《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
27-4.大きな背中
獣道を抜けて行く。
白い服を着ている一団が、森に敷かれている、比較的大きな道をすすんでいるのが見えた。
(あの連中は……)
《聖白騎士団》だ。
その道はエルフが敷いたものではなく、ソマ帝国が征服のさいに、木々を切り倒して造り上げたものだ。
(どこへ行くつもりかしら?)
カザハナは低木の茂みに身をひそめて、その一団の様子を見つめた。
いた。
《聖白騎士団》に囲まれているなかに、アルテミスの姿があった。手を後ろに縛られて、頭からズタ袋をかぶせられている。
顔は見えないが、見間違うことはない。
そのズタ袋からこぼれている長い髪は、間違いなくアルテミスのものだった。
(間に合わなかったわ……)
すでにアルテミスは出頭して、その身は《聖白騎士団》の手に渡ったらしかった。
するとその1団は、アルテミスを連行しようとしているのだろう。
3大神グングニエルのもとに連れて行くつもりなのかもしれない。
諦めるにはまだ早い。
低木の茂みに身をひそめながら、カザハナは右手に弽(ゆがけ)をはめた。手を握ったり開いたりして、弽(ゆがけ)のはめ心地をたしかめた。
矢筒から矢を取り出して、弓に矢をつがえる。
弦をひきしぼる。
アルテミスを連行している《聖白騎士団》はかなりの数がいた。50人はいる。
そのうちのひとりに照準を合わせた。
暗闇でも関係はない。カザハナは夜目がきくのだ。
エルフ一の戦士と呼ばれたカザハナだが、もっとも得意としているのは剣でも槍でもない。弓だ。
カザハナは左目を失っている。そのかわり残された隻眼は、暗黒すら見通す。
射出ッ。
「うぐっ」
先頭を歩いていた男のコメカミを、矢がつらぬいた。
『何者だ?』
『どこからだ?』
と、《聖白騎士団》があわてているあいだに、つづけざまに矢を撃ち放った。
2人3人と射殺した。
『あそこだ!』
『光球を撃ちつけろ』
反撃だ。
《聖白騎士団》が白い光の球を撃ちつけてきた。タリスマンのチカラだ。
「ちッ」
岩場の影にかくれて、敵の攻撃をやり過ごした。白い光の球は、《聖白騎士団》の十八番である。
その球が当たった木々は、幹を削られて倒れていた。岩には、穿たれたような穴が開いていた。
直撃すれば間違いなく命はない。
『逃がすな』
『ひっ捕らえろ』
と、《聖白騎士団》が、カザハナのもとに押し寄せてきた。
これでは――。
(アルテミスさまを助け出すことが出来ない)
こうしている間にもアルテミスは、連れて行かれている。
カザハナのもとに接近してきた2人は小刀で斬りつけた。しかしそれまでだった。3人4人と来られては、対処のしようがない。
「うぐっ」
《聖白騎士団》による光の球が、カザハナの右肩に当たった。咄嗟に交わしたけれど、まとっていた皮の鎧が破けていた。
この場は一度退くしかない。
感情に任せて矢を放ったは良いものの、さすがに数が多すぎる。
引き返そうとしたのだが、すでにカザハナは《聖白騎士団》によって包囲されていた。呼び笛で召喚したのか、天使の姿もあった。
『殺せ』
と、《聖白騎士団》が光の球を撃ち放ってきた。
(終わりね)
そう悟った。
ソマ帝国への復讐も成し遂げられず、アルテミスを守ることも出来ない。
自分に直撃するであろう光の球を、カザハナは見据えた。なんて不甲斐ない終わり方だろうかと絶望した。
しかしどう足掻いても……。
(終わりなのね)
観念した。
刹那――。
物凄い速度で走りこんできた巨体があった。その巨体は、カザハナのことを包囲していた《聖白騎士団》を突き崩して、輪のなかに入り込んできた。そしてカザハナを守るようにして両手を広げて、光球を受け止めていた。
「なっ……何者?」
ピー、と甲高い音を全身から鳴らして、白いケムリのようなものを吹き出していた。
吹き鳴らす音は、鯨波。
吹き上がる煙は、闘気。
威風あたりをはらい、颯爽とあらわれたクロガネの巨体。
その巨体は両手をおおきく広げて、《聖白騎士団》の放った光球をカラダで受け止めてしまった。
カザハナのところからは、大きな背中が見て取れた。
「どうやら無事なようだな。お初にお目にかかる。《紅蓮教》主神。魔神アラストルだ」
「魔神アラストル……」
その言葉をハンスウした。
まさか、魔神その人が現れるとは思っていなかったし、そのなんの前触れもない出現に、理解が追い付かなかった。
(なんという……)
と、カザハナは呆気にとられた。
光球を受け止めるなんて聞いたこともない。それだけに留まらなかった。
カザハナのことを囲んでいた《聖白騎士団》の数はおおよそ20人。「魔神アラストル」と、名乗った人物は、殴り飛ばして行ったのだ。
なかには呼び笛で召喚された天使たちの姿もあった。天使たちも、その人物の前では、成す術もなく粉砕されていった。
(まさか、天使すら倒すなんて……。これが魔神のチカラなの?)
