《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
30-5.布教活動
「あ、あの……」
「す、すみません」
「すこしお話を……」
と、大通りにて、プロメテは道行く人たちに声をかけていたのだが、あまり相手にされていなかった。
白銀の髪をしたプロメテのことを物珍しそうに見たり、足を止めてくれる人もいることには、いるようだ。が、プロメテが上手く言葉を続けることができずに、結局、素通りされてしまうようだった。
その様子を、オレは路地に隠れて見守っていた。
「ヤッパリあまく上手くいってなさそうだ。手助けしてやりたいところだが……」
「さすがにルール違反ですよ。魔神さまが味方をすれば、そっちのほうが有利になるに決まっていますからね」
「だよな」
それはアイリだって納得しないだろう。
「私だって、プロメテちゃんに勝たせてあげたいですがね」
と、ディーネは肩をすくめた。
「アイルはソマ帝国の間諜かもしれないんだ。このゲームに負けても、本気でアイリを大司教にするつもりじゃないだろ?」
「それはそうですが。ただ……」
と、ディーネは眉間にシワを寄せた。
「ただ?」
と、オレはうながした。
「万が一、アイリが間諜ではなく、本気で、《紅蓮教》の大司教をつとめたいと思っているのならば、大司教に任命しないわけにはいきません」
「これは、ただのゲームだろ」
プロメテを下ろして、アイリを大司教に据えるだなんて、オレは納得できない。
「それはそうですが、私が預かった勝負ですからね。まさか結果しだいで反故にするような卑怯なマネは出来ません」
と、ディーネは頭を振った。
「マジかよ」
「プロメテちゃんなら、多くの信徒を集めることが出来ると思ったんですがね。彼女は誰よりも魔神さまへの想いが強い。それはもう依存というほどに」
「それはオレが良くわかってる。プロメテの想いは半端なもんじゃない」
プロメテの想いこそが、オレのチカラの源になっているのだ。
もちろんディーネや、レイアや、エイブラハングだって、オレへの想いは強い。が、プロメテの想いは並外れたものがある。
プロメテの想いはいつだって、オレに魔神の名にふさわしい業火をあたえてくれた。
「実際、プロメテちゃんは、これまで多くの信徒を集めています」
「それはなんて言うか、歩んできた道の結果だからな。こうやって、説教して信徒を集めるという行為は、プロメテには向いてない気もする」
プロメテには、民衆から迫害されていた過去がある。
見知らぬ人間に対する不信感や警戒心といった感情が、人一倍に強くてもおかしくはない。
「私としたことが、迂闊でしたかね。この自治都市ハムレットで信徒を集めることが出来るうえに、アイリのボロを見破ることが出来て、一石二鳥だと思ったのですがね」
と、ディーネは心配そうにプロメテのことを見つめていた。
「アイリの調子はどうなんだろうか?」
もし《光神教》の間諜ならば、積極的に《紅蓮教》の信徒を集めたりはしないはずだし、なんなら今回のゲームだって乗り気ではないはずだ。
「大事にならないように、私の手の者に、コッソリ見張らせていますがね。向こうはどうやら順調みたいですよ」
「それは意外だな」
「ええ。意外ですよ。ですからもしかすると本気で、魔神さまに傾倒しているのかもしれませんね」
「言っておくが、オレはアイリとのあいだに子供を生んだ覚えはないからな。今まで会ったこともないんだし」
と、念を押しておいた。
オレとのあいだに子供がいるだなんて虚言で、プロメテのスタンスを取って代わろうとしているようにしか思えない。
オレのことを信奉しているというのならば、温かく迎え入れてやるべきなのだろう。だが、アイリからは、プロメテを拒絶するような気配がある。
その気配が、どうしても好きになれないのだ。
神のくせに、選り好みしてどうするんだと自戒する感情もある。だが、プロメテに危害を加えようとする相手を、受け入れることは、オレには出来そうになかった。
オレはふたたびプロメテに目をやった。
プロメテの周りには、自治都市ハムレットの連中が集まりはじめていた。だが、プロメテの説教に耳を傾けているわけではないらしかった。
