《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
28-2.VSグングニエル戦・②
「何者だ?」
3大神が腰かける足元にまで歩み寄った。
オレは今、いちおう人間と同じような輪郭である。目線の高さも、人と同じぐらいの大きさだ。おのずとグングニエルの魁偉を見上げるカッコウになる。
なるほどな、と思った。
人の身から見上げる3大神というのは、ずいぶんと大きい。
威圧感たるや、凄まじいものがある。
その姿を前にしただけで、人々が畏怖するのも、理解できなくはなかった。
「はじめまして。オレは《紅蓮教》の主神。魔神アラストルだ」
グングニエルはその巨体を揺らして笑った。その両翼を一笑とともに軽く揺らした。翼によって生じた突風がオレに打ちつけた。
「バカを言うな。魔神アラストルは、炎の姿をしているのだ。貴様のような人物ではない」
「いや。中に入ってるんだよ」
「ん?」
「もう隠す意味はないな。顔を隠したまま挨拶をして悪かったな」
ヘルムを開けた。
気炎万丈。
灯火の爆発。カラダがいっきに膨れ上がった。
グングニエルの両翼から発せられた風圧とは比べものにならない突風が起こった。木々が大きく揺れた。
空を覆っていた緑の葉は、炎に染まる。舞台に喝采を湧き起こすかのように、葉がパチパチと火花を放った。
周囲にあった小屋にも、オレの炎が燃え移っていた。雄叫びをあげるかのように、火柱が上がった。
鬱々とした森の暗闇を打ち払い、オレはそこに顕現した。
「うおっ」
と、グングニエルはその翼で、カラダを覆うようにして守っていた。
「あらためて、魔神アラストルだ」
これでようやく目線の高さが、グングニエルと同じになった。
グングニエルは顔をヘルムで覆っている。そのため表情はわからない。が、オレの登場に愕然としている様子が伝わってきた。
「なぜ魔神アラストルが、このような場所にいるのだ?」
「いろいろと事情があってな」
「上手く光を隠して来たというわけか」
と、オレが脱ぎ捨てた装甲を、グングニエルは見下ろしていた。
「ああ」
「用件は?」
「こちらにアルテミスという神がいるはずだが、彼女に用事があってな」
「彼女はこの後、処刑する予定なんだがな」
と、グングニエルはわざとらしく肩をすくめて言った。
「無闇に、よその神を殺したりするのは止したらどうだ? 話してわかりあえることもあると思うがな」
と、オレは穏便な提案をしてみた。
「話合いだと? よく言う。ヤル気満々のように見えるが?」
と、グングニエルはそう言って、品定めするようにオレに視線を這わしてきた。
「まぁ、いちおう聞いてみただけだ」
グングニエルは岩から立ち上がり、何かを握るような仕草をした。すると光が集まり、その手に槍を形成したのだった。
「よその神がいたら、《光神教》の邪魔になる。人々が迷ってしまうだろう。悪魔に騙されんように、迷える子羊どもを導かなくてはならんからな」
「問答無用というわけか」
こっちも鼻から、話合いに応じてくれるとは思っていないので、さして落胆はなかった。
「そう言えば貴様も、信仰の対象になる神だったな」
「どういうわけか、お前の言う子羊は良くオレのもとに集まるみたいでな」
「ならば子羊どもに、崇める対象を教えてやらねばならんようだな。貴様は、3大神のひとりエクスカエルを殺している。生かして帰すわけにはいかん」
グングニエルはそう言うと、槍を突き出してきた。穂がオレの右肩あたりを貫いた。
べつに痛くはない。が、チカラが抜ける。
どうやらこの槍も、エクスカエルが使っていた剣と同じ類のものらしい。魔力を吸うのだ。
「オレにも退けない都合がある」
とオレは、グングニエルの顔を殴りつけた。
入った。
グングニエルは後ろによろめいた。
さきほどまで腰かけていた岩に、座り込むようなカッコウになった。
すぐに立ち上がってくる。
「オレとて負けるわけにはいかんのだ。ソマ帝国《光神教》の者たちは、我らを信仰してくれている。その想いを裏切るわけにはいかん」
と、グングニエルは槍を突き出してきた。
