バーテンダーに落ちて酔わされ愛されて
XXVⅡ
「しばらくは来ない」
「えー、つれね~。俺とお前の仲じゃん」
「じゃあね」
「はいはい、またな」
カランカランと音をたてて閉まったドア。
最後まで言い合っていたけど、仲がいいんだか悪いいんだか…でも、きっと悪くはないんだろうなと感じた。
あんな風に誰かと砕けた会話してるショーマを見るのは初めてだったから。ショーマにも心を許せる友人っていたんだね。なんだか安心した。
「ショーマ」
「何?」
「機嫌直った?」
「…なんで?」
なんでってさっき不機嫌そうな顔してたじゃん、今は多分大丈夫そうだけど。
一応確認として。
「さっき、なんか不機嫌ぽかったから」
そういうと「あー…」と明後日の方向を見ながら苦笑いを見せた。
どうやら自分でも分かっていたようで、さっきはごめんと眉を八の字にして謝ってきた。
「機嫌はもう直ったから」
「よかった」
機嫌が悪いままだとこの後も楽しくしていけないもんね。
何が原因かは分からないけど、その原因のことは聞かないし、機嫌が直ったならそれでいいやと思った。
「ねぇショーマ、ちょっと海行こうよ」
「いいよ。アヤナの仰せのままに」
そう執事っぽく返したショーマは腰を抱いてきて海へと足を運んだ。
大きくて遥か彼方まで続いているんじゃないかってくらい広い海を目の前に、ショーマに腰を抱かれながら眺めていた。
ショーマから離れて打ち寄せる波にしかづくと、引いては迫ってくる波に濡れないように近づいたり後退したりを繰り返す。
それに満足したら砂浜に私とショーマの名前を数メートル後ろに立つショーマにバレないように書いたりするけど打ち寄せる波によって簡単に消されてしまう。
「あーあ、また消された」
これで4回目。でも消えちゃうのは当たり前か、わざとギリギリのとこに書いてるし…と思いながら波を見つめたいた。
波は強弱をつけて打ち寄せるから、ボーっとしていた私はさっきよりも大きく打ち寄せてきた波に反応できず、気づけば足首までびしょびしょに濡れてしまい気分はちょっと下がり気味。
「濡れた?」
後ろで様子を見ていたショーマが近づいてきて、濡れてしまった私を覗き込んだ。
「うん、ボーっとしてたら濡れちゃった」
濡れた足を見せながら、また濡れてしまっては嫌だからと波から少し距離を取った。
「靴も靴下もびしょ濡れだよ」
「寒いでしょ。行くよ」
「へ?ぅわあっ」
何事かと思えば、ショーマは濡れた足が砂浜につかないように私をお姫様抱っこして車を止めてある場所まで運んでくれた。
重かったはずなのに、息1つ乱れていない。
車の後部座席に私を乗せたショーマはちょっと待っててと言ってどこかへ行ってしまった。
「どこ行ったんだろう」
それから待つこと15分ほど、ショーマが紙袋を手に戻ってきた。
もしかして私の靴を買いに行っていたの?まさかと思っていたその考えは見事ビンゴで、私の濡れた足を拭いて買ってきた新しい靴を履かせてくれるその姿はまさに王子そのもの。
買ってきてくれるなんて思わなかった。
笑われるか、そのまま放置か、裸足でいいやなんて思っていたのに。
「うん、ピッタリ」
「こんなこと、しなくてもよかったのに…」
さっきだって男避け?悪い虫避け?の為の高い指輪を買ってもらったばかりなんだから。
だからこんな素敵なもの受け取るなんてことできない。
「こんなこと、って何?」
「…え」
「嬉しいとか、そういう気持ちはないの?」
「それは、」
ないわけじゃない、もちろん嬉しいんだけど…それよりも。
「指輪ももらったし、申し訳ないなって…」
その気持ちの方が大きく上回る。視線を落としていると急に顎を掴まれて、無理矢理と言えるほどショーマとの視線を合わせられた。
端整な顔が視界いっぱいに映るんだけど、どこか不機嫌そうでどうすればいいのか分からない。
気持ちに気づいてしまった最近の私もおかしいけど、ショーマもショーマで最近は様子がおかしい。
「はぁ…ムカつく」
「え?」
今、ショーマにムカつくって言われた?
なんで!?そんなムカつくようなこと今のシーンであった?!
「鈍すぎてムカつく」
鈍すぎてムカつくってなんじゃそりゃ。
私鈍くなんてないはずなんだけど?
