現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

ダンジョンに潜る準備

「なっ、なんだこれは……!?」




 アレ・・が見えるようになったのは、ちょうど一週間前。


 バイトからの帰宅途中、偶然通りかかった裏路地にポッカリと開いた、洞窟ダンジョンへの入り口があった。


 あまりにも、非現実的な光景に目を疑った。


 だってそうだろ。なんの変哲もないビルの壁に、そんな物があったら誰だって驚く。


 しかし、何度も目を擦って見直してみても、洞窟ダンジョンへの入り口は消えることはなかった。


 それどころか、こんなモノがあるのにもかかわらず、誰も気にする様子がない。
本来であれば、警察や消防隊が集まって大騒ぎになるはずなのに。


 もしかして、にしか見えていないのか?


 試しに触れてみると、ゴツゴツとした岩の感触が。


 幻覚の類かと思ったけど。どうやら、そうではないらしい。


 おまけに何の冗談か、洞窟ダンジョンステータス情報の表示つきだ。






 【始まりの洞窟RE】 


 難易度: ☆ 


 推奨レベル: レベル1~


 クリア報酬: 360ポイント


 残り受付時間: 168:45:31






 このステータス情報は、視覚にマスクするように表示されている。
視線を洞窟ダンジョンから外せば消え、目線を戻せばスッとステータスが再度表示される。


 まるでゲームのようなシステムに、恐怖心よりも好奇心の方が強くなった。


 こんなものが目の前にあらわれては、とてもじゃないが無視など出来きるわけがない。


 だからと言って、何も考えずに飛び込んでしまうほど、俺の神経は図太くもない。
俺がまだ、十代であったなら何も考えずに飛び込んでいただろう。


 しかし、残念ながら俺は、28歳。世間で言えば、アラサーだ。
もうすでに、中年に片足を突っ込んでいる。


 だから、悩んだ。多いに悩んだ。


 家に戻っても、洞窟ダンジョンのことが頭から離れない。
それは風呂に入っているときも、食事をしているときもずっと、洞窟ダンジョンのことばかり考えていた。


 冒険・・という二文字が、俺の心に残った少年の部分をしっかりと掴んで離さない。


 しかし、洞窟ダンジョンというからには、きっとモンスターだっているハズだ。


 そうなれば、当然、死ぬ可能性だってある。
正直にいえば、死ぬのは怖い。現実にはコンテニューなんてないのだから。


 元々あった残り受付時間の表示が、168時間から28時間切るくらいになった頃。


 俺は、ついに決断した。


 洞窟ダンジョンに潜ると。


 恐怖心や、不安よりも好奇心が勝ってしまった結果だ。
それに、『あのとき潜っていたら』と、年老いてから後悔はしたくない。


 いざ、決断してみると遠足いく前のようなワクワクとした気持ちになった。
こんな高揚とした気分になったのは、何年ぶりだろうか。


 急いで、銀行から現金を下ろした俺はダンジョンに潜る為の準備を始めた。


 まず、用意したのは防具だ。


 安全マージンを確保するためにも、防具には十分な予算を割いた。


 バイク用のプロテクターで全身を覆い、靴には安全靴。


 頭にはフルフェイスのヘルメットをと思ったが、視野の狭さと音の聞き取りずらさを考慮して。
コンバットヘルメットをネット通販で購入した。


 防護盾も一緒に購入するかどうか悩んだが、ダンジョンの中がどのような広さなのがわからない事と、片手が埋まってしまうのは得策ではない気がして断念した。


 あと、忘れてはいけないのは防護メガネ(曇り防止つき)だ。


 視野は大事だ。毒を吹きかけるモンスターがいるとも限らない。
只でさえ、洞窟ダンジョンという未知の場所で、視野を失ってしまえば致命的だ。
これは、二眼型を用意した。




 他に用意したものは、これらだ。




 武器: 手斧、硬めの金属バット、スタンガン、サバイバルナイフ


 照明: ヘッドライト(ヘルメット装着)、発炎筒、LEDライト


 その他: 食料、水、救急キット、登山用ロープ、防護マスク(アスベスト対応)、着火材、ライター、虫除けスプレー、スポーツタオル・スマホ




 食料は調理が必要のないタイプを数日分。
携帯できないものは、登山用リュックに入れて持ち運ぶことにした。


 貯金がずいぶんと寂しくはなったが。これで、準備は万端だ。


 きっと、いけるはず。


 洞窟ダンジョンの入り口に立つ。


 よかった、まだあった。


 深呼吸で、息を整え、


 パンッ。


 両頬を叩いて、気合を入れる。




 よし、洞窟ダンジョンに潜ろう!


 

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