偽装結婚を偽装してみた
Chapter.114
ソファを背もたれにして、二人で床に座る。ホットカーペットの温もりが冷えた足先に沁みる。
「落ち着いた?」
「…うん」
玄関先で取られた手は繋がれたまま。
「けっこう何回も伝えたと思うんだけどなー、好きだよって」
「それは……ライクの意味だと思ってたから…」
「そう思ってるかなーとは思ってたけどさ」
ひぃなの手をもてあそびながら攷斗が笑う。
「好きでもない相手としないでしょ、結婚」
「だって…それは…ただの救済措置なのかなって」
「だってあのタイミングじゃなきゃ俺としてなかったでしょ? 結婚」
「それは…そうかも、しれないけど……」
「俺、めちゃめちゃドキドキしてたんだからね? さりげなく言って、もしダメでも、関係続けて次のチャンス掴めるようにって」
ひぃなが腑に落ちない顔をする。
「好きでもない人の誕生日、毎年わざわざ呼び出してまで祝ったりしないよ」
その言葉にひぃなが顔に疑問符を浮かべた。
「いつ、から…?」
「え? 好きになったの?」
「うん」
「そりゃーもう、最初っから。だから、もう十年以上前?」
「えっ…だって…彼女いたとき結構あったじゃん」
「うん、あった。出会ったとき、ひなにはもう相手いたみたいだし、いつまでも後輩扱いされて、もう望みないのかなって思ってたし。でもやっぱり申し訳なくて。ちゃんと真剣にお付き合いしてたけどね? 会いたいなって思うのは消せなくて……あ、ひなにね? 会いたいなって、誰と付き合っててもずっと思ってた。だから、長続きしなかった…。サイテーだよね」
攷斗が苦笑する。
それが最低だとしたら、いまその気持ちを聞いて嬉しい自分も最低だ、とひぃなは思う。
「婚姻届出したのはその場の勢いみたいなのもあったかもだけどさ、ひなと結婚したい、独り占めしたいって気持ちはずっとあって……恋人関係とか全部飛ばしちゃったし、色々…辛い思いもさせたけど…」握っている手に力を籠める。「この一年一緒に暮らしてきて、ひなのこと、もっと好きになった。もっと大事にしたいと思った。それだけじゃ、ダメかな」
ひぃなが首を振る。
「私も……一緒に暮らしてて、すごく安心できたし、楽しかったことのが多いし、それに……」小さく深呼吸をして「好きでもない相手と、たとえカッコカリだっとしても、結婚なんてしない……」
ひぃなの口から初めて聞くその言葉に、攷斗が顔を緩めた。
「きっと…私もけっこう前から…好き、だったよ。コウトのこと……」
「過去形なの?」
「今は…もっと、好き……」
照れたような怒ったような口調の告白に、攷斗が笑った
繋いだ手を離して、攷斗がひぃなに向き直り正座する。
「俺は、出会ってすぐの頃から、ひなが好きです。この先もずっと、隣にいてほしい。だから…俺と、結婚してください」
頭を下げる攷斗に、
「…はい…。ずっと、隣にいさせてください」
ひぃなが優しい声で言った。
頭をあげた攷斗に
「これからも、よろしくお願いします」
ひぃなが微笑みかけて、涙目で頭をさげる。
「こちらこそ」抱き締めて、「……大事にするから」攷斗が言う。
「わたしも……」
ようやっと言えたその四文字の言葉に、自然と笑顔が浮かぶ。少しの間抱き合って、身体を離した。
絡まる視線、近付く距離。
ゆっくり、遠慮がちに重なる唇。
これまでの物足りなさを埋めるように、口づけはしばらく続く。
「落ち着いた?」
「…うん」
玄関先で取られた手は繋がれたまま。
「けっこう何回も伝えたと思うんだけどなー、好きだよって」
「それは……ライクの意味だと思ってたから…」
「そう思ってるかなーとは思ってたけどさ」
ひぃなの手をもてあそびながら攷斗が笑う。
「好きでもない相手としないでしょ、結婚」
「だって…それは…ただの救済措置なのかなって」
「だってあのタイミングじゃなきゃ俺としてなかったでしょ? 結婚」
「それは…そうかも、しれないけど……」
「俺、めちゃめちゃドキドキしてたんだからね? さりげなく言って、もしダメでも、関係続けて次のチャンス掴めるようにって」
ひぃなが腑に落ちない顔をする。
「好きでもない人の誕生日、毎年わざわざ呼び出してまで祝ったりしないよ」
その言葉にひぃなが顔に疑問符を浮かべた。
「いつ、から…?」
「え? 好きになったの?」
「うん」
「そりゃーもう、最初っから。だから、もう十年以上前?」
「えっ…だって…彼女いたとき結構あったじゃん」
「うん、あった。出会ったとき、ひなにはもう相手いたみたいだし、いつまでも後輩扱いされて、もう望みないのかなって思ってたし。でもやっぱり申し訳なくて。ちゃんと真剣にお付き合いしてたけどね? 会いたいなって思うのは消せなくて……あ、ひなにね? 会いたいなって、誰と付き合っててもずっと思ってた。だから、長続きしなかった…。サイテーだよね」
攷斗が苦笑する。
それが最低だとしたら、いまその気持ちを聞いて嬉しい自分も最低だ、とひぃなは思う。
「婚姻届出したのはその場の勢いみたいなのもあったかもだけどさ、ひなと結婚したい、独り占めしたいって気持ちはずっとあって……恋人関係とか全部飛ばしちゃったし、色々…辛い思いもさせたけど…」握っている手に力を籠める。「この一年一緒に暮らしてきて、ひなのこと、もっと好きになった。もっと大事にしたいと思った。それだけじゃ、ダメかな」
ひぃなが首を振る。
「私も……一緒に暮らしてて、すごく安心できたし、楽しかったことのが多いし、それに……」小さく深呼吸をして「好きでもない相手と、たとえカッコカリだっとしても、結婚なんてしない……」
ひぃなの口から初めて聞くその言葉に、攷斗が顔を緩めた。
「きっと…私もけっこう前から…好き、だったよ。コウトのこと……」
「過去形なの?」
「今は…もっと、好き……」
照れたような怒ったような口調の告白に、攷斗が笑った
繋いだ手を離して、攷斗がひぃなに向き直り正座する。
「俺は、出会ってすぐの頃から、ひなが好きです。この先もずっと、隣にいてほしい。だから…俺と、結婚してください」
頭を下げる攷斗に、
「…はい…。ずっと、隣にいさせてください」
ひぃなが優しい声で言った。
頭をあげた攷斗に
「これからも、よろしくお願いします」
ひぃなが微笑みかけて、涙目で頭をさげる。
「こちらこそ」抱き締めて、「……大事にするから」攷斗が言う。
「わたしも……」
ようやっと言えたその四文字の言葉に、自然と笑顔が浮かぶ。少しの間抱き合って、身体を離した。
絡まる視線、近付く距離。
ゆっくり、遠慮がちに重なる唇。
これまでの物足りなさを埋めるように、口づけはしばらく続く。
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