《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
23-1.中庭戦
内郭中庭――。
日本の城で言うならば天守閣。西洋風に言うならば主塔が夜空に向かってそびえ立っていた。
その足元にて、23の十字架が立てられていた。十字架には人が張りつけられているのが見て取れる。
ディーネに与していた貴族が22人いたと聞いているから、そのなかにディーネがいるとするなら数は合う。
十字架のひとつ。ディーネの姿を見つけた。
オレはホッと胸をナでおろした。
ようやっとディーネのもとにたどり着いたという一呼吸と、ディーネがまだ無事そうだという安心のふたつの安堵だった。
ディーネは意識を失っているらしい。だが、張りつけと言っても、べつに手首に釘を打ち込まれていることもなさそうだ。
まだ処刑が行われていないということは、おそらくは命も無事のはずだ。
が、ふたたび気が引き締めることになった。
ディーネは多くの兵隊に囲まれていた。王都の兵隊だ。
それにディーネの首にはナイフが突きつけられていた。
ナイフを突きつけているのはオハルだ。
「そ、それ以上、近づかないでください。この女の命はありませんよ」
「卑怯な」
「卑怯? 邪教の神がよくそんなことを言えますね」
ディーネを人質にとったことで、すこし余裕を取り戻したのか、オハルの口調から動揺が薄れていた。
ただ、それは自然に落ち着いたというよりかは、オハルが強引に冷静さを取り戻そうとしているようにも見えた。
「そこに捕えられている者たちを解放してもらいたい。そうすれば、お前たちの命までは奪わないことを約束する」
「それは出来ません」
「なに?」
「この女の腹の中は、獣を食らわんとする獅子が眠っている。事実、この女はセパタ王国の貴族たちを誑かして、《紅蓮教》に取り込もうとしていた」
いや、それだけじゃない――とオハルは続けた。
「この女は、《紅蓮教》を大きくした後に、《光神教》を破壊しようという腹積もりに違いありません」
「……」
たしかにディーネがいったいどこに向かおうとしているのかは、オレですら見えないところがある。
世界征服でも企んでいるのかもしれない。
しかしディーネが何を企んでいようと、オレにとったは恩人だ。
助けないわけにはいかない。
「生かして帰すわけにはいかない。ここで私が《紅蓮教》の勢いを止める必要があるんですよ」
オハルは眉間にグッとシワを寄せてそう言った。そうすると、オハルの眉間にある十字のヤケド跡が歪んだ。
このゲス野郎が――と、レイアがクロスボウを構えていた。
「動くな! もしすこしでも動いてみろ、処刑実行の前にナイフが彼女の首をえぐることになりますよ」
ディーネの首が浅く切られた。その首から血が滴り落ちているさまが、オレのところからもハッキリと見て取ることが出来た。
レイアさんッ、とタルルが咎める声を発した。
ディーネの補佐官であるタルルは、誰よりもディーネの身柄が心配なのだろう。レイアは仕方がないと言うように、その場にクロスボウを投げ捨てていた。
「《聖白騎士団》! あの邪教の神に放水を開始せよッ」
歩廊に配備されていた《聖白騎士団》がタリスマンから、水を放出させた。その水がオレめがけて打ちつけられることになった。
「……ッ」
水は冷たかったが、それ以上に、オレのカラダからチカラを奪う効果があった。
天使が使う魔力を奪う剣に斬られたときと、感覚が似ている。
タリスマンから発せられている水ゆえ、なにか特別なチカラが秘められているのかもしれない。
血をしぶく代わりに、オレはカラダから水蒸気を吹き上げることになった。気炎万丈のチカラを保っていられなくなった。
オレのカラダが小さく縮んでいくにつれて、あたりが暗闇につつまれてゆくことになった。
水蒸気によって、白くけぶった暗闇となった。まるで霧につつまれているかのようだ。
「よし。その調子だ。このまま魔神を消し去ってしまいなさい!」
と、オハルが言った。
抵抗したいのだが、いかんせんディーネを人質に取られている以上は、下手に動くことは出来ない。
