《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!

執筆用bot E-021番 

29-3.ファルスタッフ砦

 子供の作り方ウンヌンの話題は、結局、曖昧のまま立ち消えることとなった。


 怪物城が、目的地に到着したのだ。


 オレとプロメテは怪物城から降りた。降り立った場所は、廃墟のような場所だった。


 城――というよりも砦と言うべきか。堅牢そうな城だけが闇夜にそびえ立っている。が、ずいぶんと寂れている。


 あちこち亀裂が入っているし、雑草が生い茂っていた。城塔の屋根も欠けている部位が見て取れる。


 お化け屋敷みたいだな、という印象を受けた。


 そんなボロボロの城の城門棟から出てきて、こちらに歩み寄ってくる女性の姿があった。


「お久しぶりです。魔神さま」


 そう言って深々と頭を下げたのは、ディーネだった。
 プロメテちゃんも久しぶりですね、とディーネはプロメテのことを抱き寄せていた。


「久しぶりだ。元気そうで何よりだ」


「魔神さまのほうこそ。その装甲を使ってくれているようで、うれしく思いますよ」


 この超蒸気装甲カラダのことだ。


「重宝させてもらってる」


 ディーネが手を差し出してきたので、オレはその握手に応じた。


 ディーネは背が高いけれど、今のオレからは、さすがに見下ろすカッコウになる。
 ディーネは相変わらず付けヒゲを装着していた。青い髪は、またすこし伸びたようだ。


「アルテミスと、エルフの森の一件に関しては、聞き及んでいますよ。ずいぶんと派手に暴れたみたいですね」


「迷惑だったか?」


 オレたちは勝手に、ソマ帝国の植民地に攻撃を仕掛けたことになる。


 メデュの許可があったとはいえ、国を運営するディーネにとっては迷惑だったかもしれない。それをオレは憂慮していた。


「いいえ。むしろ、あの一件から、エルフとの強いつながりを持つことが出来ました。感謝していますよ」


「言い訳になるかもしれないが、あのときは緊急だったんだ」


「それも聞き及んでいます。プロメテちゃんが病気になっていたとか。回復したようで何よりです」
 と、ディーネはプロメテのことを乱暴にナで回している。
 前々からディーネは、プロメテのことを抱き枕か何かのように扱う癖がある。


 ただ――とディーネはつづけた。


「あまりムリはなさらないでくださいよ。万が一、魔神さまを失うようなことになれば、すべてが泡沫となるのですから」


「それはディーネにも言えると思うがな」


「私ですか?」


「常に先陣を切って、我先にと敵陣に突っ込んでいるというウワサは耳にしている。すでにディーネは国王の身なんだ。ムリは禁物だろ」


 ふふふっ、とディーネは付けヒゲをつまんで引っ張っていた。


「これは手厳しい」


「戦が好きだとは聞いてるがな」


「私は詭弁で民をたぶらかせるのではなく、背中を見せて生きていたい。民に道を造ってもらうのではなく、私の歩んだ道が国となる。なんてカッコウつけ過ぎですかね」


「ならオレも同じだ。守られるだけの神はゴメンだからな」


「これは一本取られましたね。いつの間にか、口が上手くなりましたか?」


「まさか」


「わざわざこのような場所まで御足労いただき、ありがとうございます」
 と、ディーネはあらたまった調子でそう言った。


「いや。聖火台があると聞いたからな。むしろ、呼んでもらって感謝してる。それに怪物城に乗ってきたから、べつに自分の足で歩いてきたわけじゃないしな」


「良い物を手に入れましたね」
 と、オレの乗ってきた怪物城を、ディーネは見上げていた。


「手に入れたって言うか、借りてるだけだ。エルフたちの所有物だし」
 と、オレも見上げる。


 怪物城の屋上のあたりにエルフたちが乗っている。オレたちが見ていることに気づいたかして、手を振り返してきた。


「それで、ここはどういう場所なんだ?」
 と、オレのほうから尋ねた。


 聖火台があるからと聞いてやって来たが、まさかこんな古びた砦にあるとは思ってもいなかった。


「ここは、かつて砦だった場所でしてね。ファルスタッフ砦と呼ばれています」


「ファルスタッフ砦……」
 と、オレは無為にくりかえした。


「見ての通り今では廃城です。山賊の巣になっていたようでした。ここに新拠点を構えるついでに、山賊連中を制圧することにしたんです」


「ここに新拠点を?」


 あたりを見渡した。
 その廃れた城の周囲には丘陵が広がっている。近くに都市でもあるのか、《輝光石》の燦然とした輝きを見受けることが出来た。


 しかしそれでも城が放つ雰囲気のせいか、どうも寂しい気配が漂っている。


 ディーネが一歩詰め寄ってきて、小声で伝えてきた。


「ゲイルの間諜網が、ソマ帝国の動きをキャッチしましてね。どうやら近々、総力をあげてセパタ王国に攻め込んでくるつもりのようです。でかい戦があるんですよ。そのための準備です」


「ソマ帝国が攻め込んでくるのか」
 と、ディーネにつられて、オレも声音が小さくなった。


「今までは、小国だからと見過ごされていた点があったようですが、さすがに看過できなくなったようですね。大規模の戦ですよ。興奮しますね。まぁ、それはさておき聖火台です」


 戦のことは気にかかるが、その件は、聖火台に火をともした後にくわしく聞こうと思った。


「ここにあるとのことだったな」


「ええ。この砦のなかに、聖火台を発見しました」


 ついて来てください――と、ディーネは城のほうへと歩みを進めた。
 オレとプロメテもつづいた。

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