《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
20-2.……その懊悩の答え
「あの、魔神さま」
と、プロメテが口をはさんだ。
「どうした?」
「このゲイルという人が、ホントウに信用できるのか、判別する方法があります」
「良い方法が?」
「これを使えば一発でわかります」
そう言って、プロメテが取り出したのは、小さなカンテラだった。親指ぐらいの大きさしかないホントウに小さなカンテラだった。
「それは?」
「実は、ドワーフのヴァルさんに作っていただいていたのです。カンテラのアクセサリーです」
「しかしそんなもので、どうやって……」
「今から私が、このカンテラに魔法を施します。そうすればこのカンテラはタリスマンになります」
プロメテは強い語調でつづけた。
「タリスマンからチカラを引き出すのに必要なのは、信仰心です。もしもホントウに魔神さまを信仰する決意があるならば、タリスマンのチカラを使うことが出来るはずです」
「でも、良いのか?」
プロメテは、タリスマンを作りたくないと言っていた。
あの落とされた穴底で、プロメテの真意を聞いた。
タリスマンから火を発することによって、プロメテが周囲から必要とされなくなる。それが怖いと言っていた。
そんなことはない――とオレは言ったし、今でも思っている。が、プロメテが厭だと言うのなら、強引にタリスマンを作らせようとは思わなかった。
「決意はできています」
と、プロメテの白銀の目に、ひときわ強い光が宿された。
「べつにムリして作ることはないんだよ」
タリスマンを作るには、魔法による加工が必要だと言っていた。魔法を使いたくないというのも、プロメテの本心のはずだ。
今まで、プロメテが魔法を使う場面を、見たことがないのだから。
「私はもう、自分の愚かさで、魔神さまを危険にさらすわけにはいかないのです。いつまでも甘えているわけにはいきません。たまには私が魔神さまの助けになりたいのです」
あの落とし穴で、プロメテは自分の身を犠牲にして、オレのことを助けようとしてくれた。あのときの勇姿を、オレは決して忘れない。
「助けてばかりじゃない。助けられてもいるさ」
「魔神さまはお優しいのです。ですが、その優しさに甘えているばかりでは、私自身が自分を許せないのですよ」
プロメテはそう言うと、その小さなカンテラを両手の掌に置いた。プロメテの小さな手が青白く光った。
おおっ――と、修道士たちがドヨめいた。
オルフェス最後の魔術師と呼ばれるだけあって、やはり魔法を使えたのだ。プロメテの手の光は、カンテラのなかに収束していった。
「これで完成しました。このカンテラは、タリスマンとして機能します。信仰心があるならば、炎を発することが出来るはずです」
プロメテはそう言って、かしずいているゲイルに渡した。
ゲイルはそのカンテラを受け取った。
「これが《紅蓮教》のタリスマンか……」
と、ゲイルはしげしげと、そのカンテラを見つめていた。
「使い方はわかりますか?」
「わかるとも。もともと《光神教》のタリスマンを使っていたんだからな。しかし、タリスマンでオレの信仰心を試すとはね。たしかにこれがイチバン賢いやり方だ」
「魔神さまに命を捧げる覚悟があるならば、そのタリスマンのチカラを引き出して見せてください」
「おうよ」
ゲイルはそう言うと、カンテラを握りしめ瞑目していた。
しばしの静寂。
レイアとエイブラハングも言い争いをやめて、ゲイルの顛末を見つめていた。
ほかの修道士もしわぶき1つ声を発することはなかった。
雨の降る音だけが、静かに聞こえていた。
刹那。
「熱ッ」
と、ゲイルはタリスマンを落とした。カランコロン。金属音が鳴りひびいた。転がり落ちたタリスマンは炎を宿していた。
「これでどうだい? 信じてくれたかね?」
と、ゲイルはまるで水を払うかのように、手を振りながら言った。熱かったのだろう。
はい、とプロメテはうなずいた。
「魔神さま。タリスマンを欺くことは出来ません。このゲイル・ガーディス。この先、心変わりすることがなければ、信用できます。私の命にかけて」
「わかった」
プロメテが導き出してくれた結果だ。さすがにそこまで疑おうとは思わない。
「我が魂を捧げますよ。魔神さま」
と、ゲイルはもう一度、その場にかしずいたのだった。
ゲイルの発動させたタリスマンは、まだ火を宿して床に転がっていた。その火がおさまったときに、プロメテが拾いあげた。
『さすがプロメテ大司教さまッ』
と、修道士の誰かが声をあげた。
『タリスマンを作ることが出来たのですねッ』
『どうか我らにも、タリスマンを授けてくださいませ』
と、次々と声が上がることになった。
魔法を使うことで周囲を怯えさせることもなければ、プロメテがないがしろにされることもなさそうだ。
プロメテは照れ臭そうに、修道士たちをいさめていた。
修道士たちに囲まれているプロメテを見て、ひとつ気づいたことがある。