『あれって?』
『魔術師らしいわ』
『魔神を召喚した魔術師だろ?』
『なんかふたりの魔術師が今、この都市に《紅蓮教》の教えを広めに来てるらしいわよ』
と、魔術師という存在の物珍しさから、集まっているらしかった。
魔術師だからと言って、迫害されるようなことはなさそうだった。
しかしその好奇の視線に耐えかねたのか、プロメテは裏路地のほうへと逃げこんでしまった。
「あ……」
いくら都市のなかとはいえ、あまり無闇に走り回ると危険かもしれない。そう思って追いかけようとしたが、ディーネが止めてきた。
「大丈夫ですよ。身の安全は保障します。私の手の者たちに、遠くから警護させていますから」
「しかしだな……」
プロメテが苦しんでいる姿はあまり見たくない。
ルール違反だというのはわかるのだが、直接オレが干渉できないというのは、歯がゆいものがあった。
「迷える子羊たちよ。集いなさいな。私は《紅蓮教》の大司教よ」
という声が響いた。
声のするほうを見ると、アイリが布教活動をしているところだった。
好奇な目をプロメテに向けていた民衆も、いっせいにアイリのほうに集まっていた。
「これからは《紅蓮教》の魔神さまの時代よ。救われたい者は、魔神さまを信じなさい。魔神さまは救済の手を施してくれるわ」
と、アイリは意気揚々と演説をふるって、ストリートの中心を闊歩しているのだった。
すでに多くの信徒を集めているようで、アイリの後ろには民衆が付いて歩いていた。
アイリもまた白銀の髪に白銀の目をしていたゆえに、耳目をあつめるのだった。そしてその効果を、アイリは逆手に取って、多くの人に伝道をはたらきかけていた。
「アイリのほうは絶好調みたいだな。しかもスッカリ大司教気取りらしい」
「演技――には見えないですがね。いったい何が目的なのやら」
と、ディーネがアイリのことを目を細めて凝視していた。
「まさかアイリは本気で、大司教になるつもりか?」
「私にはそう見えますがね」
「このままだとマズイな」
と、オレは裏路地へと姿を消したプロメテの身を案じた。
「す、すみません」
「すこしお話を……」
と、大通りにて、プロメテは道行く人たちに声をかけていたのだが、あまり相手にされていなかった。
白銀の髪をしたプロメテのことを物珍しそうに見たり、足を止めてくれる人もいることには、いるようだ。が、プロメテが上手く言葉を続けることができずに、結局、素通りされてしまうようだった。
その様子を、オレは路地に隠れて見守っていた。
「ヤッパリあまく上手くいってなさそうだ。手助けしてやりたいところだが……」
「さすがにルール違反ですよ。魔神さまが味方をすれば、そっちのほうが有利になるに決まっていますからね」
「だよな」
それはアイリだって納得しないだろう。
「私だって、プロメテちゃんに勝たせてあげたいですがね」
と、ディーネは肩をすくめた。
「アイルはソマ帝国の間諜かもしれないんだ。このゲームに負けても、本気でアイリを大司教にするつもりじゃないだろ?」
「それはそうですが。ただ……」
と、ディーネは眉間にシワを寄せた。
「ただ?」
と、オレはうながした。
「万が一、アイリが間諜ではなく、本気で、《紅蓮教》の大司教をつとめたいと思っているのならば、大司教に任命しないわけにはいきません」
「これは、ただのゲームだろ」
プロメテを下ろして、アイリを大司教に据えるだなんて、オレは納得できない。
「それはそうですが、私が預かった勝負ですからね。まさか結果しだいで反故にするような卑怯なマネは出来ません」
と、ディーネは頭を振った。
「マジかよ」
「プロメテちゃんなら、多くの信徒を集めることが出来ると思ったんですがね。彼女は誰よりも魔神さまへの想いが強い。それはもう依存というほどに」
「それはオレが良くわかってる。プロメテの想いは半端なもんじゃない」
プロメテの想いこそが、オレのチカラの源になっているのだ。
もちろんディーネや、レイアや、エイブラハングだって、オレへの想いは強い。が、プロメテの想いは並外れたものがある。
プロメテの想いはいつだって、オレに魔神の名にふさわしい業火をあたえてくれた。
