《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
34-1.最終戦争 後半戦
――実力伯仲。
ソマ帝国は最初、数で勝るソマ帝国軍を圧倒していたが、天使召喚によって形勢がわからなくなった。
「放てェ」
と、ディーネの指揮のもとで、迫りくる天使の軍勢に蒸気銃を撃ちつける。
さすがは科学の結晶とでも言うべきか、蒸気銃の威力は天使すら貫くようだった。
しかし、天使の放つ白い光の球もこちらに届き、歩廊に配備されていた銃兵は倒されることになった。
ファルスタッフ砦の各地には、オレから分与された炎が灯って、紅色に染まっていた。一方で天使たちは白い光を放っている。
茫漠とした暗闇のなかで、紅色の光と白い光がせめぎ合うかのようだった。
変化はトツゼンだった。
帝国軍が攻撃の手をゆるめて、陣を後ろに下げたのだった。撤退するのかとも思ったのだが、そうではなく、陣全体をすこし後ろに下げただけのようだった。
大軍がいっせいに後ろへ下がると、その軍靴の音が地獄の底から聞こえる太鼓の音のように、ドスンドスンと響きわたることになった。
「これは、ひょっとすると、やったかもしれませんよ」
と、ディーネは言った。
「やったとは?」
オレも戦場が気にかかるし、戦場を眺望することが出来る歩廊に、ディーネといっしょにいた。
報告ッ、と歩廊に上ってくる者がいた。
タルルである。
この雨だというのに髪を逆立て、頬は上気していた。その風体から見て、何かただならぬ情報を持ち帰ったのだと察することが出来た。
「どうしましたか。タルルくん?」
と、ディーネが尋ねた。
「レイアとゲイルの率いていた間諜部隊が、ブラックフライアーズ村に隠されていた、敵の食糧庫を発見! 奇襲をかけて敵の食糧庫を焼き払うことに成功し、さらに敵の小荷駄隊を潰滅させたとのことです!」
「よっしゃァ」
と、ディーネは、柄にもなくコブシを突きあげていた。
すぐそばに控えていた伝令官を走らせて、その旨を各部隊へと伝達することによって、砦内は「うおおおッ」という大音声があがることになった。
「すると、敵が部隊を下げたのは、食糧庫をやられたからか」
「そうでしょうね」
「レイアとゲイルのふたりは無事だろうか?」
オレのその疑問には、タルルが応えてくれた。
ふたりとも重傷を負っているが、無事に帰還したとのことだった。今は後方の野戦病院にて、アルテミスの治療を受けているらしかった。
様子を見に行きたかったが、ゲイルはともかくレイアは口もきけぬほどの重傷ということらしかった。
あとはアルテミスに任せるしかない。
「さすがは元《紅蓮党》の筆頭に、間諜のエキスパートです。やってくれると信じていましたよ」
「ああ」
オレも腹の底から込み上げてくる興奮があった。
「天使の出現によって、一時はどうなることかと思いましたがね。おかげで流れが変わりました」
ご覧ください――と、ディーネが前方を指さした。
その指先――。
紅蓮の旗をいさましくなびかせて戻ってくる部隊があった。
目を凝らして、それを見つめた。
戻ってきたのはエイブラハングの部隊だった。
ソマ帝国軍が部隊を下げたことによって、敵陣につかまっていたカザハナたち怪物城のエルフを、無事に連れ帰ったようだった。
さすがはエイブラハングだ。
「そうか。やってくれたな」
レイアはこの砦を出る前に言った。「この私が魔神さまのために、大金星を勝ちとって来てやるよ」と。
有言実行。
まさに決死の覚悟で敵に突っ込み、戦場を動かしたのである。レイアがどんな思いで、この作戦を成功させたかと思うと、感涙させられそうになった。
レイアの底意には、オレへの信仰と、《紅蓮教》への煮えるような思いがあったに違いないのだ。
