《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
24-3.出会いと別れ
セパタ王国王都にも、《紅蓮教》の教会が建立されることになった。新たにセパタ王国の国王となったディーネの指示である。
オレは都市シェークスの修道院に帰るつもりだったので、その教会にとどまることはなかったが、タリスマンの火があるために、オレがいなくとも火は起こせるということだった。
王都――城門棟前。
オレたちの帰りの馬車が用意されていた。
「それでは魔神さま。どうか帰路にお気を付けてください」
と、ディーネが言った。
「これから寂しくなるな」
ディーネは国王として、この王都に留まるということだった。ここでお別れということだ。 ディーネに伴ってタルルも、ここに残るのだそうだ。
「私との別れを惜しんでくださるのですか」
「そりゃ、世話になったしな」
寂しくなるのですよ――と、プロメテも唇を噛みしめていた。泣かないように堪えているのだろう。
「それほど悲しんでいただいて私は幸せですよ。ですが、そうしんみりとする必要もありません。別に最後の別れというわけではないですからね」
「まあな」
戦国大名のような強引なやり口ではあるが、ディーネは国を勝ち取ったのだ。むしろ喜ばしいことではあるのだろう。
「ときおり余裕を見て、そちらに顔も出しますよ」
ホントなのです?
と、プロメテが問うていた。
「しばらくは国の統治に忙しくなると思いますが、それが終ったら、顔を出しますよ」
と、ディーネはプロメテの頭をわしゃわしゃとナでていた。
「国の統治というのは、ロードリのことか?」
今朝。
ロードリは処刑された。
長くオレたちを苦しめてきたロードリが、ついに死んだのかと思うと、胸のすくような思いが少しはあった。が、少し寂しい感覚もあった。
なんだかんだ言っても、ロードリとはオレが召喚されて以来の付き合いがあったのだ。追いかけまわされたりして、良い付き合いではなかったけれど、いなくなると寂しいものがあった。
「ええ。それだけではないですが、翻意の芽は早いうちに摘んでおくことに、越したことはありませんから。それに今回の騒動を仕組んだのはロードリですから、処刑する理由としては充分でしょう」
「うむ」
と、オレは唸るだけにしておいた。
「また何かあったときは、お助けください。今回の件も、魔神さまの助けがなければ、私は死んでいたことでしょう」
「オレがいなくても、ディーネなら上手くやっていたと思うがな」
「買いかぶりすぎですよ」
と、ディーネは頭を振っていた。
「チカラになれることがあれば、言ってくれ。出来るだけのことはする」
「心強いお言葉です」
と、ディーネは濡れている地面にも構わず、オレの前にかしずいた。ディーネのとなりではタルルも同じくかしずいていた。
「じゃあな」
「はい。それではまたお会いしましょう」
ディーネに見送られて、オレたちは馬車に乗りこんだ。
帰りの馬車に乗るのはレイアとゲイルとエイブラハング。そしてオレとプロメテの馬車に乗りこんできたのはメデュだった。
「これから、よろしくなのじゃ。魔神さま」
「うむ。こちらこそ世話になる」
ディーネが国王となって王都に移る。
空いた都市シェークスの領主の枠には、メデュ公爵が移ってくることになったのだ。
「しかし良かったのか?」
と、オレは問いかけた。
「何がじゃ?」
「ディーネはもともと伯爵だろう。公爵であるメデュのほうが格上だったんだろ? ディーネが国王になったら、メデュのほうが格下になってしまうんじゃないのか?」
これまで部下だった人間に、先に昇進されたようなものじゃないのかな、と思ったのだ。
「なんじゃ、そんなことか」
「けっこう重大なことだと思うがな」
「ワラワは自分の器を弁えておる。セパタ王国に《紅蓮教》を広めて、国を強くするためには、ディーネが国王になるほうが良い」
「まぁ、たしかにディーネは優秀なんだろうな」
それにな――と、メデュは桜色の唇を、真紅の舌で湿らせていた。その仕草が淫靡なものに見えてオレは目をそらした。
「ワラワは国王なんかになるよりも、魔神さまの傍におりたいでな。ディーネ伯爵――いや。ディーネ国王よりも、ワラワは魔神さまを幸せにして見せるので、期待していてくりゃれ」
「領主の仕事は、べつにオレを幸せにするのが目的ではないがな」
「領主の仕事だけではなく、ワラワには、魔神さまの妻として、ひとりの信徒としてのつとめもあるでな」
「う、うむ……」
本気で揶揄されているのか、わからなかった。メデュは本気でオレの妻になるつもりなんだろうか。
「魔神さまが困っているのですよ」
と、プロメテが言い返していた。
「魔神さまもウブよのぉ。その様子では女を知らんと見える」
「げ、下品なのですよっ」
「魔神さまもウブならば、大司教さまもウブと見える。ワラワがいろいろと仕込んでやらねばならぬなぁ。気持ちの良いことを色々と教えてやるでな」
「け、けっこうなのです。そんな変なこと知らなくても良いのですよ」
「そんなことでは、魔神さまを満足させることが出来ぬじゃろうが」
プロメテとメデュが奇妙な話題で言い争うなか、馬車は進みはじめた。
王都の城の前では、まだディーネとタルルの2人がかしずいていた。
ディーネが王になったことを機に、《紅蓮教》は爆発的に大きくなるのではなかろうか。そんな予感がした。
聖火台は、依然残り3つである。
オレは都市シェークスの修道院に帰るつもりだったので、その教会にとどまることはなかったが、タリスマンの火があるために、オレがいなくとも火は起こせるということだった。
王都――城門棟前。
オレたちの帰りの馬車が用意されていた。
「それでは魔神さま。どうか帰路にお気を付けてください」
と、ディーネが言った。
「これから寂しくなるな」
ディーネは国王として、この王都に留まるということだった。ここでお別れということだ。 ディーネに伴ってタルルも、ここに残るのだそうだ。
「私との別れを惜しんでくださるのですか」
「そりゃ、世話になったしな」
寂しくなるのですよ――と、プロメテも唇を噛みしめていた。泣かないように堪えているのだろう。
「それほど悲しんでいただいて私は幸せですよ。ですが、そうしんみりとする必要もありません。別に最後の別れというわけではないですからね」
「まあな」
戦国大名のような強引なやり口ではあるが、ディーネは国を勝ち取ったのだ。むしろ喜ばしいことではあるのだろう。
「ときおり余裕を見て、そちらに顔も出しますよ」
ホントなのです?