「実際、プロメテちゃんは、これまで多くの信徒を集めています」
「それはなんて言うか、歩んできた道の結果だからな。こうやって、説教して信徒を集めるという行為は、プロメテには向いてない気もする」
プロメテには、民衆から迫害されていた過去がある。
見知らぬ人間に対する不信感や警戒心といった感情が、人一倍に強くてもおかしくはない。
「私としたことが、迂闊でしたかね。この自治都市ハムレットで信徒を集めることが出来るうえに、アイリのボロを見破ることが出来て、一石二鳥だと思ったのですがね」
と、ディーネは心配そうにプロメテのことを見つめていた。
「アイリの調子はどうなんだろうか?」
もし《光神教》の間諜ならば、積極的に《紅蓮教》の信徒を集めたりはしないはずだし、なんなら今回のゲームだって乗り気ではないはずだ。
「大事にならないように、私の手の者に、コッソリ見張らせていますがね。向こうはどうやら順調みたいですよ」
「それは意外だな」
「ええ。意外ですよ。ですからもしかすると本気で、魔神さまに傾倒しているのかもしれませんね」
「言っておくが、オレはアイリとのあいだに子供を生んだ覚えはないからな。今まで会ったこともないんだし」
と、念を押しておいた。
オレとのあいだに子供がいるだなんて虚言で、プロメテのスタンスを取って代わろうとしているようにしか思えない。
オレのことを信奉しているというのならば、温かく迎え入れてやるべきなのだろう。だが、アイリからは、プロメテを拒絶するような気配がある。
その気配が、どうしても好きになれないのだ。
神のくせに、選り好みしてどうするんだと自戒する感情もある。だが、プロメテに危害を加えようとする相手を、受け入れることは、オレには出来そうになかった。
オレはふたたびプロメテに目をやった。
プロメテの周りには、自治都市ハムレットの連中が集まりはじめていた。だが、プロメテの説教に耳を傾けているわけではないらしかった。
『あれって?』
『魔術師らしいわ』
『魔神を召喚した魔術師だろ?』
『なんかふたりの魔術師が今、この都市に《紅蓮教》の教えを広めに来てるらしいわよ』
と、魔術師という存在の物珍しさから、集まっているらしかった。
魔術師だからと言って、迫害されるようなことはなさそうだった。
しかしその好奇の視線に耐えかねたのか、プロメテは裏路地のほうへと逃げこんでしまった。
「あ……」
いくら都市のなかとはいえ、あまり無闇に走り回ると危険かもしれない。そう思って追いかけようとしたが、ディーネが止めてきた。
「大丈夫ですよ。身の安全は保障します。私の手の者たちに、遠くから警護させていますから」
「しかしだな……」
プロメテが苦しんでいる姿はあまり見たくない。
ルール違反だというのはわかるのだが、直接オレが干渉できないというのは、歯がゆいものがあった。
「迷える子羊たちよ。集いなさいな。私は《紅蓮教》の大司教よ」
という声が響いた。
声のするほうを見ると、アイリが布教活動をしているところだった。
好奇な目をプロメテに向けていた民衆も、いっせいにアイリのほうに集まっていた。
「これからは《紅蓮教》の魔神さまの時代よ。救われたい者は、魔神さまを信じなさい。魔神さまは救済の手を施してくれるわ」
と、アイリは意気揚々と演説をふるって、ストリートの中心を闊歩しているのだった。
すでに多くの信徒を集めているようで、アイリの後ろには民衆が付いて歩いていた。
アイリもまた白銀の髪に白銀の目をしていたゆえに、耳目をあつめるのだった。そしてその効果を、アイリは逆手に取って、多くの人に伝道をはたらきかけていた。
「アイリのほうは絶好調みたいだな。しかもスッカリ大司教気取りらしい」
「演技――には見えないですがね。いったい何が目的なのやら」
と、ディーネがアイリのことを目を細めて凝視していた。
「まさかアイリは本気で、大司教になるつもりか?」
「私にはそう見えますがね」
「このままだとマズイな」
と、オレは裏路地へと姿を消したプロメテの身を案じた。
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