レイアのその気持ちに応えるには、この戦争にゼッタイに勝たなくてはならない。オレのなかには、我ながらめずらしく闘志を沸き起こっていた。
「これだけの大軍ですからね。食糧庫が燃やされたのは大打撃でしょう。あとは耐えぬくだけで、この戦いは勝ちです」
「天使の軍勢が出てきたときは、どうなることかと思ったが、峠は越えたと言ったところか」
「ええ。敵が決死の覚悟で突っ込んで来ようとも、蒸気銃の弾幕はそう簡単に突破されません」 と、ディーネは自信に満ちた表情でそう言った。
「そうか」
ほっ、とオレが安堵した刹那であった。
耳をつんざくような轟音が鳴りひびいた。戦場に稲光が走ったのである。
オレはふさぐ耳もないので無事だったが、隣にいたディーネは実際に耳に手を翳していた。
落雷とともに、白い巨神が顕現することになった。その顔はヘルムで隠されて、巨大な8枚の翼を広げている。右手には剣を、左手には巨大な槍を手にしていた。
かつてエクスカエルやグングニエルといった3大神たちが使っていた武器だ。その全身には白い布きれが巻かれており、下半身は純白のスカートのようなもので覆われていた。
しかしなんという大きさか。
教会で見た石像や、今までの3大神とは格が違う。山のような大きさであった。かつて都市シェークスを襲撃した災厄級のクロイよりも大きい。
「やはり現われましたね」
「あれが――ティリリウスか」
レイアの兵站潰しに湧き上がっていたセパタ王国軍も、その巨神の出現によって、たちまち恐慌におちいることとなった。
「私たち人間にできるのは、ここまでです。あとは魔神さま。あなたのチカラにすがるしかありません」
「わかった。ここまで繋げてくれたんだ。あとは任せてもらう」
オレも気炎万丈のチカラで顕現しようとしたときであった。
「魔神さまッ」
と、オレを呼びとめる声がかかった。
プロメテだ。
ソマ帝国は最初、数で勝るソマ帝国軍を圧倒していたが、天使召喚によって形勢がわからなくなった。
「放てェ」
と、ディーネの指揮のもとで、迫りくる天使の軍勢に蒸気銃を撃ちつける。
さすがは科学の結晶とでも言うべきか、蒸気銃の威力は天使すら貫くようだった。
しかし、天使の放つ白い光の球もこちらに届き、歩廊に配備されていた銃兵は倒されることになった。
ファルスタッフ砦の各地には、オレから分与された炎が灯って、紅色に染まっていた。一方で天使たちは白い光を放っている。
茫漠とした暗闇のなかで、紅色の光と白い光がせめぎ合うかのようだった。
変化はトツゼンだった。
帝国軍が攻撃の手をゆるめて、陣を後ろに下げたのだった。撤退するのかとも思ったのだが、そうではなく、陣全体をすこし後ろに下げただけのようだった。
大軍がいっせいに後ろへ下がると、その軍靴の音が地獄の底から聞こえる太鼓の音のように、ドスンドスンと響きわたることになった。
「これは、ひょっとすると、やったかもしれませんよ」
と、ディーネは言った。
「やったとは?」
オレも戦場が気にかかるし、戦場を眺望することが出来る歩廊に、ディーネといっしょにいた。
報告ッ、と歩廊に上ってくる者がいた。
タルルである。
この雨だというのに髪を逆立て、頬は上気していた。その風体から見て、何かただならぬ情報を持ち帰ったのだと察することが出来た。
「どうしましたか。タルルくん?」
と、ディーネが尋ねた。
「レイアとゲイルの率いていた間諜部隊が、ブラックフライアーズ村に隠されていた、敵の食糧庫を発見! 奇襲をかけて敵の食糧庫を焼き払うことに成功し、さらに敵の小荷駄隊を潰滅させたとのことです!」
「よっしゃァ」
と、ディーネは、柄にもなくコブシを突きあげていた。
