現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~
ダンジョンと壁
忘れそうになっているが、ここに来た理由はアリナリーゼから発生したお使いクエストだ。
どうにもこのダンジョン中心部に用事があるらしく、その代行が今回のお仕事らしい。
着けばわかるとかなりフワッとした説明だったが、貴重な証言者候補を確保する為にも、成功させなければならない重要案件となっている。
これの如何では、ローズを取り巻く立場、身の安全が大きく変わることだろう。
などど。ダンジョンへ来た理由を再確認して、決意を新たにしたところで。
それはそれ、これはこれとばかりに。目の前の現状に、一つ溜息を漏らす。
遡ること数時間前。清鎖派の連中から開放された俺達は、ダンジョン攻略を進めるべく探索を再開した。この迷路のような通路でも、同じ道を何度も通ることなく、順調に進むことができたのは、偏にマップ機能のおかげだろう。
しかし、この巨大な壁を見てわかるように、陽の当たるダンジョン・アルカンは今まで踏破してきたダンジョンに比べて余りにも広大だった。
数時間歩き続けたのにもかかわらず、全体の十分の一以下の進行度しかない。
ダンジョンの事情通こと、ローズさんの話によれば最高進度の冒険者でも、全体の半分も攻略が進んでいないとのこと。
少しばかり、安請け合いしてしまったかと後悔を浮かべた矢先。
本日二度目の袋小路、つまり行き止まりに遭遇してしまったのだ。
「完全に行き止りね」
清鎖派の連中とやりあって以降、ノリにノったローズさんが壁を叩きながら呟く。
どことなくベテラン冒険者の風格を漂わせているのは、きっと幻だろう。
「これは参りましたね、ここを引き返すとなると半日は覚悟しなくては……」
クレアさんも続く。
確かに言う通りだ。このまま引き返して違うルートを選べば半日を無駄にしてしまう。
途中、魔物に遭遇することを考えると。場合によっては、もっと時間を取れれてしまうことだって充分に有り得る。
現に此処に来るまでに、三度ほど魔物との戦闘があった。
そのどれもが時間節約の為と、俺が先頭に立って一撃で倒してきたが。
結局は魔石の回収やら何やらで、時間をとられてしまう結果になった。
とはいえ、時間のロスは勿体無いが、ここは引き返すしか手段がないようだ。
「道がない以上、仕方ないですね。来た道をひ……」
そう言おうとした時だ。
「この壁が壊せたらいいのに」
ローズが呟いた何気ない言葉に、天啓が降りた。
なるほど。そうか、そうだよな。
わざわざ異世界に来てまで、現代人の常識に縛られる必要なんてないよな。
「あ、ありがとうございます! ローズさんっ!」
思わずローズの手を硬く握りしめて、ブンブンっと上下させた。
「えっ、あっ、なに!?」
頬を赤くして戸惑うローズ。
それとは他所に一頻りお礼を言い終えた俺は、『アイテムパック』から始まりの剣という名の戦斧を取り出して、ダンジョンの壁に向かって構える。
「ごっ、ご主人様っ。どうするつもりですか?」
俺の奇行にクリスティーナが心配そうな声をあげた。
「ローズさんにヒントを貰ったんだ、いや答えその物と言ってもいい。進む通路がなければ、自分の手で作ってやればいいんだ」
スキル『フルスイング』が発動してことを感じ取ったところで、ダンジョンの壁めがけて戦斧を全力で叩きつける。
戦斧が風の壁を破り、爆発音とも聞こえる大音響が響く。
一拍遅れて生まれた暴風が周囲の砂埃を巻き上げた。
砂埃が晴れた先、姿を見せたのは大きくヒビの入った壁。
「……すごい」
後ろからクレアさんの感嘆の声が漏れた。
「わたしのご主人様ですからね、これくらいの事は当然ですっ」
なぜか、鼻高々なクリスティーナさん。
ほんの少し前まで、心配そうな声をあげていたの知っているよ。やまださんは。
「さすがね、でも貴方の力を持ってしても壊すことは難しいのね。一体この壁はどんな材料で作ってあるのかしら」
「もう少し待ってください、試してみたいことがあるので」
ここは一つ。困ったときのスキルウィンドウさん。
カモンッ、セイ。
スキルポイント:19
アクティブ:スキル
HPストック:LvMax
フルスイング:Lv1
火属性魔法:Lv20
水属性魔法 Lv1
回復魔法:Lv2
パッシブ:スキル
アイテムパック:LvMax
マップ:LvMax
言語:LvMax
ちなみにレベルは魔物の経験地がよかったのか、42までレベルアップしていた。
よし、残りのスキルポイント19を全部スキル・フルスイングへ注ぎ込めばきっといける。
スキルポイントを振込先へと。……よし。
無事に引き落とされたのをウィンドウ画面で確認して、再度『フルスイング』発動。
ブオンっと頼もしい発動音と共に、赤いエフェクトが全身を包む。
「ちょ、ちょっとソレ魔法なのかしら? なんだか燃えるように赤いけど大丈夫?」
「……ええ、大丈夫です」
いや、わからないよ。
わからないけど、大丈夫だと信じてる。
そう自分に言い聞かせるように、全力で振り抜く。
踏み込んだ石材の床は大きく抉れ、戦斧が赤い閃光になって壁に撃ち込まれる。
先程とは違った砲撃にも似た打撃音、巻きあがった暴風は螺旋状に吹き荒れる。
――ピキッ、ガガッダ。
