《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
25-4.酔っ払い
「ストールさまに、黒狩人組合の証明石を上梓することが出来ないとは、どういうことだ!」
黒狩人組合は、どうやら酒場としても機能しているようだった。鉄鋼樹脂性の長机がいくつも置かれていた。そこで酒を飲んで賑わっている者たちがいた。
この場所にもオレの影響があるようで、壁や天井には燭台やカンテラが設置されていた。
カウンターテーブル。
受付嬢を相手に、エイブラハングが怒鳴っていた。
と――いうのも、オレに黒狩人の証明石を作ってもらえないという話が発端だった。
「ですから、エイブラハングさまもご承知のように、黒狩人の証明石は、クロイを倒した功績が必要ですので」
と、受付嬢は、ネコ耳をひょこひょこと動かして困っていた。
「もう良いよ。大丈夫だから」
と、怒れるエイブラハングを、オレがいさめることにした。
「申し訳ありません。ストールさまの偉大さがわからない連中だとは思いませんでした」
「そりゃまぁ素性を隠してるわけだからな」
わかられては逆に困るのだ。
それに、べつに黒狩人になりに来たわけじゃない。
「おいおい。肩書きだけの腰抜けS級さまだぜ」 と、茶化すような声が割り込んだ。
話しかけてきたのは、赤ら顔の3人の男だった。酒を飲んでいたのだろう。嗅覚がツンとするほどの酒気を、全身から発していた。
「……」
エイブラハングは黙って、その男たちを見つめていた。
「修道院に入り浸って、もうクロイと戦わなくなったそうじゃないか。腰抜けのS級さまよ」
と、男たちがエイブラハングを揶揄していた。
黙って聞いていることが出来なかったので、オレはエイブラハングをかばうように前に出た。
「エイブラハングには、別の仕事があったというだけだ。お前たちに揶揄される筋合いはない」
たしかにエイブラハングは、ここしばらくクロイを狩るのをやめているようだ。本人もそのことを気にしている様子だった。
しかしそんなこと気にする必要はないのだ。
ドワーフの里での戦のさいには、おおいに活躍してくれた。先日、水没しているオレとプロメテを救ってのもエイブラハングだし、ディーネ救出のさいにも同行してくれている。
その活躍は、決して誰かに揶揄されて良いものではない。
「なんだ。てめェ? ずいぶんとでけェな」
男がそう言うと、オレの腹のあたりをコブシで叩きつけてきた。
カツン、と硬い音が鳴り響いた。
叩かれてももちろん、オレの肉体そのものではないので、べつに痛くもかゆくもない。
オレのカラダの内部は超高温になっているが、特殊な金属でも使われているのか、その高熱が外皮に伝導されていることはないようだ。
「ところで尋ねたいことがあるんだが」
「はぁ?」
「魔力を回復できる方法を知らないか」
「魔力だァ?」
「いや。知らないのなら、けっこうだ」
まぁ、知らないだろう。
そもそも魔術師がプロメテひとりしかいないのだから、魔力を回復する手段が、世界に流通しているはずがないのだ。
何かわかるかもしれないと期待して、ここに訪れたものの、その期待は決して大きなものではなかった。
「おい。それよりオッサン」
「お……オッサン?」
「オッサンじゃねェのかよ。そんなでかい甲冑を着てるんだから、オッサンだろうが」
「う、うむ?」
たしかに女子供には、この甲冑を着るのはムリだろう。自然とオッサンだと認識されているらしい。
召喚されてこの方、オッサンなどと呼ばれるのは、はじめてだったので新鮮な気持ちだった。
オッサンに見えるということは、この甲冑によって上手く素性は隠せている証でもある。
「口出ししてんじゃねェよ。オレはそこの女に用事があるんだ。S級の腰抜けさんによ」
「エイブラハングのことを腰抜けと言うな」
「クロイと戦えなくなった、黒狩人を腰抜けと言って何が悪い」
