《完結》転生したら、火、だった件。迫害された魔術師ちゃんが、魔神さまと崇めてきます。神なら信者を作っちゃおうぜ!
3-1.期待を裏切る暴力
「心配した。セッカクの火を盗まれてしまったのかと思った」
騎士のひとりがそう言った。
その騎士は、みずからを小隊長だと名乗った。
奪われたオレを取り返すべく、騎士小隊を編成していたようだった。
「いえ。盗まれたわけではありません。チャント返してくださいましたから」
と、プロメテはかぶりを振った。
「よく注意しておくことだ。この魔神さまを狙う輩はきっと多いのだからな」
そう言うのなら、お前らもすこしは警戒しておけよ、と言いたい。まぁ、盗まれた当人が言えることでもないし、オレは黙っていた。
騎士たちも、物珍しげにオレのことを見つめてきた。「すこし分けてくれよ」「貰い火ぐらい良いだろ」と言ってきた。
べつにオレは構わなかったのだが、小隊長がそれをはばんだ。
「よせよせ。領主さまの許可がおりてからだ。まずは領主さまに許可をいただき、聖火台に火を灯す。話はそれからだ」
とのことだ。
オレに群がってきた騎士たちは、しぶしぶといった様子で身を引いていた。
「申し訳ありません」
と、なぜかプロメテが恐縮していた。
「さあ。こっちへ来るんだ。領主さまが、魔神の火をご覧になりたいそうだ。失礼のないようにな」
と、小隊長によってオレたちは、城のなかへと導かれることになったのだ。
跳ね橋を通り、中庭を抜けた。
そして城の中に入る。
城の通路には、等間隔で《輝光石》が配置されていた。オレがいないときは、その明かりを頼りに歩くのだろう。
「しかし、すごいな。魔神の火は。ずっと暗闇で生きてきたオレにとっては、明るすぎるぐらいだ」
と、小隊長は言った。
べつに会話がはずむことなく、小隊長は速足で進んだ。足が速いというか、大股なのだ。
プロメテは小走りで、それに付いて行った。小走りでも、カンテラがあまり揺れないように配慮してくれた。
「チョット気になったんだが」
と、オレは小声でプロメテに尋ねた。
「なんでしょうか」
「あの小隊長さんの腰にある剣は、どういう素材なんだ? 火がないなら、剣とか防具も作れないと思うんだが」
あの小隊長だけではない。騎士たちは、腰に剣をさしていた。
「昔は、鍛冶によって武具を製造していたそうですが、火がなくなってから、それが出来なくなりました」
「だろうな」
「剣や防具、それに食器なんかは、植物で作ります」
「植物でできるのか?」
「鉄鋼樹脂と呼ばれるものがあります。樹脂から武具が作れるのです。あ、魔神さまの入っておられるカンテラも、同じ材質のものなのです」
「なるほど」
窓ガラスもそうだが、緑がかったものが多いと思っていた。どうやらこれは鉄鋼樹脂と呼ばれる材質のようだ。
環境が変わることによって、世界もそれに合わせて、いろいろと変化を起こしているのかもしれない。
あるいは異世界だから――だろうか。鉄の樹脂に、光る鉱石。どちらもオレには馴染のないものである。
「なにをコソコソと話しているか」
と、小隊長が鋭い声を飛ばしてきた。
プロメテは怖がるように肩をすくめていた。話を切り出したのはオレだったので、申し訳ない気持ちになった。
ほかにも色々と気になることがあったのだけれど、また注意されるかもしれない。迂闊に質問できなかった。
「ここだ」
と、廊下の突き当たりにあったトビラを、小隊長が開けた。アゴをしゃくって、中に入るように促してきた。
プロメテはそれに従って、部屋に入った。
部屋――というか物置のようだった。木箱やら木樽が摘まれていた。そこに5人の男たちがいた。みんな騎士なのだろう。
オレたちを先導してくれていた小隊長は、部屋に入るとそのトビラを閉めた。部屋にいた5人の騎士は、プロメテのことを取り囲んだ。
何か――。
不穏な感じがした。
「えっと、えっと……」
と、プロメテは困惑していた。
「油断するなよ。ガキに見えるが、これでもオルフェス最後の魔術師だ」
小隊長がそう言った。
騎士のひとりが、棒でプロメテの脇腹を打った。それはあまりに躊躇のない一撃だった。プロメテは「うっ」とうめくと、オレを手放した。
カンテラに入れられたオレは床に転がり落ちたけれど、すぐに騎士のひとりに持ち上げられた。
「おい、なにをしている!」
と、オレは怒鳴った。
騎士たちは寄ってたかって、プロメテのことを打ち据えていた。
プロメテはうずくまってしまっている。
「おっと、魔神さまはこちらに」
オレの入っているカンテラは、小隊長によって、その部屋から運び出されることになった。
プロメテが残された物置部屋からは、肉の打つ音がひびいていた。
「これは、どういうことだ?」
「見ての通りですよ。魔神さまのおチカラは必要ですが、あの魔術師は必要ないですからね」
「なに? プロメテが必要ない?」
不意の暴力に、オレの理解が追いつかなかった。
「おそらくすぐに理解してもらえますよ。さあさあ、魔神さまは領主さまのもとに」
「おい、よせ。それ以上プロメテに手出ししたら、オレが許さんぞ」
許さん、と言っても、オレに何が出来るのか。 ただのコケオドシである。