チョットだけ背が伸びたように見えたのである。
と、プロメテが口をはさんだ。
「どうした?」
「このゲイルという人が、ホントウに信用できるのか、判別する方法があります」
「良い方法が?」
「これを使えば一発でわかります」
そう言って、プロメテが取り出したのは、小さなカンテラだった。親指ぐらいの大きさしかないホントウに小さなカンテラだった。
「それは?」
「実は、ドワーフのヴァルさんに作っていただいていたのです。カンテラのアクセサリーです」
「しかしそんなもので、どうやって……」
「今から私が、このカンテラに魔法を施します。そうすればこのカンテラはタリスマンになります」
プロメテは強い語調でつづけた。
「タリスマンからチカラを引き出すのに必要なのは、信仰心です。もしもホントウに魔神さまを信仰する決意があるならば、タリスマンのチカラを使うことが出来るはずです」
「でも、良いのか?」
プロメテは、タリスマンを作りたくないと言っていた。
あの落とされた穴底で、プロメテの真意を聞いた。
タリスマンから火を発することによって、プロメテが周囲から必要とされなくなる。それが怖いと言っていた。
そんなことはない――とオレは言ったし、今でも思っている。が、プロメテが厭だと言うのなら、強引にタリスマンを作らせようとは思わなかった。
「決意はできています」
と、プロメテの白銀の目に、ひときわ強い光が宿された。
「べつにムリして作ることはないんだよ」
タリスマンを作るには、魔法による加工が必要だと言っていた。魔法を使いたくないというのも、プロメテの本心のはずだ。
今まで、プロメテが魔法を使う場面を、見たことがないのだから。
「私はもう、自分の愚かさで、魔神さまを危険にさらすわけにはいかないのです。いつまでも甘えているわけにはいきません。たまには私が魔神さまの助けになりたいのです」
あの落とし穴で、プロメテは自分の身を犠牲にして、オレのことを助けようとしてくれた。あのときの勇姿を、オレは決して忘れない。
「助けてばかりじゃない。助けられてもいるさ」
「魔神さまはお優しいのです。ですが、その優しさに甘えているばかりでは、私自身が自分を許せないのですよ」
プロメテはそう言うと、その小さなカンテラを両手の掌に置いた。プロメテの小さな手が青白く光った。
おおっ――と、修道士たちがドヨめいた。
オルフェス最後の魔術師と呼ばれるだけあって、やはり魔法を使えたのだ。プロメテの手の光は、カンテラのなかに収束していった。
「これで完成しました。このカンテラは、タリスマンとして機能します。信仰心があるならば、炎を発することが出来るはずです」
プロメテはそう言って、かしずいているゲイルに渡した。
ゲイルはそのカンテラを受け取った。
「これが《紅蓮教》のタリスマンか……」
と、ゲイルはしげしげと、そのカンテラを見つめていた。
「使い方はわかりますか?」
「わかるとも。もともと《光神教》のタリスマンを使っていたんだからな。しかし、タリスマンでオレの信仰心を試すとはね。たしかにこれがイチバン賢いやり方だ」
「魔神さまに命を捧げる覚悟があるならば、そのタリスマンのチカラを引き出して見せてください」
「おうよ」
ゲイルはそう言うと、カンテラを握りしめ瞑目していた。
しばしの静寂。
レイアとエイブラハングも言い争いをやめて、ゲイルの顛末を見つめていた。
ほかの修道士もしわぶき1つ声を発することはなかった。
雨の降る音だけが、静かに聞こえていた。
刹那。
「熱ッ」
と、ゲイルはタリスマンを落とした。カランコロン。金属音が鳴りひびいた。転がり落ちたタリスマンは炎を宿していた。
「これでどうだい? 信じてくれたかね?」
と、ゲイルはまるで水を払うかのように、手を振りながら言った。熱かったのだろう。
はい、とプロメテはうなずいた。
「魔神さま。タリスマンを欺くことは出来ません。このゲイル・ガーディス。この先、心変わりすることがなければ、信用できます。私の命にかけて」
「わかった」
プロメテが導き出してくれた結果だ。さすがにそこまで疑おうとは思わない。
「我が魂を捧げますよ。魔神さま」
と、ゲイルはもう一度、その場にかしずいたのだった。
ゲイルの発動させたタリスマンは、まだ火を宿して床に転がっていた。その火がおさまったときに、プロメテが拾いあげた。
『さすがプロメテ大司教さまッ』
と、修道士の誰かが声をあげた。
『タリスマンを作ることが出来たのですねッ』
『どうか我らにも、タリスマンを授けてくださいませ』
と、次々と声が上がることになった。
魔法を使うことで周囲を怯えさせることもなければ、プロメテがないがしろにされることもなさそうだ。
プロメテは照れ臭そうに、修道士たちをいさめていた。
修道士たちに囲まれているプロメテを見て、ひとつ気づいたことがある。
チョットだけ背が伸びたように見えたのである。
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