むしろ鈍いのはショーマの方だと思う。
キッと睨みつけてやれば、逆に睨まれてこっちが凄んでしまった。ショーマにケンカ売るようなことしちゃダメだなとちょっとだけ学習した。
「気づかないなら、まだいい」
「まだいいって何…」
そんなことを言われてしまったらそれはそれで気になる。
人間の性って言うの?途中まで言われて答えを教えてくれないとウズウズして堪らないんだって。
答えがなんなのか知りたくて知りたくて仕方ないのにショーマは言わないって言ったら絶対に教えてくれない。
なんの事なのかは知りたいけど、諦めるしかないか。
“まだいい”ってことはいつか知れることなんだろうし。
「…ビジュー」
突如何かを呟いた彼に「何?」と聞き返すと「ビジュー」と今度ははっきり言った。
ビジューって…。
「カクテル?」
「そう。忘れてなかったら後でそのカクテル言葉調べて」
OK、分かったよ。
ビジューね、ビジュー…ビジュー…。
忘れないようにと何度も頭の中で呪いをかけるかのようにリピートさせ続けた。
あれからなんだかんだいつもの私たちに戻って、ご飯を食べた後ショーマは私を家まで送り届けてからお店に出勤していった。
家に入る際、「ちゃんと鍵はかけて。知らない奴が来てもドアは開けないない事、ヤバいって感じたら俺に連絡して」とお兄ちゃんみたいなこと言われたから思わず思い出し笑い。
でも、本当私のこと心配してるって顔だったから…なんだか嬉しい。
そう言えば、前ユアに振られた直後ショーマに「俺と付き合わない?」と言われたことあるけど。
「あれ、いいよって言っときゃよかった」
なんて、今更ながらに後悔。
まさか好きになってしまうなんて予想外だし、私を元気づけるための冗談だったとしてもあの時の私は少なからずドキドキしていた。ドキドキ効果で付き合えばよかったよホント…。
あんないい男、他にいない。
「きっと、ショーマと付き合ったら幸せなんだろうなぁ…」
付き合うもそうだけど、結婚したらどれだけ幸せなんだろう。
絶対いい旦那さんになること間違いなしでしょ。
目を瞑って思い描いたのは笑顔で笑うショーマと、一緒に笑いあっている女性。でも女性の顔には靄がかかっていてよくはっきりはしないけど、きっと近い将来ショーマはこうやって素敵な女性と笑いあってるんだろうなって簡単に想像することができた。
その分、胸の痛みも大きいけど。
“ビジュー”
“忘れてなかったら後でそのカクテル言葉調べて”
ふいに、今日の昼間話したことを思いだした。
「そうだった、ビジューの意味調べるんだった」
ケータイを鞄から取り出して【ビジュー カクテル言葉】と検索を掛ける。
すると出てきた言葉は、
「視線を感じて…?」
それはショーマからの視線を感じてほしいと言うことだろうか。多分、嫌きっとその解釈で間違いはないんだろうけど。
それって…これから視線を感じてっていみじゃなさそう。
もしかして“ずっと見てた”。
つい最近とかそういう話じゃなくて、昔から私のこと。
いやいや、でもショーマには彼女だっていたことあるし…って言ってもすぐ別れちゃたりが多かったうえに、高校3年生の時は女の影も見当たらなかったけど。
「待て待て待て、考えすぎは良くないぞ私」
とりあえず落ち着け。そしてもう一度よく考えて。
高校3年の時から彼女いないし、私が彼氏欲しいとか好きな人できた何んて報告したらあまり嬉しそうじゃなかった、ていうか寂しそうだった。
うーん、あれはきっと好きよりも妹が誰かにとられて離れていってしまうのが悲しくて寂しいと言ったような受け取りをしたんだよね。
それからショーマが2年修行のためにアメリカに行くってなった時___
「何か、言われたような気がする…」
『アヤナ……行く。だから………待っててよ、俺は………しか……』
上手く思い出せない、あれはお見送りする前の日ショーマに会いに行ったとき言われた言葉だ。
私、なんて言われたんだっけ。
何か、大切なことを言われたような気がするのに…思い出せない。思い出そうとすると途切れ途切れでノイズが掛かったようになる。
「なんだっけ…」
きっとその言葉は“視線を感じて”に関係しているような気がする。
「だから、思い出さなきゃ」
視線を感じて。
