《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
29-3.ファルスタッフ砦
子供の作り方ウンヌンの話題は、結局、曖昧のまま立ち消えることとなった。
怪物城が、目的地に到着したのだ。
オレとプロメテは怪物城から降りた。降り立った場所は、廃墟のような場所だった。
城――というよりも砦と言うべきか。堅牢そうな城だけが闇夜にそびえ立っている。が、ずいぶんと寂れている。
あちこち亀裂が入っているし、雑草が生い茂っていた。城塔の屋根も欠けている部位が見て取れる。
お化け屋敷みたいだな、という印象を受けた。
そんなボロボロの城の城門棟から出てきて、こちらに歩み寄ってくる女性の姿があった。
「お久しぶりです。魔神さま」
そう言って深々と頭を下げたのは、ディーネだった。
プロメテちゃんも久しぶりですね、とディーネはプロメテのことを抱き寄せていた。
「久しぶりだ。元気そうで何よりだ」
「魔神さまのほうこそ。その装甲を使ってくれているようで、うれしく思いますよ」
この超蒸気装甲のことだ。
「重宝させてもらってる」
ディーネが手を差し出してきたので、オレはその握手に応じた。
ディーネは背が高いけれど、今のオレからは、さすがに見下ろすカッコウになる。
ディーネは相変わらず付けヒゲを装着していた。青い髪は、またすこし伸びたようだ。
「アルテミスと、エルフの森の一件に関しては、聞き及んでいますよ。ずいぶんと派手に暴れたみたいですね」
「迷惑だったか?」
オレたちは勝手に、ソマ帝国の植民地に攻撃を仕掛けたことになる。
メデュの許可があったとはいえ、国を運営するディーネにとっては迷惑だったかもしれない。それをオレは憂慮していた。
「いいえ。むしろ、あの一件から、エルフとの強いつながりを持つことが出来ました。感謝していますよ」
「言い訳になるかもしれないが、あのときは緊急だったんだ」
「それも聞き及んでいます。プロメテちゃんが病気になっていたとか。回復したようで何よりです」
と、ディーネはプロメテのことを乱暴にナで回している。
前々からディーネは、プロメテのことを抱き枕か何かのように扱う癖がある。
ただ――とディーネはつづけた。
「あまりムリはなさらないでくださいよ。万が一、魔神さまを失うようなことになれば、すべてが泡沫となるのですから」
「それはディーネにも言えると思うがな」
「私ですか?」
「常に先陣を切って、我先にと敵陣に突っ込んでいるというウワサは耳にしている。すでにディーネは国王の身なんだ。ムリは禁物だろ」
ふふふっ、とディーネは付けヒゲをつまんで引っ張っていた。
「これは手厳しい」
「戦が好きだとは聞いてるがな」
「私は詭弁で民をたぶらかせるのではなく、背中を見せて生きていたい。民に道を造ってもらうのではなく、私の歩んだ道が国となる。なんてカッコウつけ過ぎですかね」
「ならオレも同じだ。守られるだけの神はゴメンだからな」
「これは一本取られましたね。いつの間にか、口が上手くなりましたか?」
「まさか」
「わざわざこのような場所まで御足労いただき、ありがとうございます」
と、ディーネはあらたまった調子でそう言った。
「いや。聖火台があると聞いたからな。むしろ、呼んでもらって感謝してる。それに怪物城に乗ってきたから、べつに自分の足で歩いてきたわけじゃないしな」
「良い物を手に入れましたね」
と、オレの乗ってきた怪物城を、ディーネは見上げていた。
「手に入れたって言うか、借りてるだけだ。エルフたちの所有物だし」
と、オレも見上げる。
怪物城の屋上のあたりにエルフたちが乗っている。オレたちが見ていることに気づいたかして、手を振り返してきた。
「それで、ここはどういう場所なんだ?」
と、オレのほうから尋ねた。
聖火台があるからと聞いてやって来たが、まさかこんな古びた砦にあるとは思ってもいなかった。
「ここは、かつて砦だった場所でしてね。ファルスタッフ砦と呼ばれています」
「ファルスタッフ砦……」
と、オレは無為にくりかえした。
「見ての通り今では廃城です。山賊の巣になっていたようでした。ここに新拠点を構えるついでに、山賊連中を制圧することにしたんです」
「ここに新拠点を?」
あたりを見渡した。
その廃れた城の周囲には丘陵が広がっている。近くに都市でもあるのか、《輝光石》の燦然とした輝きを見受けることが出来た。
しかしそれでも城が放つ雰囲気のせいか、どうも寂しい気配が漂っている。
ディーネが一歩詰め寄ってきて、小声で伝えてきた。
「ゲイルの間諜網が、ソマ帝国の動きをキャッチしましてね。どうやら近々、総力をあげてセパタ王国に攻め込んでくるつもりのようです。でかい戦があるんですよ。そのための準備です」
「ソマ帝国が攻め込んでくるのか」
と、ディーネにつられて、オレも声音が小さくなった。
「今までは、小国だからと見過ごされていた点があったようですが、さすがに看過できなくなったようですね。大規模の戦ですよ。興奮しますね。まぁ、それはさておき聖火台です」
戦のことは気にかかるが、その件は、聖火台に火をともした後にくわしく聞こうと思った。
「ここにあるとのことだったな」
「ええ。この砦のなかに、聖火台を発見しました」
ついて来てください――と、ディーネは城のほうへと歩みを進めた。
