《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!

執筆用bot E-021番 

24-3.出会いと別れ

 セパタ王国王都にも、《紅蓮教》の教会が建立されることになった。新たにセパタ王国の国王となったディーネの指示である。


 オレは都市シェークスの修道院に帰るつもりだったので、その教会にとどまることはなかったが、タリスマンの火があるために、オレがいなくとも火は起こせるということだった。


 王都――城門棟前。
 オレたちの帰りの馬車が用意されていた。


「それでは魔神さま。どうか帰路にお気を付けてください」
 と、ディーネが言った。


「これから寂しくなるな」


 ディーネは国王として、この王都に留まるということだった。ここでお別れということだ。   ディーネに伴ってタルルも、ここに残るのだそうだ。


「私との別れを惜しんでくださるのですか」


「そりゃ、世話になったしな」


 寂しくなるのですよ――と、プロメテも唇を噛みしめていた。泣かないように堪えているのだろう。


「それほど悲しんでいただいて私は幸せですよ。ですが、そうしんみりとする必要もありません。別に最後の別れというわけではないですからね」


「まあな」


 戦国大名のような強引なやり口ではあるが、ディーネは国を勝ち取ったのだ。むしろ喜ばしいことではあるのだろう。


「ときおり余裕を見て、そちらに顔も出しますよ」


 ホントなのです?
 と、プロメテが問うていた。


「しばらくは国の統治に忙しくなると思いますが、それが終ったら、顔を出しますよ」
 と、ディーネはプロメテの頭をわしゃわしゃとナでていた。


「国の統治というのは、ロードリのことか?」


 今朝。
 ロードリは処刑された。


 長くオレたちを苦しめてきたロードリが、ついに死んだのかと思うと、胸のすくような思いが少しはあった。が、少し寂しい感覚もあった。


 なんだかんだ言っても、ロードリとはオレが召喚されて以来の付き合いがあったのだ。追いかけまわされたりして、良い付き合いではなかったけれど、いなくなると寂しいものがあった。


「ええ。それだけではないですが、翻意の芽は早いうちに摘んでおくことに、越したことはありませんから。それに今回の騒動を仕組んだのはロードリですから、処刑する理由としては充分でしょう」


「うむ」
 と、オレは唸るだけにしておいた。


「また何かあったときは、お助けください。今回の件も、魔神さまの助けがなければ、私は死んでいたことでしょう」


「オレがいなくても、ディーネなら上手くやっていたと思うがな」


「買いかぶりすぎですよ」
 と、ディーネは頭を振っていた。


「チカラになれることがあれば、言ってくれ。出来るだけのことはする」


「心強いお言葉です」
 と、ディーネは濡れている地面にも構わず、オレの前にかしずいた。ディーネのとなりではタルルも同じくかしずいていた。


「じゃあな」


「はい。それではまたお会いしましょう」
 ディーネに見送られて、オレたちは馬車に乗りこんだ。


 帰りの馬車に乗るのはレイアとゲイルとエイブラハング。そしてオレとプロメテの馬車に乗りこんできたのはメデュだった。


「これから、よろしくなのじゃ。魔神さま」


「うむ。こちらこそ世話になる」


 ディーネが国王となって王都に移る。
 空いた都市シェークスの領主の枠には、メデュ公爵が移ってくることになったのだ。


「しかし良かったのか?」
 と、オレは問いかけた。


「何がじゃ?」


「ディーネはもともと伯爵だろう。公爵であるメデュのほうが格上だったんだろ? ディーネが国王になったら、メデュのほうが格下になってしまうんじゃないのか?」


 これまで部下だった人間に、先に昇進されたようなものじゃないのかな、と思ったのだ。


「なんじゃ、そんなことか」


「けっこう重大なことだと思うがな」


「ワラワは自分の器を弁えておる。セパタ王国に《紅蓮教》を広めて、国を強くするためには、ディーネが国王になるほうが良い」


「まぁ、たしかにディーネは優秀なんだろうな」


 それにな――と、メデュは桜色の唇を、真紅の舌で湿らせていた。その仕草が淫靡なものに見えてオレは目をそらした。


「ワラワは国王なんかになるよりも、魔神さまの傍におりたいでな。ディーネ伯爵――いや。ディーネ国王よりも、ワラワは魔神さまを幸せにして見せるので、期待していてくりゃれ」


「領主の仕事は、べつにオレを幸せにするのが目的ではないがな」


「領主の仕事だけではなく、ワラワには、魔神さまの妻として、ひとりの信徒としてのつとめもあるでな」


「う、うむ……」
 本気で揶揄されているのか、わからなかった。メデュは本気でオレの妻になるつもりなんだろうか。


「魔神さまが困っているのですよ」
 と、プロメテが言い返していた。


「魔神さまもウブよのぉ。その様子では女を知らんと見える」


「げ、下品なのですよっ」


「魔神さまもウブならば、大司教さまもウブと見える。ワラワがいろいろと仕込んでやらねばならぬなぁ。気持ちの良いことを色々と教えてやるでな」


「け、けっこうなのです。そんな変なこと知らなくても良いのですよ」


「そんなことでは、魔神さまを満足させることが出来ぬじゃろうが」


 プロメテとメデュが奇妙な話題で言い争うなか、馬車は進みはじめた。


 王都の城の前では、まだディーネとタルルの2人がかしずいていた。


 ディーネが王になったことを機に、《紅蓮教》は爆発的に大きくなるのではなかろうか。そんな予感がした。


 聖火台は、依然残り3つである。

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