蜘蛛の巣状に広がったヒビは中心部が決壊すると同時に、ガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
「……ほ、本当にダンジョンの壁を壊してしまったわ」
どうにもこのダンジョン中心部に用事があるらしく、その代行が今回のお仕事らしい。
着けばわかるとかなりフワッとした説明だったが、貴重な証言者候補を確保する為にも、成功させなければならない重要案件となっている。
これの如何では、ローズを取り巻く立場、身の安全が大きく変わることだろう。
などど。ダンジョンへ来た理由を再確認して、決意を新たにしたところで。
それはそれ、これはこれとばかりに。目の前の現状に、一つ溜息を漏らす。
遡ること数時間前。清鎖派の連中から開放された俺達は、ダンジョン攻略を進めるべく探索を再開した。この迷路のような通路でも、同じ道を何度も通ることなく、順調に進むことができたのは、偏にマップ機能のおかげだろう。
しかし、この巨大な壁を見てわかるように、陽の当たるダンジョン・アルカンは今まで踏破してきたダンジョンに比べて余りにも広大だった。
数時間歩き続けたのにもかかわらず、全体の十分の一以下の進行度しかない。
ダンジョンの事情通こと、ローズさんの話によれば最高進度の冒険者でも、全体の半分も攻略が進んでいないとのこと。
少しばかり、安請け合いしてしまったかと後悔を浮かべた矢先。
本日二度目の袋小路、つまり行き止まりに遭遇してしまったのだ。
「完全に行き止りね」
清鎖派の連中とやりあって以降、ノリにノったローズさんが壁を叩きながら呟く。
どことなくベテラン冒険者の風格を漂わせているのは、きっと幻だろう。
「これは参りましたね、ここを引き返すとなると半日は覚悟しなくては……」
クレアさんも続く。
確かに言う通りだ。このまま引き返して違うルートを選べば半日を無駄にしてしまう。
途中、魔物に遭遇することを考えると。場合によっては、もっと時間を取れれてしまうことだって充分に有り得る。
現に此処に来るまでに、三度ほど魔物との戦闘があった。
そのどれもが時間節約の為と、俺が先頭に立って一撃で倒してきたが。
結局は魔石の回収やら何やらで、時間をとられてしまう結果になった。
とはいえ、時間のロスは勿体無いが、ここは引き返すしか手段がないようだ。
「道がない以上、仕方ないですね。来た道をひ……」
そう言おうとした時だ。
「この壁が壊せたらいいのに」
ローズが呟いた何気ない言葉に、天啓が降りた。
なるほど。そうか、そうだよな。
わざわざ異世界に来てまで、現代人の常識に縛られる必要なんてないよな。
「あ、ありがとうございます! ローズさんっ!」
思わずローズの手を硬く握りしめて、ブンブンっと上下させた。
「えっ、あっ、なに!?」
頬を赤くして戸惑うローズ。
それとは他所に一頻りお礼を言い終えた俺は、『アイテムパック』から始まりの剣という名の戦斧を取り出して、ダンジョンの壁に向かって構える。
「ごっ、ご主人様っ。どうするつもりですか?」
俺の奇行にクリスティーナが心配そうな声をあげた。
「ローズさんにヒントを貰ったんだ、いや答えその物と言ってもいい。進む通路がなければ、自分の手で作ってやればいいんだ」
スキル『フルスイング』が発動してことを感じ取ったところで、ダンジョンの壁めがけて戦斧を全力で叩きつける。
戦斧が風の壁を破り、爆発音とも聞こえる大音響が響く。
一拍遅れて生まれた暴風が周囲の砂埃を巻き上げた。
砂埃が晴れた先、姿を見せたのは大きくヒビの入った壁。
「……すごい」
後ろからクレアさんの感嘆の声が漏れた。
「わたしのご主人様ですからね、これくらいの事は当然ですっ」
なぜか、鼻高々なクリスティーナさん。
ほんの少し前まで、心配そうな声をあげていたの知っているよ。やまださんは。
「さすがね、でも貴方の力を持ってしても壊すことは難しいのね。一体この壁はどんな材料で作ってあるのかしら」
「もう少し待ってください、試してみたいことがあるので」
ここは一つ。困ったときのスキルウィンドウさん。
カモンッ、セイ。
スキルポイント:19
アクティブ:スキル
HPストック:LvMax
フルスイング:Lv1
火属性魔法:Lv20
水属性魔法 Lv1
回復魔法:Lv2
パッシブ:スキル
アイテムパック:LvMax
マップ:LvMax
言語:LvMax
ちなみにレベルは魔物の経験地がよかったのか、42までレベルアップしていた。
よし、残りのスキルポイント19を全部スキル・フルスイングへ注ぎ込めばきっといける。
スキルポイントを振込先へと。……よし。
無事に引き落とされたのをウィンドウ画面で確認して、再度『フルスイング』発動。
ブオンっと頼もしい発動音と共に、赤いエフェクトが全身を包む。
「ちょ、ちょっとソレ魔法なのかしら? なんだか燃えるように赤いけど大丈夫?」
「……ええ、大丈夫です」
いや、わからないよ。
わからないけど、大丈夫だと信じてる。
そう自分に言い聞かせるように、全力で振り抜く。
踏み込んだ石材の床は大きく抉れ、戦斧が赤い閃光になって壁に撃ち込まれる。
先程とは違った砲撃にも似た打撃音、巻きあがった暴風は螺旋状に吹き荒れる。
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