雨音

不知火

帰り道1

また、雨だ。
委員会の集まりの日はこれで三週続けて雨が降った。いくら梅雨の六月とはいえ、すごい確率だ。この日は特に問題なく進み、担当の先生も
「先週は遅くなってしまったので今週は早めに終わりましょう。」と言い、さっさと終わってしまった。
「おい、しもべ。今日もこの私の傘持ちという光栄な任務を申しつける。」振り向くと君がいた。
「付け髭なんかつけて、王様になったの?」
「王様に対して無礼であるぞ?」
「そんな付け髭で王様になれるなんて、王様の価値が下がっちゃうね。」
「冗談が通じないなあ。」
「それ、どうしたの?」
「へへ、麻里が買ってくれたんだあ。誕生日だから今日一日くらい王様になりなよってさ。」良い友達持ったよなあと嬉しそうに笑いながら付け髭を撫でている。
「君はいつも王様みたいな感じだけどね。」
「ははっ。確かに。」付け髭が取れるんじゃないかというくらい大きな笑顔が現れる。
「その王様の命だ。今日も傘がないから頼むよ。」
「なんで傘を持ってこないの?」
「王様だからさ。」じっと君を睨む。付け髭を取って鞄にしまいながら
「とまあ冗談はこのくらいにして、だって今日予報ではギリギリもつだろうって。」
確かにこの委員会の日は、予報上ではなんとか持つと言われていたのに実際は土砂降りだったということが続いている。僕の場合は常に折り畳み傘を鞄の中に入れておくことにしているため、急に降ってきても安心というわけだ。
「他の友達に頼みなよ。今日は僕だけじゃなくて他にもいるでしょ?」
「まあまあ、いいじゃない。先週も一緒に帰った仲でしょ。それに今日傘持ってる人少ないと思うよ?」
僕としては先日の彼の存在がひっかかるため、今日のところは一緒に帰りたくない。
「今日ってサッカー部休みかなあ。」
「ん、なんでサッカー?ヒョロヒョロの君はサッカーというより作家じゃない?」
なんか上手いこと言われた。
「そういうことじゃなくって。」
「職員室前の黒板に書かれてるよ。」
見に行くと、顧問の先生が急用で練習はないらしい。
「じゃあ問題ないな?」また、僕が傘を持つ帰り道になりそうだ。

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