《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
16-4.神の下で
魔神アラストルと3大神が闘っている間のことーー……
(なんつー戦いだよ)
と、ゲイルは3大神と魔神の戦いを見ていた。
3大神が剣を振るい、魔神がそのコブシを叩きこむ。
剣が振るわれるたびに、突風が巻き起こる。コブシが振るわれるたびに、熱風が吹き荒れるのだった。
(まぁ、当たり前か)
とも思う。
なにせ人と人の戦いではないのだ。
これは、神の対決。
神話なのだ。
(しかしマズイんじゃないかね。これは)
と、焦燥をおぼえる。
3大神エクスカエルのほうが押されているように見えるのだ。さっきから何度か地面に叩き伏せられている。
神はその信仰心によってチカラを得る。魔神にチカラを与えているのもまた、信者たちだ。そのもっとも大きな影響を及ぼしているのが、
(あの魔術師か)
と、見据えた。
魔神の背後で祈るように両手をからませていた。
ならば――。
「《聖白騎士団》はオレにつづけ、あの女を殺れば、魔神の強さは弱体化するはずだッ」
と、ゲイルは馬にまたがった。
「おっと、貴様らの相手は私だ」
と、立ちはだかったものがいる。黒い髪の女だった。その手には槍を持っていた。穂先が《輝光石》になっているようだ。
「てめェは?」
「私はS級黒狩人のエイブラハングだ」
「S級だと……」
その証拠に、エイブラハングは証明石を見せつけてきた。その証明石には、たしかにS級の証であるドラゴンの絵が彫り込まれていた。
世界でたったの3人しかいないという、黒狩人のエキスパートのひとりだ。
「私の故郷は、ソマ帝国に滅ぼされたことがあってな。貴様たちには個人的な恨みがある」
「だからって、異教徒に成り下がったか」
「恨みから《紅蓮教》に入ったわけではない。私は魔神さまに救われたのだ。今も魔神さまなしでは、生きていけぬ」
《紅蓮教》は、これほどの人物をすでに抱きこんでいる。それは看過できないことだった。
今の内に《紅蓮教》を叩いておかなければ、後々、厄介なことになる。ゲイルはそう直感した。
魔神のコブシが、3大神を殴り飛ばしていた。殴られた3大神は大きな跳ね飛ばされていた。地面に叩きつけられた衝撃によって、地揺れが起こっていた。
「S級だろうと、たった1人で《聖白騎士団》に勝てはしまい」
「1人ではない」
「ドワーフどもと戦うつもりか? 連中は非戦闘員だろ」
ドワーフたちもまた、みずからを守ってくれる存在と見込んだのか、魔神を応援しているようだった。
その応援が、さらにいっそう魔神を強くする。早く片付けなければならない。
「そうではない」
「なに?」
瞬間。
馬蹄の音が響いていた。
どこからか――。
側面。
森の中から斬りかかってくる人物がいた。幸か不幸か、魔神のおかげで当たり一帯は明るくなっている。おかげでその奇襲にも気づくことが出来た。
咄嗟に馬から跳び下りることで、その一撃をかわすことが出来た。
「お初にお目にかかります。私はディーネ。都市シェークスの領主をやらせていただいております」
「……ッ」
絶句である。
ディーネならば今は、ドワーフの里にて戦の指揮を執っているはずだ。北の郭からの攻めは失敗したものの、城攻めそのものは、まだ続けているはずだ。
(いや)
違う。
「あんたが、ここにいるってことは、城を攻めていた部隊を追い返したってことか」
「ええ。すでにこのあたりは私の手勢に包囲させています。あなたに逃げ場はありませんよ。ゲイル大隊長どの」
「そいつァ、やられちまったなァ。しかしオレがここにいるって、良くわかったな」
「これだけ派手な戦いが行われているのですから、世界の果てにいたってわかりますよ」
と、ディーネは、3大神と魔神のほうを見た。
「それもそうか」
これが――青ヒゲの伯爵か、とあらためてゲイルはディーネのことを見つめた。
なぜか付けヒゲをつけていた。それが青ヒゲ伯爵と呼ばれるゆえんなのだろう。しかしフザケているようで、その実、知恵は回るのだ。この戦でも、見事にしてやられた。
(このオレが完敗か……)
こんな女にしてやられたのだと思うと、悔しいを通り越して笑いをコボれる。
「完敗だ。投降しよう」
と、ゲイルは両手をあげた。
死を覚悟して特攻しようとなんて覇気は、ゲイルにはなかった。命あってのシロモノである。
「セパタ王国では捕虜は丁重にあつかう決まりになっているので、安心して投降してください。魔神さまのほうも、決着がついたようです」
と、ディーネは楽しげに言った。
見上げる。
ゲイルの召喚した3大神エクスカエルのカラダが、闇に吠えるかのように燃え上がっていた。そのカラダは灰となって霧散していた。
(まさかねぇ……)
と、ゲイルは震えた。
この世界においてゼッタイと思われた《光神教》。その一角が今、崩されたのである。その衝撃がゲイルを震わせたのだった。
