現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

ローズのお願い2

「あ、貴方に、護衛依頼をしたいのっ!」




 ローズさんからご指名を頂いたけど、これは一体どういうことだ。




「どういうことでしょうか?」




「実は……」




 かくかくシカジカ、まるまるウマウマ。


 ザックリと、まとめてしまえば、こんな感じ。


 どうやらローズには、異母姉妹の姉がいるらしい。


 第一子である姉よりも、正室の子であるローズの方が継承権が高く、それを良く思わない姉から、命を狙われているとのこと。


 今回は、その護衛をしてほしいようだ。




「私の冒険者としての階級は、『黒曜石』よ。
これは下から数えて二番目。それなのに、指名依頼が来るなんてあり得ない。」




「罠の可能性があると?」




「ええ、間違いないわっ」




「その依頼を断ることは、できませんか?」




 罠とわかっていて、わざわざ突っ込んでいく必要なんてない。




「それはできないわよっ、冒険者が依頼を断るなんて信念に反するわっ!」




 何の信念だよ、ローズさんアナタは、ブレーキの壊れたトラックですか。


 しかし、止めたところでいってしまうんだろうな。


 だって、握り拳を作りながら、熱く語っちゃってるもん。




「もちろん、前回のお礼も上乗せして、お礼は弾むわ」




 まぁ、しゃーないよな。


 知り合ってしまった以上、見殺しにはできないわ。




「わかりました、受けましょう。で、その受けた依頼とは?」




「ゴブリン退治よっ!」








 その後、終始和やかな雰囲気で、ニコライさん主催のお食事会は進んだ。
運ばれ続けた料理は、見た事がない肉や野菜と、刺激的だったが。


 どれも、美味しい物ばかりだった。




 宴もたけなわ、腹もこれ以上入らないといったところで店をでることに。




「ニコライさん、ご馳走様でした」




「いえ、こちらこそ、楽しい時間をありがとうございます」




「では、ローズさん、後ほどに」




「ええ、よろしくお願いするわ」




 みんなに見送られながら、その場を後にする。


 気がつけば、陽もすっかりと暮れ、町並みは夜の様相に。


 さて、今日の宿を探さなくては。
さすがに、知らない街で野宿とかハードルが高い。




「ご主人様っ、とても美味しい食事でしたねっ」




 満足気な表情をしたクリスティーナが、声をかけてきた。
確かに、クリスティーナが言うように、もう一度食べに行きたくなる味だった。




「ああ、ダンジョンで稼いだら、また食べに行こうな」




「はいっ、私がんばりますねっ!」




「そうだ、クリスティーナ」




「なんでしょう、ご主人様っ」




「今日は、エルザの、『猫のマタタビ亭』に泊まろうかと思うけど、どうかな?」




 この街に疎い俺には、そこぐらいにしか当てがない。




「ダンジョンで、ご主人様が助けたあの猫人族の方ですね。いいですねっ、いきましょう!」




 と、大袈裟に手をあげて答えるクリスティーナ。


 なんだか、普段よりも動作がオーバーな気がするし、頬も桃色に染まっている。
これは、もしかすると、酔っ払っているのかもしれない。


 そういえば、給仕に注がれるまま、ワインを飲み干していた気がする。
確認しただけでも、4,5杯は飲んでいるじゃないだろうか。


 まぁ、アレだ。楽しそうにしていて何よりだ。


 俺もほろ酔い気分で、気持ちいい。


 夜風を頬に受けながら、街を歩く。


 街灯がある為か、日が暮れた今もそこまで暗くない。
それどころか、オレンジ色の暖かい光が、建物や歩く人々を照らす姿は異国情緒あふれる。


 『猫のマタタビ亭』は、名前だけしか知らなかった為、歩く人にその場所を聞くと、すぐにわかった。


 それなりに、この街では有名らしい。


 程なくして、『猫のマタタビ亭』に着く。


 猫をあしらった木製の看板が、印象的な宿だ。
木造建築の二階建て、そこまでは大きくないが、温かみのある雰囲気がいい。


 木製のドアを開けると、まさに、お目当てのエルザがお盆を持って立っていた。


 俺達を見て、エルザが固まる。


 お尻のシッポなんか、ピンッと直立不動だ。




「おっ、おっ、お……、お化けニャ――ッ!!!」




 エルザの叫び声が、 猫のマタタビ亭に響き渡った。














「ご、ごめんニャ……てっきり、お化けかと思ったニャ」




 エルザの母親、 つまり猫のマタタビ亭の女将に「お客さんをお化け扱いするとは何事か」と、怒られたエルザが謝る。


 まぁ、気持ちはわからないでもない。
なにせ、『送還』で、目の前から突然消えてしまったしな。




「もう気にしていないから、大丈夫だよ」




「でも、来てくれて嬉しいニャ。ヤマダは命の恩人だから、うんとサービスするニャ」




 と言うエルザに、部屋へを案内されて入る。


 今回は、部屋を二つとることにした。


 男女が一つ部屋にいたら、もしかしたら、もしかしちゃうだろ。
と、言っても、そんな勇気があったら、この年まで童貞してないけどな。




「じゃあ、クリスティーナ。また明日」




「は――いっ」




 おう、ご機嫌さんだなクリスティーナさん。




「では、ごゆっくりニャ」




 そう言い残して、エルザはパタパタと去っていった。


 他にもお客さんで賑わっていたし、きっとエリザはエリザで忙しいのだろう。


 ベットに身を投げると、お酒が入っているせいか、眠気が襲ってきた。






 ギギィ――ッ。






 ドアが開く音で、目が覚める。


 どうやら、少し眠っていたらしい。


 ドアの向こう、顔を赤らめた姿で立っていたのは、クリスティーナだった――。




「……クリスティーナ?」





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