たちまちカザハナの周囲には、屍の山ができあがることになった。
天使を物ともしないその威勢に、カザハナはただひれ伏すことしか出来なかった。
(聞いていた話に間違いないわ)
3大神グングニエルを討滅した魔神。
この魔神のチカラがあれば、エルフたちをソマ帝国の手から救い出すことが出来る。
(まだ諦めるには早い)
カザハナは、再燃した闘士に身を震わせるのであった
白い服を着ている一団が、森に敷かれている、比較的大きな道をすすんでいるのが見えた。
(あの連中は……)
《聖白騎士団》だ。
その道はエルフが敷いたものではなく、ソマ帝国が征服のさいに、木々を切り倒して造り上げたものだ。
(どこへ行くつもりかしら?)
カザハナは低木の茂みに身をひそめて、その一団の様子を見つめた。
いた。
《聖白騎士団》に囲まれているなかに、アルテミスの姿があった。手を後ろに縛られて、頭からズタ袋をかぶせられている。
顔は見えないが、見間違うことはない。
そのズタ袋からこぼれている長い髪は、間違いなくアルテミスのものだった。
(間に合わなかったわ……)
すでにアルテミスは出頭して、その身は《聖白騎士団》の手に渡ったらしかった。
するとその1団は、アルテミスを連行しようとしているのだろう。
3大神グングニエルのもとに連れて行くつもりなのかもしれない。
諦めるにはまだ早い。
低木の茂みに身をひそめながら、カザハナは右手に弽(ゆがけ)をはめた。手を握ったり開いたりして、弽(ゆがけ)のはめ心地をたしかめた。
矢筒から矢を取り出して、弓に矢をつがえる。
弦をひきしぼる。
アルテミスを連行している《聖白騎士団》はかなりの数がいた。50人はいる。
そのうちのひとりに照準を合わせた。
暗闇でも関係はない。カザハナは夜目がきくのだ。
エルフ一の戦士と呼ばれたカザハナだが、もっとも得意としているのは剣でも槍でもない。弓だ。
カザハナは左目を失っている。そのかわり残された隻眼は、暗黒すら見通す。
射出ッ。
「うぐっ」
先頭を歩いていた男のコメカミを、矢がつらぬいた。
『何者だ?』
『どこからだ?』
と、《聖白騎士団》があわてているあいだに、つづけざまに矢を撃ち放った。
2人3人と射殺した。
『あそこだ!』
『光球を撃ちつけろ』
反撃だ。
《聖白騎士団》が白い光の球を撃ちつけてきた。タリスマンのチカラだ。
「ちッ」
岩場の影にかくれて、敵の攻撃をやり過ごした。白い光の球は、《聖白騎士団》の十八番である。
その球が当たった木々は、幹を削られて倒れていた。岩には、穿たれたような穴が開いていた。
直撃すれば間違いなく命はない。
『逃がすな』
『ひっ捕らえろ』
と、《聖白騎士団》が、カザハナのもとに押し寄せてきた。
これでは――。
(アルテミスさまを助け出すことが出来ない)
こうしている間にもアルテミスは、連れて行かれている。
カザハナのもとに接近してきた2人は小刀で斬りつけた。しかしそれまでだった。3人4人と来られては、対処のしようがない。
「うぐっ」
《聖白騎士団》による光の球が、カザハナの右肩に当たった。咄嗟に交わしたけれど、まとっていた皮の鎧が破けていた。
この場は一度退くしかない。
感情に任せて矢を放ったは良いものの、さすがに数が多すぎる。
引き返そうとしたのだが、すでにカザハナは《聖白騎士団》によって包囲されていた。呼び笛で召喚したのか、天使の姿もあった。
『殺せ』
と、《聖白騎士団》が光の球を撃ち放ってきた。
(終わりね)
そう悟った。
ソマ帝国への復讐も成し遂げられず、アルテミスを守ることも出来ない。
自分に直撃するであろう光の球を、カザハナは見据えた。なんて不甲斐ない終わり方だろうかと絶望した。
しかしどう足掻いても……。
(終わりなのね)
観念した。
刹那――。
物凄い速度で走りこんできた巨体があった。その巨体は、カザハナのことを包囲していた《聖白騎士団》を突き崩して、輪のなかに入り込んできた。そしてカザハナを守るようにして両手を広げて、光球を受け止めていた。
「なっ……何者?」
ピー、と甲高い音を全身から鳴らして、白いケムリのようなものを吹き出していた。
吹き鳴らす音は、鯨波。
吹き上がる煙は、闘気。
威風あたりをはらい、颯爽とあらわれたクロガネの巨体。
その巨体は両手をおおきく広げて、《聖白騎士団》の放った光球をカラダで受け止めてしまった。
カザハナのところからは、大きな背中が見て取れた。
「どうやら無事なようだな。お初にお目にかかる。《紅蓮教》主神。魔神アラストルだ」
「魔神アラストル……」
その言葉をハンスウした。
まさか、魔神その人が現れるとは思っていなかったし、そのなんの前触れもない出現に、理解が追い付かなかった。
(なんという……)
と、カザハナは呆気にとられた。
光球を受け止めるなんて聞いたこともない。それだけに留まらなかった。
カザハナのことを囲んでいた《聖白騎士団》の数はおおよそ20人。「魔神アラストル」と、名乗った人物は、殴り飛ばして行ったのだ。
なかには呼び笛で召喚された天使たちの姿もあった。天使たちも、その人物の前では、成す術もなく粉砕されていった。
(まさか、天使すら倒すなんて……。これが魔神のチカラなの?)
たちまちカザハナの周囲には、屍の山ができあがることになった。
天使を物ともしないその威勢に、カザハナはただひれ伏すことしか出来なかった。
(聞いていた話に間違いないわ)
3大神グングニエルを討滅した魔神。
この魔神のチカラがあれば、エルフたちをソマ帝国の手から救い出すことが出来る。
(まだ諦めるには早い)
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