気になるあの子はヤンキー(♂)だが、女装するとめっちゃタイプでグイグイくる!!!

味噌村 幸太郎

161 ワン切りでもいいよって言われて、するわけないだろ


 今から遡ること四年前、俺が中学二年生の夏だ。

 正直、オンライン小説は趣味の一つであり、ライフワークにすぎない。

 もちろん根強いファンがついてくれたことは感謝の極みだ。
 だが、出版となると抵抗があった。
 その理由は金だ。

 金が関わると色々と面倒だ。
 趣味の範囲内なら何も考えず、自分の書きたいものだけ書けばいい。
 正直、それが楽しかったのに、編集にいろいろと口を挟まれるのは俺の美学に反する。
 それでも俺の自宅には毎日電話がかかってきた。


『もしもし、先日もお電話しました。博多社の白金と申します』
「興味ない」
『え?』
 ブチッ!

 次の日……。

『あの! 博多社の……』
「死ね」
 ブチッ!

 また次の日……。
『あのぉ、白金ですけどぉ……』
「コノ、デンワバンゴウワ、ゲンザイ、ツカワレテオリマセン……」
『いや! ごまかされませんよ!』
 ブチッ!


 それが連日だ。ストーキング行為はやめてもらいたいものだな。
 だが、ある日、タイミング悪くして母さんが電話に出てしまった。

「あ、はい? 出版社の方ですか? え、うちのタクくんがですか? まあまあ……」
 母さんの眼鏡からは、輝きを感じる。
「ではお日にちはどうします? はい、はい……。わかりました、タクくんに伝えておきます」
 受話器を切ると共に、母さんの眼鏡が輝きを増していく。
「タクくん、今日はお赤飯を炊きましょうね♪」
「いや、俺は女の子ではないぞ」

 そう。周りの大人たちの思惑で勝手に作家デビューしたにすぎないのだ。
 不本意ながら……。

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