日本の城で言うならば天守閣。西洋風に言うならば主塔が夜空に向かってそびえ立っていた。
その足元にて、23の十字架が立てられていた。十字架には人が張りつけられているのが見て取れる。
ディーネに与していた貴族が22人いたと聞いているから、そのなかにディーネがいるとするなら数は合う。
十字架のひとつ。ディーネの姿を見つけた。
オレはホッと胸をナでおろした。
ようやっとディーネのもとにたどり着いたという一呼吸と、ディーネがまだ無事そうだという安心のふたつの安堵だった。
ディーネは意識を失っているらしい。だが、張りつけと言っても、べつに手首に釘を打ち込まれていることもなさそうだ。
まだ処刑が行われていないということは、おそらくは命も無事のはずだ。
が、ふたたび気が引き締めることになった。
ディーネは多くの兵隊に囲まれていた。王都の兵隊だ。
それにディーネの首にはナイフが突きつけられていた。
ナイフを突きつけているのはオハルだ。
「そ、それ以上、近づかないでください。この女の命はありませんよ」
「卑怯な」
「卑怯? 邪教の神がよくそんなことを言えますね」
ディーネを人質にとったことで、すこし余裕を取り戻したのか、オハルの口調から動揺が薄れていた。
ただ、それは自然に落ち着いたというよりかは、オハルが強引に冷静さを取り戻そうとしているようにも見えた。
「そこに捕えられている者たちを解放してもらいたい。そうすれば、お前たちの命までは奪わないことを約束する」
「それは出来ません」
「なに?」
「この女の腹の中は、獣を食らわんとする獅子が眠っている。事実、この女はセパタ王国の貴族たちを誑かして、《紅蓮教》に取り込もうとしていた」
いや、それだけじゃない――とオハルは続けた。
「この女は、《紅蓮教》を大きくした後に、《光神教》を破壊しようという腹積もりに違いありません」
「……」
たしかにディーネがいったいどこに向かおうとしているのかは、オレですら見えないところがある。
世界征服でも企んでいるのかもしれない。
しかしディーネが何を企んでいようと、オレにとったは恩人だ。
助けないわけにはいかない。
「生かして帰すわけにはいかない。ここで私が《紅蓮教》の勢いを止める必要があるんですよ」
オハルは眉間にグッとシワを寄せてそう言った。そうすると、オハルの眉間にある十字のヤケド跡が歪んだ。
このゲス野郎が――と、レイアがクロスボウを構えていた。
「動くな! もしすこしでも動いてみろ、処刑実行の前にナイフが彼女の首をえぐることになりますよ」
ディーネの首が浅く切られた。その首から血が滴り落ちているさまが、オレのところからもハッキリと見て取ることが出来た。
レイアさんッ、とタルルが咎める声を発した。
ディーネの補佐官であるタルルは、誰よりもディーネの身柄が心配なのだろう。レイアは仕方がないと言うように、その場にクロスボウを投げ捨てていた。
「《聖白騎士団》! あの邪教の神に放水を開始せよッ」
歩廊に配備されていた《聖白騎士団》がタリスマンから、水を放出させた。その水がオレめがけて打ちつけられることになった。
「……ッ」
水は冷たかったが、それ以上に、オレのカラダからチカラを奪う効果があった。
天使が使う魔力を奪う剣に斬られたときと、感覚が似ている。
タリスマンから発せられている水ゆえ、なにか特別なチカラが秘められているのかもしれない。
血をしぶく代わりに、オレはカラダから水蒸気を吹き上げることになった。気炎万丈のチカラを保っていられなくなった。
オレのカラダが小さく縮んでいくにつれて、あたりが暗闇につつまれてゆくことになった。
水蒸気によって、白くけぶった暗闇となった。まるで霧につつまれているかのようだ。
「よし。その調子だ。このまま魔神を消し去ってしまいなさい!」
と、オハルが言った。
抵抗したいのだが、いかんせんディーネを人質に取られている以上は、下手に動くことは出来ない。
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