ゆびきりげんまん、指切り相手は神様でした

かぐつち

第31話 箱との関係

「因みに、お主のその格好の原因も例の箱じゃぞ?」
お茶菓子のくまたぱんを食べ、お茶を飲んで居た所で、不思議な事を言い出した。
「エ?」
思わず聞き返す声が裏返った。
「前回出たのは30年前か、お主の親が未だ小さい頃じゃな、バブル崩壊やら、学生運動やら、赤軍やらハイジャックやら散々ごたついたころで、テロ組織がどっからともなく箱を手に入れて盛大に暴走させたもんだから、儂迄借り出されて大騒ぎに成ったんじゃ、その時にお主の両親も呪いの余波を被っておるから、大なり小なりお主の方に影響が有った筈じゃ」
「今更言われましても・・・・・」
正直、そんな事を言われてもピンと来ない。
「まあ、ピンと来ないのも当然だがな、極論儂の手際が悪かったせいも在るかも知れんぞ? 恨み言か何かあるか?」
恐らく泣き言か何かを言う物だと予想して居る様だが、自分としてはこの恰好については今更だ、不便は感じていない、増してや恨むような事も無い、其れに恐らく・・・
「呪いのお陰でこうして葛様と居られるのなら、恨む事も無いですね?」
恐らく、最初に死にかけた呪いが無ければ自分の様な末席が葛様と出会う事は無く、そうで無ければ幼少期に求婚して、其の求婚を受け入れられるような事も無く、増しては今の様に一緒にいられる事は無かった筈だ、おかしな話だが、下手すると箱に感謝しなければいけない様な幸運だったのじゃ無かろうか?
「お主の母親は当時死にかけたのじゃから、感謝する迄は行かんでもいいが、その心構えは上出来と言った所か、縁の巡り合わせに良いも悪いも無い、人の子はその時々で精一杯生きれば良いだけじゃ」
予定外の答えでは有るが、その答えは上出来だと褒められている、その眼は、もう少し有るじゃろう? と言った感じの期待感も含まれている様だ。
「えっと・・・・」
「ん?」
思わず何を言えば良いのかと思い、言葉に詰まるが、葛様は何故か期待感をいっぱいにして続きを促してきている。
「釣り合うように成る迄、一緒に居て下さい」
「居るだけかや? そもそもお主が釣り合うように成る迄待つのも面倒じゃし、何年かかるつもりじゃ? 今の段階で構わんと言っておるのじゃがな?」
葛様のニヤニヤとした笑みが深くなる。もっと何か言えと言って居る様だ。
「それじゃあ、結婚して下さい」
「籍入れは済んどるぞ?」
茶化し気味に返して来る。
「あの時にちゃんと言えなかった分の答えです」
あの時失礼にも日和って有耶無耶にしようとした答えを、改めて口にする。
「まだまだ修行が足りんが、まあ、上出来かのう?」
ほら来いと言う様子で葛様が手を広げた。
「えっと・・・」
抱きついて良いと言う事だろうか?
抱きつかれる事は有っても、自分から抱き着くような事は無かったので、自分から詰める距離感と言うのが意外と判らない。
「此処で手を出さんと言う方が問題じゃぞ? 玉無しでは無いんじゃろう?」
少し呆れ気味に挑発される。
「では・・・・」
一息に抱き着く、小さく柔らかく、何故か日向の匂いがする。
落ち着こうと深呼吸をすると、何故か強い眠気が押し寄せて来た。
何で・・・今頃・・・・・・


葛視点
因みに、補足させて貰うと、呼ばれるのが遅かったダケである、当時は今の様に毎日起きる様な生活はして居なかったので、本家の連中に金子と菓子を積んで頼み込まれるまで寝ているという生活をしていただけだ。結果として後手に回り、其のうちに無鉄砲な若いのが箱を斬って破壊してしまったのだ、しかもよりにもよって最高ランク「ハッカイ」の箱であった。結果は全回の解説通り、呪いの方向性を持ったまま処理できないほど細かく、だが無視できるほど弱くは無い状態に霧散してしまい、一族纏めて呪われてしまった訳だ。
当然だが、此処で小物らしい返答をしていた場合本気で見限って居た所である。
そろそろ筆おろしかと思ったら、抱き着いて来て押し倒すまで着て置いて陽希が寝息を立て始めた。
そういや、小さい頃はこやつと縁側日向ぼっこでお昼寝しておったな?
まさかこの期に及んで性欲より疲れと眠気の方が先に勝つとは、本気でまだまだ早そうじゃな?
呪いを多少喰らって居た分で体力を消耗しきって居たのか。
これからは食事内容をそっち方向に調整するとしようか。
まあ良い、時間は未だ有るし、もうちょっと待ってやるとするかのう?
無意識に背中をポンポンと撫でつつ、力を抜く。
今は儂も寝てしまおう。
おやすみ。


追伸
之にて第一部完と言う事で一段落。
番外短編は何本かネタ準備してあるので、もうちょい続きます。
言ってしまうと、最終段階、九頭竜のオロチ編もネタ準備していたのですが、上手く纏まらなかったので一度斬ります。
部長がヒレナガオロチ言ってたのがその名残だったり、インマウスの影も有ったのでディープスワンズの準備とかしてました、この辺は短編で。
長々とお付き合いありがとうございました。

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