雨音

不知火

帰り道2

結果から行くと、僕はしもべとしての役割は果たせなかった。

「あ、忘れ物しちゃった。ちょっと待っててくれない?」
「了解。」
バタバタと教室に戻っていく君をただ見ていた。玄関で待っていると、足音が聞こえてくる。早いな、と思いながら振り向くと、先日の彼が立っていた。
「また相合傘?」いくらか邪険な雰囲気をはらんでいる気がする。
「うーん、また傘忘れちゃったみたい。」
「へえ、意外と仲良いんだね。」その「意外」という言葉を強調したのは、そういうことだろう。
「今日は部活の練習?」ないことは知っているのだが、確認したことを知られると恥ずかしい。
「いや、部活自体はないから部活の連中とだべってた。そしたらまた君らが見えたから。」
コの字型校舎のよくないところだ。反対側の高い階から玄関が丸見えになっている。
「今日は俺も傘持ってるし、今から帰るところなんだよね。」その次の言葉予測できそうだ。
「今日は俺にあの子と一緒に帰らせてよ。付き合ってないし良いだろ?」
やはり。そんなに鋭く睨まないでほしいしそう強く言われると、気の弱い僕は抗弁できない。
「あ、オッケー。じゃあ、か、帰るね。」
最後にびびって噛んでしまった。情けないなあ。
「ありがとう、理解が早くて助かるよ。」
それすごく悪役っぽいセリフだな。

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