オレとプロメテもつづいた。
怪物城が、目的地に到着したのだ。
オレとプロメテは怪物城から降りた。降り立った場所は、廃墟のような場所だった。
城――というよりも砦と言うべきか。堅牢そうな城だけが闇夜にそびえ立っている。が、ずいぶんと寂れている。
あちこち亀裂が入っているし、雑草が生い茂っていた。城塔の屋根も欠けている部位が見て取れる。
お化け屋敷みたいだな、という印象を受けた。
そんなボロボロの城の城門棟から出てきて、こちらに歩み寄ってくる女性の姿があった。
「お久しぶりです。魔神さま」
そう言って深々と頭を下げたのは、ディーネだった。
プロメテちゃんも久しぶりですね、とディーネはプロメテのことを抱き寄せていた。
「久しぶりだ。元気そうで何よりだ」
「魔神さまのほうこそ。その装甲を使ってくれているようで、うれしく思いますよ」
この超蒸気装甲のことだ。
「重宝させてもらってる」
ディーネが手を差し出してきたので、オレはその握手に応じた。
ディーネは背が高いけれど、今のオレからは、さすがに見下ろすカッコウになる。
ディーネは相変わらず付けヒゲを装着していた。青い髪は、またすこし伸びたようだ。
「アルテミスと、エルフの森の一件に関しては、聞き及んでいますよ。ずいぶんと派手に暴れたみたいですね」
「迷惑だったか?」
オレたちは勝手に、ソマ帝国の植民地に攻撃を仕掛けたことになる。
メデュの許可があったとはいえ、国を運営するディーネにとっては迷惑だったかもしれない。それをオレは憂慮していた。
「いいえ。むしろ、あの一件から、エルフとの強いつながりを持つことが出来ました。感謝していますよ」
「言い訳になるかもしれないが、あのときは緊急だったんだ」
「それも聞き及んでいます。プロメテちゃんが病気になっていたとか。回復したようで何よりです」
と、ディーネはプロメテのことを乱暴にナで回している。
前々からディーネは、プロメテのことを抱き枕か何かのように扱う癖がある。
ただ――とディーネはつづけた。
「あまりムリはなさらないでくださいよ。万が一、魔神さまを失うようなことになれば、すべてが泡沫となるのですから」
「それはディーネにも言えると思うがな」
「私ですか?」
「常に先陣を切って、我先にと敵陣に突っ込んでいるというウワサは耳にしている。すでにディーネは国王の身なんだ。ムリは禁物だろ」
ふふふっ、とディーネは付けヒゲをつまんで引っ張っていた。
「これは手厳しい」
「戦が好きだとは聞いてるがな」
「私は詭弁で民をたぶらかせるのではなく、背中を見せて生きていたい。民に道を造ってもらうのではなく、私の歩んだ道が国となる。なんてカッコウつけ過ぎですかね」
「ならオレも同じだ。守られるだけの神はゴメンだからな」
「これは一本取られましたね。いつの間にか、口が上手くなりましたか?」
「まさか」
「わざわざこのような場所まで御足労いただき、ありがとうございます」
と、ディーネはあらたまった調子でそう言った。
「いや。聖火台があると聞いたからな。むしろ、呼んでもらって感謝してる。それに怪物城に乗ってきたから、べつに自分の足で歩いてきたわけじゃないしな」
「良い物を手に入れましたね」
と、オレの乗ってきた怪物城を、ディーネは見上げていた。
「手に入れたって言うか、借りてるだけだ。エルフたちの所有物だし」
と、オレも見上げる。
怪物城の屋上のあたりにエルフたちが乗っている。オレたちが見ていることに気づいたかして、手を振り返してきた。
「それで、ここはどういう場所なんだ?」
と、オレのほうから尋ねた。
聖火台があるからと聞いてやって来たが、まさかこんな古びた砦にあるとは思ってもいなかった。
「ここは、かつて砦だった場所でしてね。ファルスタッフ砦と呼ばれています」
「ファルスタッフ砦……」
と、オレは無為にくりかえした。
「見ての通り今では廃城です。山賊の巣になっていたようでした。ここに新拠点を構えるついでに、山賊連中を制圧することにしたんです」
「ここに新拠点を?」
あたりを見渡した。
その廃れた城の周囲には丘陵が広がっている。近くに都市でもあるのか、《輝光石》の燦然とした輝きを見受けることが出来た。
しかしそれでも城が放つ雰囲気のせいか、どうも寂しい気配が漂っている。
ディーネが一歩詰め寄ってきて、小声で伝えてきた。
「ゲイルの間諜網が、ソマ帝国の動きをキャッチしましてね。どうやら近々、総力をあげてセパタ王国に攻め込んでくるつもりのようです。でかい戦があるんですよ。そのための準備です」
「ソマ帝国が攻め込んでくるのか」
と、ディーネにつられて、オレも声音が小さくなった。
「今までは、小国だからと見過ごされていた点があったようですが、さすがに看過できなくなったようですね。大規模の戦ですよ。興奮しますね。まぁ、それはさておき聖火台です」
戦のことは気にかかるが、その件は、聖火台に火をともした後にくわしく聞こうと思った。
「ここにあるとのことだったな」
「ええ。この砦のなかに、聖火台を発見しました」
ついて来てください――と、ディーネは城のほうへと歩みを進めた。
オレとプロメテもつづいた。
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