レインカルナティオ(全4話)

Misaaaa

Ep.4 終わりと始まり



「はーいお疲れさん。」


「…おーい田中くーん」


「消しゴムー田中くーんー…

起きろやって!!!!!」




っっ、何。なんだ、眩しい…




誰だろう、声が聞こえているような気がする…


何か言っているが、よく聞こえない。
視界もすこしぼやけている。


「…あれ」




体が動く。
指が5本、足が2本、腕もついている…


「どうだった?」

「…ど、え…神さん?」


確実に昔見た光景だ。デジャブなのか…?
いや、違う、戻ってきたっぽいな。



「神様ね。カミさんみたいになっちゃうからね。」

「あ…神様さん。太りました?」

「死にたいか!」

「すみません。」


やっぱり、元に戻ったっぽい。
あと言葉も話せるようになったようだ。



「田中くん、もう課題クリアしたから消しゴムは終了ね。がんばったねシールいる?」

「課題?僕ですか?」


神様は書類全てに、勢いよく印鑑を押した。
茶色の封筒に全ての書類を丁寧に入れると、ゆっくりとこちらを見る。



「うん。自分の中の恨みとか寂しさと決着つけるっていうね。どーよ、まあ色々気付けた?」

「決着…全然わからないっす」

「そうか。」


神様が笑った。
決着がついたかどうかなど、わかるわけがなかった。


____




昔、自殺したことを、最初から後悔したりはしてない。
あれも自分の素直な選択だった。
泣きながら偽って生きるより、きっと正しかった。

今になってわかる。
昔、僕があんなに寂しかったのは、僕が自分のことを誰よりも恨んでいたからだ。

寂しかったのに、分かってたのに、気付こうとしなかった。



全部周りのせいにして、カッコつけて、本当は誰かを愛してみたかっただけなのに、たくさん遠回りをしていた。



常に誰かに期待してた。
ワガママになりすぎた。




26になって、社会に溶け込む気力など皆無になっていた。

ダサいけど、どう頑張ってもダサい人生で、今だってとっくに諦めている。




でも不思議と、もう別の誰かになろうだなんて思わない。
別に今の自分が好きなわけじゃないけど。なぜかそう思う。




____




「でさ田中くん、次どうする?もう終わりする事もできるけど。」



神様パソコンの画面を閉じ、こちらを見る。



「終わる?」

「リセットして0に戻すって話ね。無に還るんだよ。魂だけの状態になる。タマシーランド行けるよ。」



「ディズ…ni…?」




「タマシーランドね。天界タマシーランドと天界タマシーSea(シー)がある。」

「!?」

「Seaは海をテーマにしてる。年パスもあるよ。」





神様は胸ポケットから2枚の薄いパンフレットを出し、おもむろに机の上に広げる。

フロアガイドに指指し、
アトラクションの説明だのお土産の説明だの、さほどどうでもいい話を始めた。






「あの。僕、次はATMになりたいです。」



「…何?誰かに貢ぎたいってこと?」



「いや、コンビニとかのATMがいいです。」

「は?」



「札を出したいです。自分の体から札を出したい。」


「は………」



「ダメですか。」

「いやいいよ。
ATM、魂の求人多いから。むしろ助かるけど自分からやりたいっていう人いないよ…まぁ、いきな。」


神様が机の下から、新しい書類を取り出す。






田中太郎、又の姿、消しゴム。
来世、コンビニATM。その次はもう一回人間とかやってみるか。

27歳。
これから産まれに行ってきます。




「…はい、お願いします。」







終わり

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