と、プロメテが問うていた。
「しばらくは国の統治に忙しくなると思いますが、それが終ったら、顔を出しますよ」
と、ディーネはプロメテの頭をわしゃわしゃとナでていた。
「国の統治というのは、ロードリのことか?」
今朝。
ロードリは処刑された。
長くオレたちを苦しめてきたロードリが、ついに死んだのかと思うと、胸のすくような思いが少しはあった。が、少し寂しい感覚もあった。
なんだかんだ言っても、ロードリとはオレが召喚されて以来の付き合いがあったのだ。追いかけまわされたりして、良い付き合いではなかったけれど、いなくなると寂しいものがあった。
「ええ。それだけではないですが、翻意の芽は早いうちに摘んでおくことに、越したことはありませんから。それに今回の騒動を仕組んだのはロードリですから、処刑する理由としては充分でしょう」
「うむ」
と、オレは唸るだけにしておいた。
「また何かあったときは、お助けください。今回の件も、魔神さまの助けがなければ、私は死んでいたことでしょう」
「オレがいなくても、ディーネなら上手くやっていたと思うがな」
「買いかぶりすぎですよ」
と、ディーネは頭を振っていた。
「チカラになれることがあれば、言ってくれ。出来るだけのことはする」
「心強いお言葉です」
と、ディーネは濡れている地面にも構わず、オレの前にかしずいた。ディーネのとなりではタルルも同じくかしずいていた。
「じゃあな」
「はい。それではまたお会いしましょう」
ディーネに見送られて、オレたちは馬車に乗りこんだ。
帰りの馬車に乗るのはレイアとゲイルとエイブラハング。そしてオレとプロメテの馬車に乗りこんできたのはメデュだった。
「これから、よろしくなのじゃ。魔神さま」
「うむ。こちらこそ世話になる」
ディーネが国王となって王都に移る。
空いた都市シェークスの領主の枠には、メデュ公爵が移ってくることになったのだ。
「しかし良かったのか?」
と、オレは問いかけた。
「何がじゃ?」
「ディーネはもともと伯爵だろう。公爵であるメデュのほうが格上だったんだろ? ディーネが国王になったら、メデュのほうが格下になってしまうんじゃないのか?」
これまで部下だった人間に、先に昇進されたようなものじゃないのかな、と思ったのだ。
「なんじゃ、そんなことか」
「けっこう重大なことだと思うがな」
「ワラワは自分の器を弁えておる。セパタ王国に《紅蓮教》を広めて、国を強くするためには、ディーネが国王になるほうが良い」
「まぁ、たしかにディーネは優秀なんだろうな」
それにな――と、メデュは桜色の唇を、真紅の舌で湿らせていた。その仕草が淫靡なものに見えてオレは目をそらした。
「ワラワは国王なんかになるよりも、魔神さまの傍におりたいでな。ディーネ伯爵――いや。ディーネ国王よりも、ワラワは魔神さまを幸せにして見せるので、期待していてくりゃれ」
「領主の仕事は、べつにオレを幸せにするのが目的ではないがな」
「領主の仕事だけではなく、ワラワには、魔神さまの妻として、ひとりの信徒としてのつとめもあるでな」
「う、うむ……」
本気で揶揄されているのか、わからなかった。メデュは本気でオレの妻になるつもりなんだろうか。
「魔神さまが困っているのですよ」
と、プロメテが言い返していた。
「魔神さまもウブよのぉ。その様子では女を知らんと見える」
「げ、下品なのですよっ」
「魔神さまもウブならば、大司教さまもウブと見える。ワラワがいろいろと仕込んでやらねばならぬなぁ。気持ちの良いことを色々と教えてやるでな」
「け、けっこうなのです。そんな変なこと知らなくても良いのですよ」
「そんなことでは、魔神さまを満足させることが出来ぬじゃろうが」
プロメテとメデュが奇妙な話題で言い争うなか、馬車は進みはじめた。
王都の城の前では、まだディーネとタルルの2人がかしずいていた。
ディーネが王になったことを機に、《紅蓮教》は爆発的に大きくなるのではなかろうか。そんな予感がした。
聖火台は、依然残り3つである。
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