「これ以上、エイブラハングを侮辱するようならば、ただじゃ済まさんぞ」
男たちは笑った。
「ただじゃ済まないだって? オレたちはA級さまだぜ。これが見えねェのかよ。この節穴野郎が」
男たちはそう言うと、証明石を見せつけてきた。石には尾がヘビになっている、ライオンの絵が描かれていた。キマイラだ。
「ケンカするつもりで来たわけじゃないんだがな」
「おう? なんだ。エイブラハングが腰抜けなら、その付き人も腰抜けってか? ビビってんのかよ」
どうやらオレのほうが付き人と思われているらしい。エイブラハングは、S級だから、そう見られるのだろう。
「いや。止そう」
酔っ払い相手にムキになっても仕方がない。
オレはエイブラハングを連れて、その場を離れようとした。が、オレのその足を止めるセリフをブツけられることになった。
「魔力がどうこうとか言ってたな。デカブツ」
「何か知ってるのか?」
「さてね。ここでオレとやり合って、勝てたなら教えてやっても良い」
「なんだ? 腕相撲でもするか?」
「なにバカなこと言ってんだよ。やり合うって言ったら、ひとつしかねェだろうが」
男はそう言うと、イキナリ殴りかかってきた。 オレはそのコブシを受け止めた。
「いや。止めた方が良いと思うが。すこし頭を冷やしたらどうだ」
「ウルセェ。オレに勝てたら、魔力を回復する方法を教えてやるよ。代わりにオレが買ったら、そのでけぇ甲冑を寄越せよ。高く売れそうだ」
「……わかった」
と、オレはそのケンカを受けることにした。
この甲冑を渡すわけにはいかなかったが、負けないだろうという自負があったため、引き受けることにした。
勝てば、魔力を回復する方法を教えてくれると言うのだ。
この酔っ払いの言うことが当てになるのかは曖昧だが、いまはどんな些細な情報でも欲しいところだ。
周りの連中が、「おっ、いいぞ、いいぞー」「やっちまえ」「オレはでけぇほうに賭けるぜ」……などと盛り上がっていた。
それもまた、退くに退けなくなった理由のひとつである。
黒狩人組合は、どうやら酒場としても機能しているようだった。鉄鋼樹脂性の長机がいくつも置かれていた。そこで酒を飲んで賑わっている者たちがいた。
この場所にもオレの影響があるようで、壁や天井には燭台やカンテラが設置されていた。
カウンターテーブル。
受付嬢を相手に、エイブラハングが怒鳴っていた。
と――いうのも、オレに黒狩人の証明石を作ってもらえないという話が発端だった。
「ですから、エイブラハングさまもご承知のように、黒狩人の証明石は、クロイを倒した功績が必要ですので」
と、受付嬢は、ネコ耳をひょこひょこと動かして困っていた。
「もう良いよ。大丈夫だから」
と、怒れるエイブラハングを、オレがいさめることにした。
「申し訳ありません。ストールさまの偉大さがわからない連中だとは思いませんでした」
「そりゃまぁ素性を隠してるわけだからな」
わかられては逆に困るのだ。
それに、べつに黒狩人になりに来たわけじゃない。
「おいおい。肩書きだけの腰抜けS級さまだぜ」 と、茶化すような声が割り込んだ。
話しかけてきたのは、赤ら顔の3人の男だった。酒を飲んでいたのだろう。嗅覚がツンとするほどの酒気を、全身から発していた。
「……」
エイブラハングは黙って、その男たちを見つめていた。
「修道院に入り浸って、もうクロイと戦わなくなったそうじゃないか。腰抜けのS級さまよ」
と、男たちがエイブラハングを揶揄していた。
黙って聞いていることが出来なかったので、オレはエイブラハングをかばうように前に出た。
「エイブラハングには、別の仕事があったというだけだ。お前たちに揶揄される筋合いはない」
たしかにエイブラハングは、ここしばらくクロイを狩るのをやめているようだ。本人もそのことを気にしている様子だった。
しかしそんなこと気にする必要はないのだ。