___その言葉は、私の運命を動かす言葉に過ぎなかった。
大切な何かを思いだし、大切な何かを手に入れるまで…あともう少し。
【ビジュー/視線を感じて】
「えー、つれね~。俺とお前の仲じゃん」
「じゃあね」
「はいはい、またな」
カランカランと音をたてて閉まったドア。
最後まで言い合っていたけど、仲がいいんだか悪いいんだか…でも、きっと悪くはないんだろうなと感じた。
あんな風に誰かと砕けた会話してるショーマを見るのは初めてだったから。ショーマにも心を許せる友人っていたんだね。なんだか安心した。
「ショーマ」
「何?」
「機嫌直った?」
「…なんで?」
なんでってさっき不機嫌そうな顔してたじゃん、今は多分大丈夫そうだけど。
一応確認として。
「さっき、なんか不機嫌ぽかったから」
そういうと「あー…」と明後日の方向を見ながら苦笑いを見せた。
どうやら自分でも分かっていたようで、さっきはごめんと眉を八の字にして謝ってきた。
「機嫌はもう直ったから」
「よかった」
機嫌が悪いままだとこの後も楽しくしていけないもんね。
何が原因かは分からないけど、その原因のことは聞かないし、機嫌が直ったならそれでいいやと思った。
「ねぇショーマ、ちょっと海行こうよ」
「いいよ。アヤナの仰せのままに」
そう執事っぽく返したショーマは腰を抱いてきて海へと足を運んだ。
大きくて遥か彼方まで続いているんじゃないかってくらい広い海を目の前に、ショーマに腰を抱かれながら眺めていた。
ショーマから離れて打ち寄せる波にしかづくと、引いては迫ってくる波に濡れないように近づいたり後退したりを繰り返す。
それに満足したら砂浜に私とショーマの名前を数メートル後ろに立つショーマにバレないように書いたりするけど打ち寄せる波によって簡単に消されてしまう。
「あーあ、また消された」
これで4回目。でも消えちゃうのは当たり前か、わざとギリギリのとこに書いてるし…と思いながら波を見つめたいた。
波は強弱をつけて打ち寄せるから、ボーっとしていた私はさっきよりも大きく打ち寄せてきた波に反応できず、気づけば足首までびしょびしょに濡れてしまい気分はちょっと下がり気味。
「濡れた?」
後ろで様子を見ていたショーマが近づいてきて、濡れてしまった私を覗き込んだ。
「うん、ボーっとしてたら濡れちゃった」
濡れた足を見せながら、また濡れてしまっては嫌だからと波から少し距離を取った。
「靴も靴下もびしょ濡れだよ」
「寒いでしょ。行くよ」
「へ?ぅわあっ」
何事かと思えば、ショーマは濡れた足が砂浜につかないように私をお姫様抱っこして車を止めてある場所まで運んでくれた。
重かったはずなのに、息1つ乱れていない。
車の後部座席に私を乗せたショーマはちょっと待っててと言ってどこかへ行ってしまった。
「どこ行ったんだろう」
それから待つこと15分ほど、ショーマが紙袋を手に戻ってきた。
もしかして私の靴を買いに行っていたの?まさかと思っていたその考えは見事ビンゴで、私の濡れた足を拭いて買ってきた新しい靴を履かせてくれるその姿はまさに王子そのもの。
買ってきてくれるなんて思わなかった。
笑われるか、そのまま放置か、裸足でいいやなんて思っていたのに。
「うん、ピッタリ」
「こんなこと、しなくてもよかったのに…」
さっきだって男避け?悪い虫避け?の為の高い指輪を買ってもらったばかりなんだから。
だからこんな素敵なもの受け取るなんてことできない。
「こんなこと、って何?」
「…え」
「嬉しいとか、そういう気持ちはないの?」
「それは、」
ないわけじゃない、もちろん嬉しいんだけど…それよりも。
「指輪ももらったし、申し訳ないなって…」
その気持ちの方が大きく上回る。視線を落としていると急に顎を掴まれて、無理矢理と言えるほどショーマとの視線を合わせられた。
端整な顔が視界いっぱいに映るんだけど、どこか不機嫌そうでどうすればいいのか分からない。
気持ちに気づいてしまった最近の私もおかしいけど、ショーマもショーマで最近は様子がおかしい。
「はぁ…ムカつく」
「え?」
今、ショーマにムカつくって言われた?
なんで!?そんなムカつくようなこと今のシーンであった?!
「鈍すぎてムカつく」
鈍すぎてムカつくってなんじゃそりゃ。
私鈍くなんてないはずなんだけど?
