【第二部完結】アンタとはもう戦闘ってられんわ!

阿弥陀乃トンマージ

第21話(2)大混戦!決勝開戦

「向こうは戸惑っているで!」

「よし、先手を取れるよ!」

 大洋は閃の言葉に頷き、電光石火に刀を構えさせる。

「喰らえ! 横薙ぎ!」

「おっと!」

「ふん!」

 電光石火の横に薙いだ刀をシーサーウシュは左足裏で、鬼・極は刀でそれぞれ受け止める。

「くっ、流石の反応だな!」

「ほい!」

「ぐっ!」

 シーサーウシュは左足で刀を跳ね返すと、即座に屈みこんで、右足で電光石火の左脚を払う。電光石火はバランスを崩し、仰向けに倒れる。間髪入れず、シーサーウシュは前宙返りをして、右足のかかとで電光石火を踏み付けようとする。

「速攻でとどめさあ!」

「うおっ!」

 大洋が電光石火の機体を後転させて、かかと落としをなんとか躱す。隼子が驚く。

「あ、危なっ!」

「一旦距離を取ろう!」

「分かっている!」

 閃の言葉に答えると同時に大洋は電光石火を後退させる。

「縮地!」

 シーサーウシュがあっという間に電光石火との距離を詰める。大洋が舌打ちする。

「ちっ、これがあるか!」

「頭部のバルカンで牽制だ!」

「よしっ!」

「ほっ!」

「何 」

 電光石火は頭部からバルカンを発射するが、至近距離にも関わらず、シーサーウシュはそれをあっさりと躱し、電光石火の懐に入り込む。隼子が悲鳴のような叫び声を上げる。

「な、なんちゅう反応速度や!」

「シーサーナックル!」

「ぐおっ!」

 シーサーウシュの強烈な右拳が電光石火に当たり、電光石火は吹き飛ぶ。相変わらずオープン状態になっている回線のままだが、それに構わずいつきが歓声を上げる。

「やった!」

「! まださ!」

「えっ 」

 修羅の言葉にいつきが驚いた次の瞬間、電光石火の蹴りがシーサーウシュに当たり、シーサーウシュが仰向けに転がる。修羅が舌打ちする。

「ちぃっ!」

「そ、そんな! 後ろに吹き飛んだと思ったのに!」

「直前で機体を捻って、直撃を躱したさ……」

「距離を詰めたのはどういうことですか? まさか向こうも縮地を 」

「刀を地面に突き立て、強引に反動をつけてきた……プロレスのロープワークの要領だね」

「そ、そんな無茶な……」

「なかなかの格闘センスだね……」

 修羅はシーサーウシュの体勢をすぐさま立て直して感心したように呟く。

「回線がオープンだから丸聞こえなんだけど……お褒め頂いているよ、大洋」

 閃が苦笑交じりで大洋に話しかける。

「……型破りな戦闘に付き合っていたらこちらの身がもたん」

「適切な状況判断が出来ているようで良かったよ」

「次に取るべき手は……一つ!」

「むう!」

 電光石火は刀を構え直すと、すぐに鬼・極に斬りかかるが、再び刀で受け止められる。

「くっ!」

「この国内有数の刀匠に打ってもらった刀、『鬼刃』に対して鍔迫り合いを挑むとは……身の程知らずでごわすな!」

 接近している為、幸村の声が電光石火のコックピットに響く。隼子が戸惑う。

「な、なんちゅうパワーや!」

「ふん!」

「ぐっ!」

 再び電光石火は鬼・極に押し返される。

「今度はこちらからしかくっ!」

「飛んだ 」

「チェストー 」

「うおっと 」

 鬼・極がジャンプして、刀を振り下ろす。大洋は受け止めようとしたが、寸前で回避に切り替える。振り下ろした刀が地面を抉ったのを見て、隼子が戦慄する。

「あんなのまともに喰らったら……」

「『薩摩の剣は初太刀を外せ』と、先人はよく言ったものだよ! 大洋、反撃だ!」

「おう! うっ 」

 閃の声を受け、反撃に移ろうとした大洋だったが、それよりも速く鬼・極が激しい勢いで斬り掛かってくる。大洋はこれもなんとか躱す。

