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【第二部完結】アンタとはもう戦闘ってられんわ!

阿弥陀乃トンマージ

第19話B(1)極限まで削ぎ落とした結果

※分岐ストーリーになります。

19話Aと時間軸は同じです。

                  19B

「ふむ……ハンバーグカレーに外れなし……」

「味覚がお子様じゃないか」

 ハンバーグを頬張る水狩田を見て、海江田が笑う。

「……そんなことより続きを」

 水狩田は少しムッとしながら、海江田に話を促す。

「ああ、スポンサーから条件変更の通達があってね」

「条件変更?」

「ああ、この大会ベスト8からベスト4以上に入るようにとのお達せだ」

「そうか」

「あら? 文句の一つでも言うかと思ったら」

 海江田は水狩田の反応に意外そうな顔を見せる。

「……全国大会から西日本へと大会規模が縮小されたようなものだから……この大会でベスト4に入ることは実質全国ベスト8ということだ。開催される予定の東日本大会がどういう大会形式がいまいち不透明ではあるけど」

「すんなり納得してもらったようで良かったよ」

「どの道、優勝するつもりだったし」

「~♪ それは頼もしい限りだね」

 海江田は小さく口笛を鳴らす。

「ごちそうさま……じゃあ、最終確認と行こうか」

「え? ここで?」

「ああ、いちいちテントに戻るのも面倒臭い」

「そうは言ってもね……」

「自分で言うのもなんだけど、私の集中力が保たれている内に済ませた方が良いよ……」

「自分で自分のことはよく分かっているわけだね……しかし、ここで作戦会議というのはねえ……色々聞かれるとマズいんじゃない?」

「聞かれたところでさして問題はない」

 水狩田がテーブルに頬杖を突いて呟く。

「おいおい! えらい舐めたことを言うてくれるやないか!」

 顔を含めた全身を真っ白な包帯で包み込んだ小柄な男が立ち上がり、水狩田たちの座るテーブルにずかずかと近づいてくる。

「なんかやって来たな……」

「そりゃあ、他の関係者も利用する食事用テントだからね……」

 海江田が片手で軽く頭を抱える。

「試合前に一つ挨拶でもと思うとったが……熊本のなんとか言う会社やったな、全国でもそこそこレベルのチームが偉そうやな!」

「なんとかじゃない、カチコチカルビだ……」

「一八テクノね……」

 水狩田の発言を海江田が冷静に訂正する。

「なんでもええわ。こんなとこで作戦会議をおっぱじめようなんて、大した自信やな?」

「疑問形じゃなくて、確信があるんだよ」

「確信やと?」

「そう、私たちはこのレベルで負けるはずがないという確信だよ」

「! い、言ってくれるやないか……」

「悪いけど、実戦経験の差が圧倒的だ……くぐってきた修羅場の数が違う」

 全身包帯の男がわずかに覗かせた口元を歪める。

「そ、そない余裕ぶって足元掬われても知らんで?」

「少なくともアンタ程度には掬われないから」

「な、なんやと 」

 包帯男が激昂し、水狩田に飛び掛かろうとする。

「やめろ、包帯……」

「ガ、ガムテ 」

 包帯男の肩をこれまた顔を含む全身を黒いガムテープで包み込んだ大柄な男がガシッと掴んで制止する。

「水狩田もやめときな」

「……」

 海江田の言葉を受け、水狩田は左手に持ったフォークを静かにテーブルに置く。

「お姉ちゃんたち、堪忍やで」

「気にしないで」

 ガムテ―プ男の言葉に海江田は右手を挙げて応える。

「ほら、さっさと行くで、包帯。全くお前というやつは……下手に揉め事を起こしたらどうなるか分かっとるんか?」

「せ、せやけどなガムテ。そもそもとしてあの姉ちゃんがけったいなことを言うから……」

 ガムテープ男に連れられながら包帯男がテントを出ていく。

「けったいなのはどっちだよ……」

「結構マジだったね」

 海江田がからかうように水狩田に声をかける。

「思った以上のスピードだったものでつい身近な道具に手が伸びた……結構な運動能力というか速さだね」

「どうする、作戦会議?」

「周りの注目を集め過ぎた……会社のテントに戻ろう」

 水狩田は食器をテキパキと片付けると、スタスタとテントを出ていく。海江田は苦笑交じりにその後をついていく。それから約一時間後……。

「Cブロック、試合開始です!」

 審判のアナウンスが試合会場に響き渡る。

「さて……どうする?」

「この機体はそこまで機動性に富んでいるわけじゃない。焦らず相手の出方を伺う……」

「OK、プランに変更なしね」

 水狩田の淡々とした言葉に海江田が頷く。

「……来たようだ」

 水狩田の言葉通り、彼女たちの駆る機体、二機のエテルネル=インフィニに急速に接近する二つの反応がモニターに確認された。

「!」

 エテルネル=インフィニの周囲に何発か爆発が起きる。爆弾が投下されたのだ。モニターに包帯男が映る。包帯男が水狩田たちの姿を見て口を開く。

「ふふん! ほんまにそないなけったいなレオタード姿で戦うつもりなんやな?」

「だからけったいなのはどっちだよ……全身包帯とガムテの男たちに言われたくないよ」

 水狩田がウンザリしたような口調で返す。

「この新びわ湖航空が開発した、最新鋭の『白鳥』と『黒鳥』で自信たっぷりなお前らの足下を掬ってやるで!」

「足下っていうか、頭上じゃん……」

「しかし、すごい飛行スピードだね……」

 海江田が感心したような声を上げるのを聞くと、包帯男が自慢気に答える。

「そうやろう! そうやろう! 極限にまで無駄を削ぎ落とした機体やからな!」

「もしかして、その包帯って……」

「そうや! 軽量化の一環として、パイロットスーツの代わりに採用したんや!」

「また極端なことを……」

 水狩田が呆れたような声を上げる。

「とにかく、お前らの機体が空は飛べんのは分かっている! このまま、空からの爆撃でお前らは手も足も出ずに終いや! 覚悟しろや、『極悪お姉さん』たち!」

「! その呼び名、嫌いなんだけど……」

「なんや? 文句あるならかかってこいや……って何いっ 」

 海江田が操縦するインフィニ一号機が鞭を水狩田の搭乗する二号機に巻き付けて、上空に向かって勢いよく放り投げ、白鳥たちと同じ高度に達する。海江田が笑う。

「水狩田が言っただろう? くぐってきた修羅場が違う。飛べないのならそれなりの戦い方ってものがあるんだ」

「さすがにこういうのはあまり経験ないけど……」

 水狩田はボソッと呟いて、機体にクローを構えさせる。

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