(なんつー戦いだよ)
と、ゲイルは3大神と魔神の戦いを見ていた。
3大神が剣を振るい、魔神がそのコブシを叩きこむ。
剣が振るわれるたびに、突風が巻き起こる。コブシが振るわれるたびに、熱風が吹き荒れるのだった。
(まぁ、当たり前か)
とも思う。
なにせ人と人の戦いではないのだ。
これは、神の対決。
神話なのだ。
(しかしマズイんじゃないかね。これは)
と、焦燥をおぼえる。
3大神エクスカエルのほうが押されているように見えるのだ。さっきから何度か地面に叩き伏せられている。
神はその信仰心によってチカラを得る。魔神にチカラを与えているのもまた、信者たちだ。そのもっとも大きな影響を及ぼしているのが、
(あの魔術師か)
と、見据えた。
魔神の背後で祈るように両手をからませていた。
ならば――。
「《聖白騎士団》はオレにつづけ、あの女を殺れば、魔神の強さは弱体化するはずだッ」
と、ゲイルは馬にまたがった。
「おっと、貴様らの相手は私だ」
と、立ちはだかったものがいる。黒い髪の女だった。その手には槍を持っていた。穂先が《輝光石》になっているようだ。
「てめェは?」
「私はS級黒狩人のエイブラハングだ」
「S級だと……」
その証拠に、エイブラハングは証明石を見せつけてきた。その証明石には、たしかにS級の証であるドラゴンの絵が彫り込まれていた。
世界でたったの3人しかいないという、黒狩人のエキスパートのひとりだ。
「私の故郷は、ソマ帝国に滅ぼされたことがあってな。貴様たちには個人的な恨みがある」
「だからって、異教徒に成り下がったか」
「恨みから《紅蓮教》に入ったわけではない。私は魔神さまに救われたのだ。今も魔神さまなしでは、生きていけぬ」
《紅蓮教》は、これほどの人物をすでに抱きこんでいる。それは看過できないことだった。
今の内に《紅蓮教》を叩いておかなければ、後々、厄介なことになる。ゲイルはそう直感した。
魔神のコブシが、3大神を殴り飛ばしていた。殴られた3大神は大きな跳ね飛ばされていた。地面に叩きつけられた衝撃によって、地揺れが起こっていた。
「S級だろうと、たった1人で《聖白騎士団》に勝てはしまい」
「1人ではない」
「ドワーフどもと戦うつもりか? 連中は非戦闘員だろ」
ドワーフたちもまた、みずからを守ってくれる存在と見込んだのか、魔神を応援しているようだった。
その応援が、さらにいっそう魔神を強くする。早く片付けなければならない。
「そうではない」
「なに?」
瞬間。
馬蹄の音が響いていた。
どこからか――。
側面。
森の中から斬りかかってくる人物がいた。幸か不幸か、魔神のおかげで当たり一帯は明るくなっている。おかげでその奇襲にも気づくことが出来た。
咄嗟に馬から跳び下りることで、その一撃をかわすことが出来た。
「お初にお目にかかります。私はディーネ。都市シェークスの領主をやらせていただいております」
「……ッ」
絶句である。
ディーネならば今は、ドワーフの里にて戦の指揮を執っているはずだ。北の郭からの攻めは失敗したものの、城攻めそのものは、まだ続けているはずだ。
(いや)
違う。
「あんたが、ここにいるってことは、城を攻めていた部隊を追い返したってことか」
「ええ。すでにこのあたりは私の手勢に包囲させています。あなたに逃げ場はありませんよ。ゲイル大隊長どの」
「そいつァ、やられちまったなァ。しかしオレがここにいるって、良くわかったな」
「これだけ派手な戦いが行われているのですから、世界の果てにいたってわかりますよ」
と、ディーネは、3大神と魔神のほうを見た。
「それもそうか」
これが――青ヒゲの伯爵か、とあらためてゲイルはディーネのことを見つめた。
なぜか付けヒゲをつけていた。それが青ヒゲ伯爵と呼ばれるゆえんなのだろう。しかしフザケているようで、その実、知恵は回るのだ。この戦でも、見事にしてやられた。
(このオレが完敗か……)
こんな女にしてやられたのだと思うと、悔しいを通り越して笑いをコボれる。
「完敗だ。投降しよう」
と、ゲイルは両手をあげた。
死を覚悟して特攻しようとなんて覇気は、ゲイルにはなかった。命あってのシロモノである。
「セパタ王国では捕虜は丁重にあつかう決まりになっているので、安心して投降してください。魔神さまのほうも、決着がついたようです」
と、ディーネは楽しげに言った。
見上げる。
ゲイルの召喚した3大神エクスカエルのカラダが、闇に吠えるかのように燃え上がっていた。そのカラダは灰となって霧散していた。
(まさかねぇ……)
と、ゲイルは震えた。
この世界においてゼッタイと思われた《光神教》。その一角が今、崩されたのである。その衝撃がゲイルを震わせたのだった。
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