現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

冒険者ギルドの反乱5

 詠唱を終えて、さらに輝きだすクリスティーナ。


 ついに、神聖魔法が発動してしまう予感。


 その神聖魔法とやらが、一体どんなものなのか、まったくわからないが。
クリスティーナから発せられる輝きが、伊達や酔狂ではないことを伺わせる。


 ネトゲであればきっと、リキャストタイムが長いタイプのやつ。


 しかし、わざわざ神聖魔法を発動させなくても、バットで殴ってしまえば。
この人数くらい、簡単に倒せるのでは、と思うのだが。


 まさかここで、口に出すなんて出来るはずもない。
それほどまでに、圧倒的なエフェクトで光り輝いている。




「神聖魔法・ホーリーサークル」




 クリスティーナの言葉と共に、眩い閃光が走った。


 そして、聞こえてくる黒鷹一味の呻き声。


 眩しくて、状況が掴めないが。
きっと、範囲攻撃の類ではないだろうか。


 程なくして、閃光が消えると、徐々に視界が戻ってきた。


 周りを確認すれば、取り囲んでいた黒鷹一味のほとんどが倒れている。


 唯一、倒れていないのはハゲマッチョのみだったが。
それも片足をつき、肩で息をする様子。


 ダメージもそれ相応に受けていそうだ。


 やるなぁ、ウチのスケルトン。


 強いじゃないか。




「はぁっ、はぁっ……なんだよぉ、これは……意味がわかんねぇ」




 まったくもって、その通りだ。
しかし、食の恨みとはとても重いのだよ。


 ふと、クリスティーナを見てみれば。


 なにやら、様子がおかしい。


 うっすらと、その姿が消えかかっている。




「お花……お花畑が綺麗……」




 おう、やばいなこれは。


 三途の川を渡っちゃうよ。


 スケルトンが神聖魔法なんか使っちゃったせいで、成仏しかかっているのではないだろうか。


 肩鎖関節あたりを掴んで揺さぶる。




「も、戻ってこいっ! クリスティーナ!」




「そこにいるのは、亡くなったおじいちゃん……?」




「しっかりしろっ!」




「……はっ、ご、ご主人様」




 意識をとり戻したクリスティーナは、キョロキョロとあたりを見まわす。


 どうやら、無事に山場は乗り越えたようだ。




「だ、大丈夫かしら?」




 ローズさんから、クリスティーナの身を案ずるお声かけ。




「もう、大丈夫です」




「そ、そう? ならいいのだけれど……」




 さて、バットを持ち直してハゲマッチョ方へ。


 すると、どうだ。


 当初の勢いは、すっかりと消えうせ。狼狽したようにみえる。


 おまけに、




増援・・はどうした……なぜ来ない」




 などと、つぶやいている。


 もしかして、後から増援が来る予定だったのか。
それはそれで、面倒くさいな。




「まぁ……いい。お前達を殺せば、いいだけの話だ。少しばかり、計画・・が早くなるが仕方ねぇ」




 ハゲマッチョが、俺を睨みつける。


 ロックオンされてしまったようだ。




「うおおおおおおおおおっ!」




 剣を振り上げて、襲い来るハゲマッチョに向けて、


 バットを振りかぶる。


 気分はまるで、ホームランを狙うバッター。


 少年野球で培ったバッティングを見せてやる。


 振ったバットが、剣を捉えた。


 バッゴッという音が鳴ったかと思えば、剣が粉々になる。


 しかし、バットは止まらない。


 そのまま、ハゲマッチョの顔面を打ち抜く。




「ぐうぇごっ」




 ハゲマッチョはクルクルと回転しながら、壁に激突し、そのまま外へ突き抜ける。


 落下音が聞こえたかと思うと、野外から歓声があがった。


 ハゲマッチョ討伐戦終了のお知らせだ。




「まさか、あれだけの人数を、倒してしまうなんて思わなかったわ」




「いや、クリスティーナのおかげだよ」




 人数だけ考えれば、クリスティーナが一番倒している。


 ただし、自身も成仏しかけたが。




「お役に立てたようで、嬉しいですっ」




 と、言いつつ自らリュックに入っていくクリスティーナさん。


 ソコに入るのが、クセになってしまったのだろうか。




 ぎゅるるっと、腹が鳴る。




「わっ、わたしじゃありませんからねっ」




 と、クリスティーナさん。


 大丈夫、鳴らないのはわかっているよ。




「そ、そうね……」




 ローズさんが、リアクションに困っている。
ごめんなさい、やまだのお腹が鳴ったのです。


 体を動かしたせいか、本格的にお腹がすいてきたぞ。
こんなところ、さっさと抜けだしてご飯だ、ご飯。




「ローズさん、俺達はここで……」




 と、この場を去ろうとしたときだ。


 騒々しい音が。


 これは、1階から駆け上がっている音だろう。


 数人の男女の姿が見えた。


 先頭に立つ、壮年の男が口を開く――




「これは一体どうなっているんだ?」




「マ、マスター?」




 ローズさんの言葉で、相手がギルドマスターと推測できる。
これで、ますますと面倒くさい展開になりそうだ。


 異世界料理は、涙を飲んではあきらめよう。




(クリスティーナ、逃げるぞ)




 小声で、リュックのクリスティーナさんへ。




(逃げっ……はっ、はい)




 ハゲマッチョを、吹き飛ばしたときに開いた壁から飛び降りる。




「ま、待ちなさいよっ」




 叫ぶローズさんの声なんて聞こえない。


 全力前進。


 向かう先は、ダンジョンへ。









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