ドワーフの里での戦のさいには、おおいに活躍してくれた。先日、水没しているオレとプロメテを救ってのもエイブラハングだし、ディーネ救出のさいにも同行してくれている。
その活躍は、決して誰かに揶揄されて良いものではない。
「なんだ。てめェ? ずいぶんとでけェな」
男がそう言うと、オレの腹のあたりをコブシで叩きつけてきた。
カツン、と硬い音が鳴り響いた。
叩かれてももちろん、オレの肉体そのものではないので、べつに痛くもかゆくもない。
オレのカラダの内部は超高温になっているが、特殊な金属でも使われているのか、その高熱が外皮に伝導されていることはないようだ。
「ところで尋ねたいことがあるんだが」
「はぁ?」
「魔力を回復できる方法を知らないか」
「魔力だァ?」
「いや。知らないのなら、けっこうだ」
まぁ、知らないだろう。
そもそも魔術師がプロメテひとりしかいないのだから、魔力を回復する手段が、世界に流通しているはずがないのだ。
何かわかるかもしれないと期待して、ここに訪れたものの、その期待は決して大きなものではなかった。
「おい。それよりオッサン」
「お……オッサン?」
「オッサンじゃねェのかよ。そんなでかい甲冑を着てるんだから、オッサンだろうが」
「う、うむ?」
たしかに女子供には、この甲冑を着るのはムリだろう。自然とオッサンだと認識されているらしい。
召喚されてこの方、オッサンなどと呼ばれるのは、はじめてだったので新鮮な気持ちだった。
オッサンに見えるということは、この甲冑によって上手く素性は隠せている証でもある。
「口出ししてんじゃねェよ。オレはそこの女に用事があるんだ。S級の腰抜けさんによ」
「エイブラハングのことを腰抜けと言うな」
「クロイと戦えなくなった、黒狩人を腰抜けと言って何が悪い」
「これ以上、エイブラハングを侮辱するようならば、ただじゃ済まさんぞ」
男たちは笑った。
「ただじゃ済まないだって? オレたちはA級さまだぜ。これが見えねェのかよ。この節穴野郎が」
男たちはそう言うと、証明石を見せつけてきた。石には尾がヘビになっている、ライオンの絵が描かれていた。キマイラだ。
「ケンカするつもりで来たわけじゃないんだがな」
「おう? なんだ。エイブラハングが腰抜けなら、その付き人も腰抜けってか? ビビってんのかよ」
どうやらオレのほうが付き人と思われているらしい。エイブラハングは、S級だから、そう見られるのだろう。
「いや。止そう」
酔っ払い相手にムキになっても仕方がない。
オレはエイブラハングを連れて、その場を離れようとした。が、オレのその足を止めるセリフをブツけられることになった。
「魔力がどうこうとか言ってたな。デカブツ」
「何か知ってるのか?」
「さてね。ここでオレとやり合って、勝てたなら教えてやっても良い」
「なんだ? 腕相撲でもするか?」
「なにバカなこと言ってんだよ。やり合うって言ったら、ひとつしかねェだろうが」
男はそう言うと、イキナリ殴りかかってきた。 オレはそのコブシを受け止めた。
「いや。止めた方が良いと思うが。すこし頭を冷やしたらどうだ」
「ウルセェ。オレに勝てたら、魔力を回復する方法を教えてやるよ。代わりにオレが買ったら、そのでけぇ甲冑を寄越せよ。高く売れそうだ」
「……わかった」
と、オレはそのケンカを受けることにした。
この甲冑を渡すわけにはいかなかったが、負けないだろうという自負があったため、引き受けることにした。
勝てば、魔力を回復する方法を教えてくれると言うのだ。
この酔っ払いの言うことが当てになるのかは曖昧だが、いまはどんな些細な情報でも欲しいところだ。
周りの連中が、「おっ、いいぞ、いいぞー」「やっちまえ」「オレはでけぇほうに賭けるぜ」……などと盛り上がっていた。
それもまた、退くに退けなくなった理由のひとつである。
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