「心配ありません。すこし打ち据えただけ、殺すつもりはありませんよ」
騎士のひとりがそう言った。
その騎士は、みずからを小隊長だと名乗った。
奪われたオレを取り返すべく、騎士小隊を編成していたようだった。
「いえ。盗まれたわけではありません。チャント返してくださいましたから」
と、プロメテはかぶりを振った。
「よく注意しておくことだ。この魔神さまを狙う輩はきっと多いのだからな」
そう言うのなら、お前らもすこしは警戒しておけよ、と言いたい。まぁ、盗まれた当人が言えることでもないし、オレは黙っていた。
騎士たちも、物珍しげにオレのことを見つめてきた。「すこし分けてくれよ」「貰い火ぐらい良いだろ」と言ってきた。
べつにオレは構わなかったのだが、小隊長がそれをはばんだ。
「よせよせ。領主さまの許可がおりてからだ。まずは領主さまに許可をいただき、聖火台に火を灯す。話はそれからだ」
とのことだ。
オレに群がってきた騎士たちは、しぶしぶといった様子で身を引いていた。
「申し訳ありません」
と、なぜかプロメテが恐縮していた。
「さあ。こっちへ来るんだ。領主さまが、魔神の火をご覧になりたいそうだ。失礼のないようにな」
と、小隊長によってオレたちは、城のなかへと導かれることになったのだ。
跳ね橋を通り、中庭を抜けた。
そして城の中に入る。
城の通路には、等間隔で《輝光石》が配置されていた。オレがいないときは、その明かりを頼りに歩くのだろう。
「しかし、すごいな。魔神の火は。ずっと暗闇で生きてきたオレにとっては、明るすぎるぐらいだ」
と、小隊長は言った。
べつに会話がはずむことなく、小隊長は速足で進んだ。足が速いというか、大股なのだ。
プロメテは小走りで、それに付いて行った。小走りでも、カンテラがあまり揺れないように配慮してくれた。
「チョット気になったんだが」
と、オレは小声でプロメテに尋ねた。
「なんでしょうか」
「あの小隊長さんの腰にある剣は、どういう素材なんだ? 火がないなら、剣とか防具も作れないと思うんだが」
あの小隊長だけではない。騎士たちは、腰に剣をさしていた。
「昔は、鍛冶によって武具を製造していたそうですが、火がなくなってから、それが出来なくなりました」
「だろうな」
「剣や防具、それに食器なんかは、植物で作ります」
「植物でできるのか?」
「鉄鋼樹脂と呼ばれるものがあります。樹脂から武具が作れるのです。あ、魔神さまの入っておられるカンテラも、同じ材質のものなのです」
「なるほど」
窓ガラスもそうだが、緑がかったものが多いと思っていた。どうやらこれは鉄鋼樹脂と呼ばれる材質のようだ。
環境が変わることによって、世界もそれに合わせて、いろいろと変化を起こしているのかもしれない。
あるいは異世界だから――だろうか。鉄の樹脂に、光る鉱石。どちらもオレには馴染のないものである。
「なにをコソコソと話しているか」
と、小隊長が鋭い声を飛ばしてきた。
プロメテは怖がるように肩をすくめていた。話を切り出したのはオレだったので、申し訳ない気持ちになった。
ほかにも色々と気になることがあったのだけれど、また注意されるかもしれない。迂闊に質問できなかった。
「ここだ」
と、廊下の突き当たりにあったトビラを、小隊長が開けた。アゴをしゃくって、中に入るように促してきた。
プロメテはそれに従って、部屋に入った。
部屋――というか物置のようだった。木箱やら木樽が摘まれていた。そこに5人の男たちがいた。みんな騎士なのだろう。
オレたちを先導してくれていた小隊長は、部屋に入るとそのトビラを閉めた。部屋にいた5人の騎士は、プロメテのことを取り囲んだ。
何か――。
不穏な感じがした。
「えっと、えっと……」
と、プロメテは困惑していた。
「油断するなよ。ガキに見えるが、これでもオルフェス最後の魔術師だ」
小隊長がそう言った。
騎士のひとりが、棒でプロメテの脇腹を打った。それはあまりに躊躇のない一撃だった。プロメテは「うっ」とうめくと、オレを手放した。
カンテラに入れられたオレは床に転がり落ちたけれど、すぐに騎士のひとりに持ち上げられた。
「おい、なにをしている!」
と、オレは怒鳴った。
騎士たちは寄ってたかって、プロメテのことを打ち据えていた。
プロメテはうずくまってしまっている。
「おっと、魔神さまはこちらに」
オレの入っているカンテラは、小隊長によって、その部屋から運び出されることになった。
プロメテが残された物置部屋からは、肉の打つ音がひびいていた。
「これは、どういうことだ?」
「見ての通りですよ。魔神さまのおチカラは必要ですが、あの魔術師は必要ないですからね」
「なに? プロメテが必要ない?」
不意の暴力に、オレの理解が追いつかなかった。
「おそらくすぐに理解してもらえますよ。さあさあ、魔神さまは領主さまのもとに」
「おい、よせ。それ以上プロメテに手出ししたら、オレが許さんぞ」
許さん、と言っても、オレに何が出来るのか。 ただのコケオドシである。
「心配ありません。すこし打ち据えただけ、殺すつもりはありませんよ」
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