雨音

不知火

雨と君2

「僕は雨の音は嫌いだな。」校門を出て歩いていると僕はさっきの言葉を思い出した。
「お、宣戦布告だね。いい度胸してるじゃん。」傘の中でボクシングの構えをするのはやめて欲しい。
「雨の音って聞くだけで気分が憂鬱になるし、外に出るのも億劫だよ。」
「さすがは夏に生まれた夏男だね。梅雨に生まれた私とは大違いだ。」と君は笑いながら言う。
「それ、関係あるかなあ。」
「あるよ、きっと。」
性格だけ見るとその説は成立しない。夏に生まれた僕は気が弱く、人見知りもあるためクラスの中でも地味なグループだ。仲が良い限られた人としか喋らない。対して君は明るくていつもいろいろな人が寄ってくる。磁石みたいだなと思う。同じ委員会に所属していなければ決して交わらないタイプだろう。僕のクラスの男子の中でも評判が良く、そのうち何人かは告白して玉砕したと言う話も聞いたことがある。僕なんかが一緒にいていいのだろうか、とも思わなくもない。

そんなことを考えていると、
「また余計なこと考えてるでしょ。」
「君はもっと自分に自信を持ったほうが良いよ?なんてったって君のクラスで唯一私と一緒の委員なんだから。」図書委員会は各クラスから一名ずつ選ばれる。他の委員会は複数名選ばれるから、大体どのクラスも地味な人しかやりたがらない。だから最初の会議で君を見つけた時はとても驚いた。
「その発言は自分に自信持ちすぎだよ。」
「そうかなあ。私割とモテるほうだと思うけど。」
「自分で言うかなあ、そういうこと。」
「自分を客観的に捉えた結果だよ。」悪戯っぽく笑う。
こういう憎めなさが人を寄せ付ける要因なんだなと感じたのは言わないでおこう。

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