「むん!」

「ちいっ 」

「何度も躱されるならば当たるまで打ち込むまで!」

 鬼・極が三度斬り掛かろうとする。

「この!」

「ぬ 」

 大洋は電光石火を敢えて前に急加速させ、鬼・極と機体同士を思い切り衝突させる。両機はそれぞれ仰向けに転がる。大洋は一瞬、意識が飛びかけるがなんとか持ち直し、頭を左右に振って、電光石火を鬼・極から距離を取らせる。

「……む、無茶するなや! 当たり屋やないねんから!」

 やや間があってから意識がまともに戻った隼子が叫ぶ。

「イチかバチかうまくいった!」

「イチかバチかって!」

「や、やはり近距離戦では苦労しそうだね……」

「ああ……ん 」

 閃の呟きに大洋はこくりと頷いた後、目を見開く。シーサーウシュが鬼・極に猛然と襲いかかったからである。

「そらっ!」

「!」

「おっ 」

 シーサーウシュの繰り出した鋭いキックを鬼・極が刀で受け止める。いつきが驚く。

「反応した 」

「転がって不安定な体勢だと思ったんだけどね~」

「なむっな!」

 幸村はそう叫んで、シーサーウシュを豪快に押し返す。今度はシーサーウシュが転倒しそうになる。修羅が戸惑うように声を上げる。

「おおっ 」

「今や!」

鬼・極の体勢を立て直し、シーサーウシュに向き直り、刀を振ろうとする。

「そらっ!」

「なっ 」

 幸村は驚く。転倒しそうになったシーサーウシュが右脚で踏ん張るとほぼ同時に踏み切り、宙に舞って回し蹴りを放ったのである。鬼・極は思わぬ角度からの攻撃を右側頭部に喰らい、機体をよろめかせる。

「畳み掛ける!」

「くっ!」

「むっ!」

 空中でバランスを取り直したシーサーウシュが今度はサッカーのオーバーヘッドシュートのような体勢になって左脚で蹴り掛かるが鬼・極がそれを右肘で受け止める。

「おりゃ!」

「どわっ!」

 鬼・極が刀を勢いよく振り上げる。シーサーウシュはなんとか直撃を躱すが、激しい風圧に押されて、後方に飛ばされる。いつきが驚き、修羅が舌を巻く。

「な、なんというパワーとスピード……!」

「こりゃあ思った以上に手強いね~」

(ま、まるで生身の体を動かすかのように機体を自由自在に操っちょっ……。そげん操縦機構だということは分かってはいたが、どうしてなかなか厄介であっと……!)

 幸村は肩で息しながら、シーサーウシュについての印象をまとめる。

「あ、あれ? 銀くん、三組とも無事みたいですよ?」

「う、うん、金ちゃん、こちらも確認したよ……」

「「「!」」」

 そこに二体の茶色いカラーリングの機体があまりにも不用意すぎる状態で近づいてくる。

「あ、あれは……?」

「TPOグラッスィーズだね、正直忘れていたよ……」

 隼子の問いに閃が答える。大洋が二体に向かって電光石火を突っ込ませる。

「恨みはないが、この均衡した流れを変えるきっかけにさせてもらう!」

「よっと!」

「飛んで火にいるなんとやらじゃ!」

 同じことを考えていたのか、シーサーウシュと鬼・極もその二体に突っ込む。

「うわわ!」

「ど、どうします  銀くん 」

「お、応戦です!」

 TPOグラッスィーズが慌てながらも手に持っていたライフルを発射する。

「当たらん!」

「ひょいっと!」

「その程度か!」

 わりと素早く正確な射撃であったが、電光石火ら三機はこともなげに躱す。

「……結構やるようだ、どうする銀?」

「……面倒だがそろそろ本気を出すぞ、金」

「「「 」」」

 TPOグラッスィーズの纏っている雰囲気が急に変わったことに三人は驚く。

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