すぐそばに控えていた伝令官を走らせて、その旨を各部隊へと伝達することによって、砦内は「うおおおッ」という大音声があがることになった。
「すると、敵が部隊を下げたのは、食糧庫をやられたからか」
「そうでしょうね」
「レイアとゲイルのふたりは無事だろうか?」
オレのその疑問には、タルルが応えてくれた。
ふたりとも重傷を負っているが、無事に帰還したとのことだった。今は後方の野戦病院にて、アルテミスの治療を受けているらしかった。
様子を見に行きたかったが、ゲイルはともかくレイアは口もきけぬほどの重傷ということらしかった。
あとはアルテミスに任せるしかない。
「さすがは元《紅蓮党》の筆頭に、間諜のエキスパートです。やってくれると信じていましたよ」
「ああ」
オレも腹の底から込み上げてくる興奮があった。
「天使の出現によって、一時はどうなることかと思いましたがね。おかげで流れが変わりました」
ご覧ください――と、ディーネが前方を指さした。
その指先――。
紅蓮の旗をいさましくなびかせて戻ってくる部隊があった。
目を凝らして、それを見つめた。
戻ってきたのはエイブラハングの部隊だった。
ソマ帝国軍が部隊を下げたことによって、敵陣につかまっていたカザハナたち怪物城のエルフを、無事に連れ帰ったようだった。
さすがはエイブラハングだ。
「そうか。やってくれたな」
レイアはこの砦を出る前に言った。「この私が魔神さまのために、大金星を勝ちとって来てやるよ」と。
有言実行。
まさに決死の覚悟で敵に突っ込み、戦場を動かしたのである。レイアがどんな思いで、この作戦を成功させたかと思うと、感涙させられそうになった。
レイアの底意には、オレへの信仰と、《紅蓮教》への煮えるような思いがあったに違いないのだ。
レイアのその気持ちに応えるには、この戦争にゼッタイに勝たなくてはならない。オレのなかには、我ながらめずらしく闘志を沸き起こっていた。
「これだけの大軍ですからね。食糧庫が燃やされたのは大打撃でしょう。あとは耐えぬくだけで、この戦いは勝ちです」
「天使の軍勢が出てきたときは、どうなることかと思ったが、峠は越えたと言ったところか」
「ええ。敵が決死の覚悟で突っ込んで来ようとも、蒸気銃の弾幕はそう簡単に突破されません」 と、ディーネは自信に満ちた表情でそう言った。
「そうか」
ほっ、とオレが安堵した刹那であった。
耳をつんざくような轟音が鳴りひびいた。戦場に稲光が走ったのである。
オレはふさぐ耳もないので無事だったが、隣にいたディーネは実際に耳に手を翳していた。
落雷とともに、白い巨神が顕現することになった。その顔はヘルムで隠されて、巨大な8枚の翼を広げている。右手には剣を、左手には巨大な槍を手にしていた。
かつてエクスカエルやグングニエルといった3大神たちが使っていた武器だ。その全身には白い布きれが巻かれており、下半身は純白のスカートのようなもので覆われていた。
しかしなんという大きさか。
教会で見た石像や、今までの3大神とは格が違う。山のような大きさであった。かつて都市シェークスを襲撃した災厄級のクロイよりも大きい。
「やはり現われましたね」
「あれが――ティリリウスか」
レイアの兵站潰しに湧き上がっていたセパタ王国軍も、その巨神の出現によって、たちまち恐慌におちいることとなった。
「私たち人間にできるのは、ここまでです。あとは魔神さま。あなたのチカラにすがるしかありません」
「わかった。ここまで繋げてくれたんだ。あとは任せてもらう」
オレも気炎万丈のチカラで顕現しようとしたときであった。
「魔神さまッ」
と、オレを呼びとめる声がかかった。
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