雨音

不知火

彼と僕2

旧校舎は五年前まで使われていた、築八十年を超える四階建ての校舎だそうだ。それが五年前にできた新しい校舎にとって変わられた。高校にしては歴史があるこの高校の生き証人として残されているとかいないとか。大体こういったものがあると、心霊の話題が伴う。取り壊されないのはその霊を恐れているからだとかくだらない噂もある。
「単刀直入に聞くんだけど、あの子と付き合ってるの?」旧校舎に着くなり、唐突に聞かれた。
あの子?誰のことだろうか。
「昨日相合傘してるの見てさ。」
ああ、なるほど。人気者の彼も君に夢中らしい。
「いや、あの子が傘持ってなくて途中まで傘をシェアしただけだよ。委員会が一緒で帰るタイミングが一緒だったから。」
「なんだあ。部活で室内練習してるときに二人で学校出るの見えてさ、びっくりしちゃった。」
「雨が降ってなかったら一緒に帰ってすらないよ。」
「あー、安心した。聞きたかったのはそれだけ。ごめんね時間とって。」
「いや、全然。」
僕の言葉を聞き終わらず彼はクラスの方へ歩き出した。その場に取り残された僕はなんとなく旧校舎の中を見て回ることにした。

外はこんなにも快晴なのに、一歩旧校舎に入ると太陽が存在していないかのような雰囲気になる。こういうジメジメしたところは好きじゃない。性格はジメジメしてるのに皮肉だなとか考えていると、目の前をふっと何かが横切った気がした。あたりを見回す。何も見えない。もしや心霊か?と考えがよぎったが、いやいや、昼間には出ないだろうと考え直す。
それからしばらく探したが、結局その正体がわからないまま予鈴が鳴り、僕のクラスに急いで戻る羽目になった。

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