《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
23-3.ディーネの策謀
「みんな無事か?」
張りつけにされている者たちを、解放していった。
みんな手首足首を縛られているというだけで、目立った外傷はなかった。
ただディーネだけは頬に痣ができていた。よくよく見てみると、爪もはがれている。もしかすると、オレたちが助けに来るまでのあいだに、拷問のようなものを受けたのかもしれない。
「おやおや。私はまだ生きているようですね」
ディーネが目を覚ましたようで、チカラなく笑ってそう言った。
ディーネは張りつけから解放された後、仰向けに寝かされていたのだが、余力をふりしぼるようにして上体を起こしていた。
「まだ動かないほうが良い。けっこう外傷が酷いようだ」
「いえ。この程度、たいしたことはありませんよ。しかしこうも早く助けに来てくれるとは思いませんでしたよ」
ディーネはみずからの頬を指でつまむような仕草をして見せた。おそらくいつもの癖で付けヒゲを引っ張ろうとしたのだろう。が、今はその付けヒゲがなかった。ディーネはやり場を失ったその手で頭をカいていた。
「助けに来ることは、想定済みだったのか」
「魔神さまなら来てくれるだろうと思っていましたよ」
「どこまで計画通りだったんだ」
正直、こっちは死ぬかもしれない綱渡りだったがな――と、オレはチクリと皮肉を一言つけくわえた。
このディーネである。
連れ去られるぐらいの想定はしていたはずだ――と思うのだ。
ふふ、とディーネは小さく笑った。
「悪く思わないでくださいよ。実際、ロードリ公爵がこれほど素早く手を出してくるとは思っていなかったんですよ」
と、ディーネは肩をすくめた。
「でも、オレたちが助けに来ることは想定済みだったんだろ」
「まぁ、計画がすこし早まったという感じでしょうかね。自分で言うのもなんですが、大局ばかり見て小事を見落とすことはあるものですよ」
「そうか」
「ロードリ公爵のような小物のことなんて、眼中にありませんでしたからね。見事に出し抜かれました。まぁ、メデュ公爵やゲイルなどの予防線は残しておりましたがね」
「それは見事な布石だった」
実際、今回の救出劇に、ゲイルとメデュのふたりはおおいに役立ってくれた。
「魔神さまにホめていただくとは、光栄なことです」
「よく言うよ」
魔神として存在しているから、ディーネはオレを敬ってくれている。だが、仮にオレは人間だったならば、ディーネの足元にも及ばないだろうと思うのだ。
「しかしおかげで計画が早まった」
と、ディーネは立ち上がった。
「まだ立たないほうが良いんじゃないか?」
強がっていてもディーネからは憔悴が感じられた。頬はこけているし、目の下にはクマが出来ている。
「いえ。今こそ奮起するときですよ。魔神さまが王都に入った。この勢いに乗じて、やるべきことをやらなくては。私の計画はそこにある」
「計画?」
瞬間。
ディーネの口角は、これまでに見たことないほど吊り上った。
ゾッとするような笑みだった。
その碧眼に、青い炎が灯るのをオレは見逃さなかった。
「セパタ王国の国王を討つ。そして今回の作戦立案者であるロードリの首を刎ねる」
「過激だな」
「征服者は、残酷さを発揮するときを躊躇うべきではありません。いまこそ一気呵成に事を運ぶ好機。意味がわかりますか? 今こそ《紅蓮教》を国教とする国家建国のときなのですよ」
「建国だと?」
「ええ。魔神さまの威光は示された。今が最大の好機です」
へくち――と、おそらく話の意味をわかっていないであろうプロメテが、クシャミをしていた。身を呈して放水からオレを守ってくれたせいで、びしょ濡れなのだ。
そんな濡れたプロメテの頭を、ディーネはわしゃわしゃとナでていた。
「御心配には及びませんよ。あとの処理はお任せくださいませ。みなさんは、どこか適当な場所で休んでいてください」
ディーネは、笑みを濃くして言葉をつづける。
「すでに手回しは済んでいます。この程度の痛手で、国を乗っ取れるなら安いものです」
王都にも《紅蓮教》の教会が必要になりますよ、とディーネはそう話をむすんだ。