オレはその穂先をつかんで、グングニエルのカラダを引き寄せた。
「拷問なんかを利用して、他人に改宗や棄教を迫っているくせに、まっとうなことを言うじゃないか」
殴った。
グングニエルは槍の柄をつかんだままで、オレもその槍先をつかんでいた。おのずとグングニエルは殴られても、後ろに突き飛ばされることはなかった。
つづけざまにオレのコブシが入った。
グングニエルは槍からパッと手を離して、後ろに飛びずさった。
オレが握っていた槍が霧散して消えた。
「それの何が悪い。信じぬ者には罰を与えるまでだ」
「神のくせに、傲慢なことを」
「神だから、傲慢なのだ」
グングニエルは身を屈めると、オレの懐に潜り込んできた。
コブシに水をまとって、腹を殴りつけてきた。
オレのカラダから血のかわりに、水蒸気が吹き上がった。
「オレは、オレを信じてくれている者たちのために戦うだけだ」
殴る。
「それは、オレたちも同じこと」
と、殴り返してくる。
「拷問で改宗させた想いに、価値などありはしないさ」
とオレの手刀が、グングニエルの両翼を握った。
白い翼が焼け落ちて行く。
頭突きをくらわした。
ヘルムをかぶったグングニエルの顔が燃え上がった。
「むろん。承知のうえだ」
と、グングニエルは、焼けたヘルムを脱ぎ捨てて言った。
火炎をまとったヘルムが、ズドン、と音を立てて地面に落下した。
グングニエルの顔……。
ヘルムの下にも、白いマスクをしており、表情はうかがい知れなかった。
「ほお」
「しかしそれは改宗させた者たちだけだ。ソマ帝国の信者たちは、我らを心の底から信仰してくれているのだ」
グングニエルは水をまとった両手でオレの腹に手刀を突き入れてきた。
「ソマ帝国にも信者がいるというわけか」
「当たり前だ。むしろ貴様のような邪神に信者がつくほうが驚きだ」
殴って、
殴り返される。
その応酬である。
オレがコブシを振るえば森の木々を焼き、あたりを明るく照らし上げる。
グングニエルが水をまとったコブシを振るえば、あたりに豪雨を降らして、オレのカラダから水蒸気を吹き上げさせる。
両者のコブシに、信徒の想いが乗る。
3大神が腰かける足元にまで歩み寄った。
オレは今、いちおう人間と同じような輪郭である。目線の高さも、人と同じぐらいの大きさだ。おのずとグングニエルの魁偉を見上げるカッコウになる。
なるほどな、と思った。
人の身から見上げる3大神というのは、ずいぶんと大きい。
威圧感たるや、凄まじいものがある。
その姿を前にしただけで、人々が畏怖するのも、理解できなくはなかった。
「はじめまして。オレは《紅蓮教》の主神。魔神アラストルだ」
グングニエルはその巨体を揺らして笑った。その両翼を一笑とともに軽く揺らした。翼によって生じた突風がオレに打ちつけた。
「バカを言うな。魔神アラストルは、炎の姿をしているのだ。貴様のような人物ではない」
「いや。中に入ってるんだよ」
「ん?」
「もう隠す意味はないな。顔を隠したまま挨拶をして悪かったな」
ヘルムを開けた。
気炎万丈。
灯火の爆発。カラダがいっきに膨れ上がった。
グングニエルの両翼から発せられた風圧とは比べものにならない突風が起こった。木々が大きく揺れた。
空を覆っていた緑の葉は、炎に染まる。舞台に喝采を湧き起こすかのように、葉がパチパチと火花を放った。
周囲にあった小屋にも、オレの炎が燃え移っていた。雄叫びをあげるかのように、火柱が上がった。
鬱々とした森の暗闇を打ち払い、オレはそこに顕現した。
「うおっ」
と、グングニエルはその翼で、カラダを覆うようにして守っていた。
「あらためて、魔神アラストルだ」
これでようやく目線の高さが、グングニエルと同じになった。
グングニエルは顔をヘルムで覆っている。そのため表情はわからない。が、オレの登場に愕然としている様子が伝わってきた。
「なぜ魔神アラストルが、このような場所にいるのだ?」
「いろいろと事情があってな」
「上手く光を隠して来たというわけか」
と、オレが脱ぎ捨てた装甲を、グングニエルは見下ろしていた。
「ああ」
「用件は?」
「こちらにアルテミスという神がいるはずだが、彼女に用事があってな」
