があるなら食べる量を減らしたりそうやって手を挙げるのをやめろや!?」
「なっ!!!……まぁ確かに食べすぎなのかもしれん……気を付ける様にしよう……」
(とかこの前言ってたけど結局減らしたら泣いてたんだから、今回も減らせんだろうなー)
クリスはそう思いながら、ため息を付いた


~エデン旧研究施設 地下~
「はぁはぁ……」
息を切らしながら白衣を着た齢、15程の少女が走る。少女は研究資料や怪しい薬が並べられた部屋の物陰に隠れる。
「見つけたか!?」
「いや!!いない!!あの女!!どこ行った!?」
そこに研究者らしい男たちが中に入り、怒声を挙げる。
少女は息を潜める。
「研究ナンバー1046!!逃げても無駄だ!!お前の逃げ場などないのだ!!!」
1046と呼ばれる少女はそれでも息を潜める。目からは涙が流れる。
研究者は舌打ちをすると、他の研究員を連れてドタドタと部屋から慌ただしく出ていき、廊下を走っていった。
「……はぁ……早くここから逃げないと……あの人たちに……」
そこまで言うと少女は唇を嚙み、黙り込む。その状態を少し続けた後、再びポツリポツリと独り言を話す。
「ここにいてもいつかは見つかっちゃうよね……とにかくここじゃないところへ……」
そういうと少女は立ち上がり部屋を抜け、研究者の走っていった方向とは逆の廊下を走っていった。

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