張りつけにされている者たちを、解放していった。
みんな手首足首を縛られているというだけで、目立った外傷はなかった。
ただディーネだけは頬に痣ができていた。よくよく見てみると、爪もはがれている。もしかすると、オレたちが助けに来るまでのあいだに、拷問のようなものを受けたのかもしれない。
「おやおや。私はまだ生きているようですね」
ディーネが目を覚ましたようで、チカラなく笑ってそう言った。
ディーネは張りつけから解放された後、仰向けに寝かされていたのだが、余力をふりしぼるようにして上体を起こしていた。
「まだ動かないほうが良い。けっこう外傷が酷いようだ」
「いえ。この程度、たいしたことはありませんよ。しかしこうも早く助けに来てくれるとは思いませんでしたよ」
ディーネはみずからの頬を指でつまむような仕草をして見せた。おそらくいつもの癖で付けヒゲを引っ張ろうとしたのだろう。が、今はその付けヒゲがなかった。ディーネはやり場を失ったその手で頭をカいていた。
「助けに来ることは、想定済みだったのか」
「魔神さまなら来てくれるだろうと思っていましたよ」
「どこまで計画通りだったんだ」
正直、こっちは死ぬかもしれない綱渡りだったがな――と、オレはチクリと皮肉を一言つけくわえた。
このディーネである。
連れ去られるぐらいの想定はしていたはずだ――と思うのだ。
ふふ、とディーネは小さく笑った。
「悪く思わないでくださいよ。実際、ロードリ公爵がこれほど素早く手を出してくるとは思っていなかったんですよ」
と、ディーネは肩をすくめた。
「でも、オレたちが助けに来ることは想定済みだったんだろ」
「まぁ、計画がすこし早まったという感じでしょうかね。自分で言うのもなんですが、大局ばかり見て小事を見落とすことはあるものですよ」
「そうか」
「ロードリ公爵のような小物のことなんて、眼中にありませんでしたからね。見事に出し抜かれました。まぁ、メデュ公爵やゲイルなどの予防線は残しておりましたがね」
「それは見事な布石だった」
実際、今回の救出劇に、ゲイルとメデュのふたりはおおいに役立ってくれた。
「魔神さまにホめていただくとは、光栄なことです」
「よく言うよ」
魔神として存在しているから、ディーネはオレを敬ってくれている。だが、仮にオレは人間だったならば、ディーネの足元にも及ばないだろうと思うのだ。
「しかしおかげで計画が早まった」
と、ディーネは立ち上がった。
「まだ立たないほうが良いんじゃないか?」
強がっていてもディーネからは憔悴が感じられた。頬はこけているし、目の下にはクマが出来ている。
「いえ。今こそ奮起するときですよ。魔神さまが王都に入った。この勢いに乗じて、やるべきことをやらなくては。私の計画はそこにある」
「計画?」
瞬間。
ディーネの口角は、これまでに見たことないほど吊り上った。
ゾッとするような笑みだった。
その碧眼に、青い炎が灯るのをオレは見逃さなかった。
「セパタ王国の国王を討つ。そして今回の作戦立案者であるロードリの首を刎ねる」
「過激だな」
「征服者は、残酷さを発揮するときを躊躇うべきではありません。いまこそ一気呵成に事を運ぶ好機。意味がわかりますか? 今こそ《紅蓮教》を国教とする国家建国のときなのですよ」
「建国だと?」
「ええ。魔神さまの威光は示された。今が最大の好機です」
へくち――と、おそらく話の意味をわかっていないであろうプロメテが、クシャミをしていた。身を呈して放水からオレを守ってくれたせいで、びしょ濡れなのだ。
そんな濡れたプロメテの頭を、ディーネはわしゃわしゃとナでていた。
「御心配には及びませんよ。あとの処理はお任せくださいませ。みなさんは、どこか適当な場所で休んでいてください」
ディーネは、笑みを濃くして言葉をつづける。
「すでに手回しは済んでいます。この程度の痛手で、国を乗っ取れるなら安いものです」
王都にも《紅蓮教》の教会が必要になりますよ、とディーネはそう話をむすんだ。
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