ゆびきりげんまん、指切り相手は神様でした

かぐつち

第12話 二人の朝食

布団から出て自分の身体を見る、何故かふりふりのネグリジェを着ていた・・・・
女物のネグリジェは自分の手持ちのラインナップには無かったのだが、いつの間に・・・・
「食材は勝手に使わせてもらった、もう朝飯は出来るぞ、お主はとっとと顔を洗って来い」
自分のツッコミを入れたい衝動はソコソコに、葛様が浴衣にエプロンを付けて手際良く料理していた、自分の部屋だと言うのに既に異空間なのかと言う感覚を覚える、部屋はかたずけて置いてよかった・・・・
「はい・・・」
元からだが、最早此方に主導権は一切無かったので、言われるままに顔を洗って、流石にこのフリフリでは違和感が有るので部屋着のTシャツとスカートに軽く着替える。

「おや、着替えたか、全く、おぬしらの時間は短いんじゃぞ? もっとテキパキ動かんか」
戻ってくる頃には、後はほぼ盛り付けて運ぶだけと言う状態の朝食が出来上がっていた。
「すいません・・・」
思わず謝りしつつ出来上がっている食事を食卓に運んでいく。
葛様は勝手知ったる何とやらと言った様子で料理の仕上げとして盛り付け、みそ汁に細ネギを散らしていた。
味噌汁の具は豆腐とキャベツで薬味にネギ、おかずはベーコンエッグ、パリパリの塩キャベツ、炊飯器の御飯は炊き立てと言う、自分の家の食卓だと言うのに朝食にはとても豪華な感じの食卓が出来上がっていた。
因みに、自分だけだとみそ汁と御飯にふりかけだけとなると言うか、平日はトーストにバターと牛乳だけと言うのも結構良くあるので、一汁二菜は感動的である。
又、一人暮らしでの洗い物は重労働なので、食器は朝昼洗い物を貯めて夜に纏めてと言う生活なので、2人分の食器に足りないと言う事には成って居ないので、ある意味ずぼらで助かったと思う。
「これで全部じゃな、さて食え」
食卓に着くと、とても良い笑顔で促される。
「それでは、頂きます」
覚悟を決めて頂きますと手を合わせて会釈をして食べ始める、何の捻りも無く美味しかった。
「如何じゃ? 口に合うかのう?」
此方の答えは解って居ると言う様子だが、自信九割不安一割と言った感じで此方を見ている、年上の筈だがぱっと見では年下だし普通に可愛い。
昔、小さい頃逢った時は只の親せきで、年上の立派なお姉さんだと思っていたのだが、此方の成長に合わせて視線が変わったのか、何もしなければ年下だと認識する様な見た目に成って居る。
中身は理解するほど、人の枠で収まる人物では無いと実感できるのだが・・・
「美味しいです」
食事については文句のつけようが無かった。
「其れは何よりじゃな」
葛様はその一言で十分と言う様子で笑みを深くする、其の笑みに何と言うか、見とれた。
「どうした?」
葛様がキョトンと首を傾げる。
「いや、奇麗だったので・・・」
予想外の一言だったのか、一瞬目を見開いて驚いた顔を浮かべた後、けらけらと笑い出した。
「世辞を言っても何も出んぞ?」
「昨日の服と援護攻撃と借りた刀に、今朝の御飯まで出てきました」
お約束の言葉を、其のまま打ち返して見る。
「そう言えばそうじゃったのう」
甘やかしすぎたかな? と、小さく呟いたのが聞こえた。
「其れなら此処迄送った分も追加じゃな」
「はい、有り難うございました」
「どういたしましてと、そんな事を言って居ると儂からの貸しで雪だるまじゃな」
「その通りです」
実際、恐らくこの人(?)が居なかった場合、自分自身今迄生きて居るのか怪しいので、借りと言う意味ではてんこ盛りである。
「まあ、先に飯を食え、冷めるぞ」
「はい」
その言葉に従って食べ始めた。

「御馳走様でした」
食べ終えて頭を下げる。
「お粗末様、もう良いのか?」
「はい、十分です」
同年代の運動部等の平均と比べて少ないかも知れないが、今の所御飯はどんぶり一杯で十分だ。
「全く、もう少し材料を揃えて置かんか、腕の振るい甲斐が無いわい」
「其れはすいません」
自分でも、こんな料理に有り付けるのならもっと食材を買って置くべきだったと、少し残念に思う。
「次回が有ったら腕を振るってやるから、楽しみにして置くが良い」
「楽しみにしておきます」
次回が有りそうなので、素直に喜んでおく。
「所で、あのネグリジェは?」
今更突っ込んだ。
「儂の趣味じゃ、可愛いじゃろう?」
あっさりと自供した。
「可愛いですけど・・・」
其れは認める。
「お主の女装による双性の魔除けは、可愛いほど、奇麗なほど、外見で違和感無く女の子で有るほど効果が有るんじゃから、可愛く着飾る事を躊躇うな、儂が常に付いてる訳じゃ無いんじゃからな?」
「はい」
何気に常に付いてくれる訳でも無いと言われて、少し残念に思う。
「なんだ、残念そうじゃな?」
葛様はにやにやと笑って居た。


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