「彼女はこの後、処刑する予定なんだがな」
と、グングニエルはわざとらしく肩をすくめて言った。
「無闇に、よその神を殺したりするのは止したらどうだ? 話してわかりあえることもあると思うがな」
と、オレは穏便な提案をしてみた。
「話合いだと? よく言う。ヤル気満々のように見えるが?」
と、グングニエルはそう言って、品定めするようにオレに視線を這わしてきた。
「まぁ、いちおう聞いてみただけだ」
グングニエルは岩から立ち上がり、何かを握るような仕草をした。すると光が集まり、その手に槍を形成したのだった。
「よその神がいたら、《光神教》の邪魔になる。人々が迷ってしまうだろう。悪魔に騙されんように、迷える子羊どもを導かなくてはならんからな」
「問答無用というわけか」
こっちも鼻から、話合いに応じてくれるとは思っていないので、さして落胆はなかった。
「そう言えば貴様も、信仰の対象になる神だったな」
「どういうわけか、お前の言う子羊は良くオレのもとに集まるみたいでな」
「ならば子羊どもに、崇める対象を教えてやらねばならんようだな。貴様は、3大神のひとりエクスカエルを殺している。生かして帰すわけにはいかん」
グングニエルはそう言うと、槍を突き出してきた。穂がオレの右肩あたりを貫いた。
べつに痛くはない。が、チカラが抜ける。
どうやらこの槍も、エクスカエルが使っていた剣と同じ類のものらしい。魔力を吸うのだ。
「オレにも退けない都合がある」
とオレは、グングニエルの顔を殴りつけた。
入った。
グングニエルは後ろによろめいた。
さきほどまで腰かけていた岩に、座り込むようなカッコウになった。
すぐに立ち上がってくる。
「オレとて負けるわけにはいかんのだ。ソマ帝国《光神教》の者たちは、我らを信仰してくれている。その想いを裏切るわけにはいかん」
と、グングニエルは槍を突き出してきた。
オレはその穂先をつかんで、グングニエルのカラダを引き寄せた。
「拷問なんかを利用して、他人に改宗や棄教を迫っているくせに、まっとうなことを言うじゃないか」
殴った。
グングニエルは槍の柄をつかんだままで、オレもその槍先をつかんでいた。おのずとグングニエルは殴られても、後ろに突き飛ばされることはなかった。
つづけざまにオレのコブシが入った。
グングニエルは槍からパッと手を離して、後ろに飛びずさった。
オレが握っていた槍が霧散して消えた。
「それの何が悪い。信じぬ者には罰を与えるまでだ」
「神のくせに、傲慢なことを」
「神だから、傲慢なのだ」
グングニエルは身を屈めると、オレの懐に潜り込んできた。
コブシに水をまとって、腹を殴りつけてきた。
オレのカラダから血のかわりに、水蒸気が吹き上がった。
「オレは、オレを信じてくれている者たちのために戦うだけだ」
殴る。
「それは、オレたちも同じこと」
と、殴り返してくる。
「拷問で改宗させた想いに、価値などありはしないさ」
とオレの手刀が、グングニエルの両翼を握った。
白い翼が焼け落ちて行く。
頭突きをくらわした。
ヘルムをかぶったグングニエルの顔が燃え上がった。
「むろん。承知のうえだ」
と、グングニエルは、焼けたヘルムを脱ぎ捨てて言った。
火炎をまとったヘルムが、ズドン、と音を立てて地面に落下した。
グングニエルの顔……。
ヘルムの下にも、白いマスクをしており、表情はうかがい知れなかった。
「ほお」
「しかしそれは改宗させた者たちだけだ。ソマ帝国の信者たちは、我らを心の底から信仰してくれているのだ」
グングニエルは水をまとった両手でオレの腹に手刀を突き入れてきた。
「ソマ帝国にも信者がいるというわけか」
「当たり前だ。むしろ貴様のような邪神に信者がつくほうが驚きだ」
殴って、
殴り返される。
その応酬である。
オレがコブシを振るえば森の木々を焼き、あたりを明るく照らし上げる。
グングニエルが水をまとったコブシを振るえば、あたりに豪雨を降らして、オレのカラダから水蒸気を吹き上げさせる。
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