忘却不能な恋煩い

白山小梅

永遠に続く想い

 準備を終えた美琴は、控え室で静かに待っていた。

 今日まで本当にいろいろあったな……思い出を振り返りながら、美琴はクスリと笑う。

 三年前に尋人と出会い、私は初めて心から人を好きになった。

 三年を経て尋人と再会して、私は愛し愛されることの喜びを知ったの。

 嬉しいこと、辛いこと、楽しいこと、悲しいこと……。彼と一緒に乗り越えた日々は、きっとこれからも私たちの背中を押してくれるはず。

 その時ドアをノックする音がして、グレーのタキシード姿の尋人が入ってきた。尋人はウエディングドレス姿の美琴を見ると、嬉しそうに目を細めた。

「やっぱりプリンセスラインで正解だな。すごくかわいいよ」
「……ありがとう。もう皆さん集まってる?」
「うん、ほとんどね。大崎の長男が逃げ回ってるけど。さすが大崎の子どもだな。そっくりだよ」

 それを聞いて美琴は笑いが止まらなくなる。  

 尋人は鏡の前に座る美琴に近寄り、そっと肩に手を載せる。

「少しリラックスした?」
「……うん」

 美琴が笑顔で頷くと、尋人はしゃがみ込んで彼女の手を握る。

「俺たちらしい、楽しい式にしような。これから二人をお願いしますっていうのがまず第一。第二ねゲストの皆様にいっぱい楽しんでもらえたら何よりじゃない?」
「うん、そうだね」

 この人といると本当に安心出来る。

「そろそろお時間です。準備をお願いします」

 ノックの音とともに声をかけられ、美琴は尋人に手を引かれてゆっくりと立ち上がる。

 その時に尋人の胸ポケットに入ったハンカチが、キラッと輝くのを見つける。不思議に思った美琴は覗き込み、そして嬉しいような恥ずかしいような表情になる。

「これって……」
「そう。あの日の美琴のピアス。せっかくだから付けてみようかと思って」

 三年前に交換した美琴のピアスが、今尋人の胸元で光を放っている。

「この日が俺たちの始まり。まだ先は長いけどね」

 こんなに幸せでいいのかな……。

「美琴、これからもよろしくね」
「こちらこそ……」
「愛してるよ」
「私も」

 幸せは二人で作っていくもの。どちらかが欠けてもダメなの。いつまでもあなたと一緒に同じ速度で歩いていきたい。



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