ゆびきりげんまん、指切り相手は神様でした

かぐつち

第18話 混浴

前置きも何も無しにお風呂に乱入して来た葛様に面喰って、思わずぎょっと目をむいて固まる。
いや、シミ一つ、傷一つ無い奇麗な裸身に目を奪われて、目を逸らすことが出来ない。
真っ白な肌、皺一つ、無駄な贅肉も無い奇麗な肢体、何故か得意気なその顔が、段々と赤くなってきて・・・
「こら、そんなに見つめるな、見惚れるのは解るが、何事も程々と言う者は有るんじゃからな?」
特に気にすることは無いと言う様子で軽く窘められる。
「す、すいません、長湯しすぎました?! 急いで上がります!」
その一言で金縛りが解けた様に、動けるように成ったので思わず目線を逸らせて平静を装いつつ、お風呂からあがって退避しようと浴槽の縁に手をかける。
「別にそんなもん気にもせんわい、追い出す訳でも、捕って喰われる訳でも無いんじゃから、お主は其のまま入っておれ」
今度は呆れ顔で呟き、指先でおでこを軽く押して此方の逃げる動きを制しつつ、湯桶で浴槽からお湯をすくってかけ湯を始める、先程よりも近い位置に居るので、逸らしていた視線が色々な位置に、又無意識に吸い寄せられそうになるのを、必死に自制心を働かせて誤魔化そうと努める。
胸元で桜色の先端がちらちらと見え隠れするのが落ち着かない。
かけ湯が肢体を流れて行くが、染み込む様子も無く、見事に水をはじいて玉に成っている、見た目通り若いんだなあと謎の関心をする。
「ほれ? もうちょっと其処を空けよ、狭いんじゃからな?」
「っは、はい」
思わず雰囲気に呑まれて謝罪しつつ、足を引っ込めると、特に気にした様子も無く空けた分の空間に収まった。
「ふひぃ・・・・」
湯船に浸かって一息ついたのか、可愛らしくため息を付く。
更に距離感が縮まって、心臓がバクバク言う。
不意に触れる其の身体が柔らかくて、理性が飛びそうになる。
自分も髪をタオルで巻いて一まとめにしているが、葛様のを見ると、うなじの後れ毛まで何故か可愛く見える。
寧ろ葛様は全て可愛いし、奇麗だしで完璧なのだが、輪をかけてである・・
「ほれ、何か言う事が有るじゃろう?」
「・・あ・・・えっと・・・」
思わず語彙力が消失して固まる、この誉め言葉は言語化して良いのだろうか? 怒られるんじゃなかろうか?
「思って居るだけでは伝わらんぞ? ほれほれ、言うてみい?」
答えは分かって居ると言う様子でニヤニヤと笑みを浮かべつつこっちを見て、自信満々に促してくる。
どうやら此処で返事をせずに誤魔化せる流れはなさそうだ。
「き・・・」
「き?」
「奇麗で見惚れてました・・・・」
これが精一杯だった。
此方の言葉に反応してか、葛様の笑みが深く、得意気に成る。
「まあ、若いしそんなもんじゃな、初回としては上出来じゃ」
葛様が褒めてやろうと言う調子で湯の中で身じろぎして近づき、手を湯の中から上げて頭を撫でられる。
撫でられた事よりも、近づいて来た事で、肌の接触面が増えた事の方が大事で。
(近い近い近い・・・)
(柔らかい・・・)
と、そんな感じに頭の中の思考が煩悩に支配されて固まり、心臓の高鳴りが酷い事に成り、顔が史上最高位に熱くなり。
「ん? のぼせたか?」
葛様が不意に困り顔で首を傾げて、こちらの鼻の下を指さす。
「え?」
何気に手をその指示通りに持って来て、確認する、汗なのか濡れた感触が有った。
触れた手を見ると、赤かった。
「鼻血じゃな、のぼせたんじゃろう、今日は一旦上がっておいた方が良さそうじゃな?」
特に気にする様子も無く、風呂から上がるようにと葛様に指示される。
「はい、すいません、先に上がります」
内心で後ろ髪をひかれながら、浴槽から勢いよく立ち上がる。
くら?
一瞬視界が揺れた気がしたが、気にせず身体を拭きつつ、風呂場から脱衣所に退避する。
其処で気が緩んだのか、一人でバタンと床にうつぶせで倒れ込んだ、因みにギリギリ最低限の受け身は取った。

「からかい過ぎたか・・・? やっぱり未だ色々早そうじゃな?」
スーッと言う感触で一気に頭が冷えて薄れる意識の中、呆れ気味の葛様の声が聞こえた気がした。

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