レインカルナティオ(全4話)
Ep2.転職。
痛い…
体の痺れで目が覚めた。
痛い、あぁ…
体が信じられないぐらい痺れている。
手の感覚、足の感覚がなにもない。
酷い金縛りにあっているようだ…
ただただ痺れる。
体をコントロールできない。
…あれ、ここ、家?部屋だ。
でも、僕んちじゃない。誰もいない…
床には散らかった教材、カバン。
サッカーボール、服も散乱している。
…汚い…僕の部屋よりも汚い…
えっ、僕はどうなった。
なにも覚えてない。
「…カズーー!!!…カズ!!」
!?
女が大声で叫ぶ声が聴こえる。
階段を上がる足音が徐々に大きくなり、
部屋のドアが開く。
ガチャ____
パッと見、実年齢がいまいちわからないセミロングの女。
一緒に、いかにも学生っぽい男子が険悪な空気を纏って部屋に入ってきた。
てか僕?…カズ?誰のことだ。
「あっ、え、ごめんなさいこんにちは田中と申します…
すみません僕もちょっと状況が全然わかんなくて強盗とかじゃ」
「なんでまた外で喧嘩とかすんの!?またママが怒られたじゃん!」
女の眉間に[八]の字が浮かぶ。
「…」
「…カズ!!!なんか言いな!」
僕に言ってる…?どうしよう。
僕は生まれて一度も喧嘩はしたことが無い。これでも平和主義者で、争いは好まない。
あとカズではない。
まぁでもなんか返事した方がいい…のか…
「えっ、あ、僕ですか?僕田中なんですけど」
「うるっせェ!!!!!」
「え。すみません。」
なぜか男子に怒られた。
どういうことだ。僕は悪くない。
「俺のことなんもわかんないでしょママは!」
「わかんないに決まってんでしょ!
こんな…こんな馬鹿なの産まれてママ最悪だよ。」
「…!!!!!!!!は?」
…親子喧嘩か。
てかこいつ、高校生ぐらいだろ、まだママとか言ってるのか…
カズは涙を我慢しているのか、かたくなに顔をあげない。
下を向いていても、悲しそうな表情を髪で隠しているのがバレバレだった。
「まぁ、あの、僕他人なんで何も言えないですけど、カズくんもママさんもとりあえず落ち着きましょ。ね。」
「マジでクッソ腹立つこの息子。」
「落ち着きましょって。」
…気まずい…最悪に気まずい。
「カズ、勉強は。
大学合格しなかったら許さないからね。家から出てきな。」
「…っせぇ…」
カズ少年が散らかった教材を雑に拾い始めた。
女はなにか言葉をひとつ飲み込むと、
無理矢理に怒りを抑えたように部屋から出ていってしまった。
時期的にピリピリする時期なのかもしれないな。
俺は勉強してないけど、何となく周り見てたからわかるよ。
ま…頑張れカズくんンッゥゥッッッ…痛ェェェェェェェ!!!!
ちょ、ちょっとまって痛い痛い痛い痛い痛い!なんだよ!なになにっ痛ェェェェェ!!!!!あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"fg.yd#weshh.trweyhhxaqqqu!loovv*wqs
突然、体が激しくヒリヒリし始めた。
大根おろしで体をおろされ、
皮膚が粉々にスライスされていくような、絶望的な痛みで脳が覚醒する。
体が痛い。張り裂けそう。
痛みで涙とヨダレが止まらない。
次第に体の熱が39度ぐらいに急上昇するのも感じた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!…何が始まった?
猛烈に痛い。わかんない、いよいよホントに死ぬんだ。
これが死ぬってことか。
意識が飛んでいく。
痛いも、辛いも、記憶も、全てが混ざって無になっていく…
____
…ッッッ痛…くない、あれ…温かい…あれ、急に温かい…
その時、僕は一気に悟った。
僕は、この前自殺して、今…次の人生に入った。
んで、消しゴムを選択してしまった。
来世を適当に選びすぎた。
俺は消しゴムになっている。
紙との摩擦で体が火照っているのか。
全部無視されてると思ったら、
僕の声はそもそも届いてないのか。
排尿とか呼吸器科はどうなってんだ…
なんで今生きてる…というか、
生きてるんだよ…な…?
痛みも、存在も伝わらないってわけか。
もう戻りたい。
毎日体を粉々にされるのは精神も肉体も持たない…
…あ、駄目だ。もう、死んでたんだ、僕。
死んでからのこの始末。
人間だった時の方がもうちょっと便利に過ごせた。よっぽどマシだった。
元 田中太郎…現、消しゴム。恥ずかしい。
また、またミスった。
しかも今回は大幅に取り返しがつかないミス。
…死ねない。
続く
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コメント
k_doro
ほうほう。ふむふむ。