むしろ鈍いのはショーマの方だと思う。
キッと睨みつけてやれば、逆に睨まれてこっちが凄んでしまった。ショーマにケンカ売るようなことしちゃダメだなとちょっとだけ学習した。
「気づかないなら、まだいい」
「まだいいって何…」
そんなことを言われてしまったらそれはそれで気になる。
人間の性って言うの?途中まで言われて答えを教えてくれないとウズウズして堪らないんだって。
答えがなんなのか知りたくて知りたくて仕方ないのにショーマは言わないって言ったら絶対に教えてくれない。
なんの事なのかは知りたいけど、諦めるしかないか。
“まだいい”ってことはいつか知れることなんだろうし。
「…ビジュー」
突如何かを呟いた彼に「何?」と聞き返すと「ビジュー」と今度ははっきり言った。
ビジューって…。
「カクテル?」
「そう。忘れてなかったら後でそのカクテル言葉調べて」
OK、分かったよ。
ビジューね、ビジュー…ビジュー…。
忘れないようにと何度も頭の中で呪いをかけるかのようにリピートさせ続けた。
あれからなんだかんだいつもの私たちに戻って、ご飯を食べた後ショーマは私を家まで送り届けてからお店に出勤していった。
家に入る際、「ちゃんと鍵はかけて。知らない奴が来てもドアは開けないない事、ヤバいって感じたら俺に連絡して」とお兄ちゃんみたいなこと言われたから思わず思い出し笑い。
でも、本当私のこと心配してるって顔だったから…なんだか嬉しい。
そう言えば、前ユアに振られた直後ショーマに「俺と付き合わない?」と言われたことあるけど。
「あれ、いいよって言っときゃよかった」
なんて、今更ながらに後悔。
まさか好きになってしまうなんて予想外だし、私を元気づけるための冗談だったとしてもあの時の私は少なからずドキドキしていた。ドキドキ効果で付き合えばよかったよホント…。
あんないい男、他にいない。
「きっと、ショーマと付き合ったら幸せなんだろうなぁ…」
付き合うもそうだけど、結婚したらどれだけ幸せなんだろう。
絶対いい旦那さんになること間違いなしでしょ。
目を瞑って思い描いたのは笑顔で笑うショーマと、一緒に笑いあっている女性。でも女性の顔には靄がかかっていてよくはっきりはしないけど、きっと近い将来ショーマはこうやって素敵な女性と笑いあってるんだろうなって簡単に想像することができた。
その分、胸の痛みも大きいけど。
“ビジュー”
“忘れてなかったら後でそのカクテル言葉調べて”
ふいに、今日の昼間話したことを思いだした。
「そうだった、ビジューの意味調べるんだった」
ケータイを鞄から取り出して【ビジュー カクテル言葉】と検索を掛ける。
すると出てきた言葉は、
「視線を感じて…?」
それはショーマからの視線を感じてほしいと言うことだろうか。多分、嫌きっとその解釈で間違いはないんだろうけど。
それって…これから視線を感じてっていみじゃなさそう。
もしかして“ずっと見てた”。
つい最近とかそういう話じゃなくて、昔から私のこと。
いやいや、でもショーマには彼女だっていたことあるし…って言ってもすぐ別れちゃたりが多かったうえに、高校3年生の時は女の影も見当たらなかったけど。
「待て待て待て、考えすぎは良くないぞ私」
とりあえず落ち着け。そしてもう一度よく考えて。
高校3年の時から彼女いないし、私が彼氏欲しいとか好きな人できた何んて報告したらあまり嬉しそうじゃなかった、ていうか寂しそうだった。
うーん、あれはきっと好きよりも妹が誰かにとられて離れていってしまうのが悲しくて寂しいと言ったような受け取りをしたんだよね。
それからショーマが2年修行のためにアメリカに行くってなった時___
「何か、言われたような気がする…」
『アヤナ……行く。だから………待っててよ、俺は………しか……』
上手く思い出せない、あれはお見送りする前の日ショーマに会いに行ったとき言われた言葉だ。
私、なんて言われたんだっけ。
何か、大切なことを言われたような気がするのに…思い出せない。思い出そうとすると途切れ途切れでノイズが掛かったようになる。
「なんだっけ…」
きっとその言葉は“視線を感じて”に関係しているような気がする。
「だから、思い出さなきゃ」
視線を感じて。
___その言葉は、私の運命を動かす言葉に過ぎなかった。
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【ビジュー/視線を感じて】
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