現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

ローズのお願い

「シャーロット……王女……!?」




 驚きの表情を浮かべたニコライさんが、声を漏らす。


  シャーロット王女って、誰だろう。
なんとなく、その名に覚えがあるけど、思い出せない。


  シャーロット、 シャーロット……。


 ああっ、わかった。


 確か、ローズの本名が シャーロットじゃなかっただろうか。
以前、ステータスを確認したときに、見た気がするぞ。




「貴方は確か、御用商人のニコライだったかしら? 
今日は、一冒険者のローズよ。そう、接してもらえると嬉しいわ」




 と、答えるローズさん。


  シャーロット王女で、間違いないようだ。


 それにしても、ローズが王女ってマジか。
何で、冒険者なんかやっているんだよ。




「わかりました。では、そのように」




 ナイスミドルと、同じようにローズに向かって、一礼をするニコライさん。


 それから、本家ナイスミドルにイスを引かれて席につく。


 丸いテーブルを囲んで、正面にニコライさん、左にはクリスティーナ、右にはローズ。そして、ローズの横にクレアさんが座る配置だ。




「しかし、ヤマダさんが、 王女……いや、ローズ様のお知り合いだったとは驚きました」




 俺も、驚いたじゃんね。だって、初めて聞いたし。




「彼には、仲間の命を救ってもらったことがあるのよ」




「それは奇遇ですね、私もヤマダさんには、助けられた経験がありまして。今日も、そのお礼をしたくて、食事の機会を頂いたのですよ」




 などと、会話が進むうちに、数人の給仕によって食事が運ばれてきた。


 どうやらコース料理のようで、一品目はスープだ。
オレンジ色のスープが、陶器の大きめなお皿に盛られている。


 湯気が運ぶ、美味そうな匂いが堪らないな。


 そして、グラスにワインのような物が注がれ、準備は完了のようだ。


 ニコライさんが、グラスを掲げる。
それに合わせるように、皆がグラスを掲げた。




「それでは、始めましょうか。ヤマダさんに感謝をっ!」




 ニコライさんの合図で、グラスのワインに似た液体をゴクリ。


 やはり、見た目通りワインのようだ。


 葡萄の芳醇な香りが、鼻を抜ける感じが気持ちいい。


 そして、スープをスプーンですくって口に運ぶ。
少し、酸味の効い濃厚な豆のスープ。


 後からくる、ピリッと辛い、香辛料の味がスープをすくう手を止められない。




「そういえば、以前ご一緒したダンジョンが踏破されたようで、『レコード』にはヤマダさんと同じ名前が刻まれていましたが、もしかして……?」




 ニコライさんからのお問い掛け。


 って、もう知れ渡っているの。
さすが、迷宮都市、情報が早すぎるだろ。


 さてと、どう答えたものか。
隠したところで、特にメリットもあるわけでもないし。


 普通に、答えちゃってもいいだろう。




「はい、ニコライさんが仰る通り、ここにいるクリスティーナと一緒に踏破しました」




 と、言ったところ。


 何故だか、クリスティーナ以外の全員から視線が集まる。


 あれ、マズイことでも言ってしまったか。
もしかして、勝手に踏破しちゃうと、ダメな感じだったらどうしよう。


 いや、でも。出口で警備兵に、何も言われなかったし。


 大丈夫、大丈夫。……たぶん。


 などと思いつつも、次の言葉を待つ。




「やはり……ヤマダさんでしたか。さすがと言ったところですな」




 と、ニコライさん。


 よほど、トレインを撃破した事実がニコライさんの中で大きいようだ。




「あの、あれは、そんなに難しいダンジョンだったのでしょうか?」




「っ……」




 またしても、フリーズ。


 ややあって、今度はローズさんの口が開いた。




「知らなかったのっ!? あのダンジョンは今まで、誰もクリアされていなかったのよっ」




 少し興奮気味で語る姿を見るに、大事件の予感。


 チラリ、横を見ればスプーンを両手で握りキョトンとした様子。
薄々感じていたけど、このクリスティーナさん、ダンジョンには余り詳しくないらしい。


 ローズの力説を聞くに、あのダンジョンは比較的に新しいもののようだ。
しかし、ダンジョンの探索者として有名な『ニッカー』が、攻略を断念したことで、一躍有名に。


 ダンジョン入り口付近が、賑わっていたのもそれが原因らしい。


 きっと有名探索者が断念したダンジョンを踏破して、名をあげようとしている冒険者達なのだろう。


 それが、ついに攻略され、『レコード』に踏破者の名が刻まれた。
そのニュースは瞬く間に、迷宮都市に広まり、今一番ホットな話題になっているだとか。




「いやぁー、憧れますよ、ヤマダさん。いつかは、『レコード』に自分の名も刻んでみたいものです」




 と言ったニコライさんにローズが、うんうんと頷く。


 ローズも、かなりのダンジョン好きらしい。
力説しているときの目が、マジだったもん。


 そういえば、ローズは何でついて来たのだろうか。
何か用事でもあったような、雰囲気だったけど。




「そういえば、ローズさん。自分に何か用事でもあったのではないですか?」




 さりげなく、お声がけ。




「そ、そうよっ、貴方に頼みたい事があって来たのよっ」




 一応、ローズは王女らしいし、出切る事なら受けておいたほうが良さそうな気がする。
やっぱ、コネは大事だって、叔父のよしえさんが口癖のように言ってたからな。


 女装で、黄昏る姿は結構くるものがあった。




「なんでしょう」




「あ、貴方に、護衛依頼をしたいのっ!」




 ローズさんからヤマダに、ご指名が入ってしまったぞ。
 

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