現実世界にダンジョン現る! ~アラサーフリーターは元聖女のスケルトンと一緒に成り上がります!~

私は航空券A

はじめてのダンジョン

 いざ、洞窟ダンジョンの中へと踏み込む。


 すると、




 『洞窟ダンジョン【始まりの洞窟RE】の攻略が開始されました。』




 ピッ。




 『攻略終了までの残り時間: 72:00:00』




 ピッ。




 『ファースト・アタックにつき、冒険者のステータスを表示します。』




 ピッ。




名前:ヤマダ タケシ
性別:男
種族:人間
ジョブ:冒険者
レベル:1
HP:31
MP:19
STR:6
VIT:4
INT:5
DEX:7
AGI:3
スキルポイント:0




 お、おう。なんかでた。


 いきなり色々と出てきたせいで、ビクッとしてしまった。


 このステータスは、俺のもので間違いないようだ。
だって、俺の名前が書いてあるし。もし、これで違っていたら色々と信じられなくなる。


 ちなみに、このステータス表示は、任意でオンオフできるようだ。
表示したいときは、そう思えば表示できるし、消したいときは同じようにすることで表示が消えた。


 中々と、便利な機能である。


 しかし、レベル1とはいえ。このステータスの低さは大丈夫なのだろうか。
色々と不安が残るが。ここまできて、まさか引き返すわけにもいかない。


 気を引き締めなおして、進もう。


 剥きだしの地面に、緩やかな傾斜が続く通路。


 少し、鼻につく苔の匂い。


 不思議と視野は暗くはない。ライトが無くても、十分に進めるほどの明さ。


 よく見れば、洞窟ダンジョン内の壁面がぼんやりと光っているようだ。どんな理屈で光っているのか、わからないがこれは助かる。


 金属バットを両手で握り。一歩、一歩、慎重に洞窟ダンジョンの奥へと進む。


 いつモンスターが出てくるかわからないと考えると、


 心臓がドクドクと、痛いほどに脈打つ。


 暑くもないのにツーと、一筋の汗が流れ落ちた。


「大丈夫だ、大丈夫」と、何の根拠もないことを呟きながら洞窟ダンジョンの奥へと進む。


 そんな俺の気持ちとは裏腹に、モンスターに出会うこともなく。
10分ほど進んだ先に、少し開けた空間にでた。


 広さは三十畳ほど。天井が通路よりもずいぶんと高い。
あとは向こう側に通路があるだけで、特にこれといったものはない。


 緊張したせいか、喉がカラカラだ。


 周囲の安全を確認した後に。
登山用リュックから、水の入ったペットボトルを取り出して、勢いよく喉に流し込む。


 ふう。お水が美味しい。




『ブフウッ ブフウッ……』




 なにか、音がする。


 これは鳴き声か?




 周りを見渡すと、向こう側の通路から猪に似た動物が一匹。
大きさは体長およそ150cm。姿形は、猪や豚と大して違わない気がする。


 違うとすれば、額から大きな角がはえているところか。


 ついに、モンスターとエンカウントしてしまったぞ。








 覚悟を決めてきたハズなのに。初モンスターを目の前にして、心臓がバクつく。


 どうしよう、あんな角で突かれたらプロテクターなど簡単に突き破ってしまいそうだ。


 そうだっ、まずはステータスだ。ステータス。




種族:一角豚
性別:男
レベル:1
HP:43
MP:0
STR:8
VIT:6
INT:0
DEX:1
AGI:9




 猪じゃなく、豚だった。


 表示されると思ってはいたが、モンスターにもステータスが表示されてよかった。このステータスなら、こっちは武器も持っているし、ゲームだったらまず勝てる数値だ。


 しかし、野生の動物を目の前にすると恐怖心が湧いてくる。


 映像と実物では、まるで迫力が違う。




『ブフウッ ブフウッ……』と、鳴き声をあげながら少しづつ、距離を詰めてくる一角豚。




 俺は、リュックを下ろして。


 金属バットを握り直す。


 たぶん、ここが俺のターニングポイントなんだ。


 お世辞にも頭の良いと言えない大学を中退した後、プラプラとバイトをして過ごしてきた俺が変れるとしたら、きっとここ以外にない。


 ずっと、待っていた。ほんの少しでいい。


 俺の背中を押してくれる何かを。




「こいっ、豚野郎っ!!」




 自身に気合を入れるつもりで、力いっぱい叫ぶ。




『ブウオオオオオオオッ!』




 それに反応したかのように俺に向かって、一直線走りだす一角豚。


 想像していたより、ずっと早い。


 慌てて、横へ転げるように避ける。


 間一髪。一角豚は、そのまま壁へ突き刺さった。
その隙に、立ち上がり一角豚から距離をとる。


 はぁっ、はぁっ……これはヤバイ。何度もできる芸当じゃないな。
それに思っていたよりも、体力の消耗が激しい。


 たった一回、避けただけなのにもう息があがっている。


 一角豚は、壁に突き刺さったツノを引く抜くと、態勢をまた俺へと向ける。


 あがった息を整えながら、考える。


 正面から金属バットで殴りつけても、あの一角豚が止まるとは思えない。
それにあの角が邪魔して、正面からバットを打ちつけるのは難しそうだ。


 かと言って、自分から近づくか? いや、それは危険すぎる。


 今の動きを見るに、小回りはあまり得意じゃなさそうだ。
避けながら、殴りつけるしかない。これでいこう。


 よし、やってやる。




『ブウ、ブウッオオオオオッ!』




 後ろ足を蹴って、走りだす一角豚。


 失敗は考えるな! 絶対にできるハズだ。


 震える足に活を入れて、それを正面から迎え撃つ。




 今だっ!




「だああああああああああっ!」




 右側に避けて、側面から一角豚の頭部に向けて力いっぱいバットを叩きつける。




 ドゴッ。




 鈍い音が響く。


 血が飛び散り、ふらつく一角豚。


 思ったよりも、効いたみたいだ。よし、もう一度だっ!




 ドゴッ。




 その場に倒れこむ、一角豚。
俺は、何度も、何度もバットを打ち込み続ける。


 ドゴッ。ドゴッ。ドゴッ。ドゴッ。……


 やがて、一角豚は動かなくなった。
バットは一角豚の血で染まって真っ赤だ。


 はぁ、はぁっ……勝ったのか?




種族:一角豚
性別:男
レベル:1
HP:0/43
MP:0
STR:8
VIT:6
INT:0
DEX:1
AGI:9




「たっ、倒したあああああああっ!」




 気がつけば、俺は雄叫びをあげていた。




 ピッ。




『経験値取得にボーナスがつきます。54の経験値を獲得しました。』




 ピッ。




『レベルアップ。スキルポイント15獲得しました。』

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