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【第二部完結】アンタとはもう戦闘ってられんわ!

阿弥陀乃トンマージ

第18話B(1)艦内風景

※分岐ストーリーになります。

18話Aと時間軸は同じです。


                  18B

「オーセンよ、本当に良かったんか?」

「なにが?」

 ビバ!オレンジ号のラウンジで隼子が閃に尋ねる。

「いや、なにがって大洋を向こうに一人で行かせたことや」

「まあ、可愛い子には旅をさせよって言うし……」

 閃はオレンジジュースを飲みながら呑気に答える。

「旅って……」

「本人がパイロットとしての力量不足を感じたんでしょ。それを補う為に個人で視野を広げようと思ったのなら、それはなかなか止められることじゃないよ。まわりまわって私たちの為にもなるわけだしね」

「そらそうかもしれんけどやなあ……」

「正妻として不安になる気持ちは分かるけどね」

「だ、誰が正妻やねん!」

 隼子は顔を真っ赤にしながら首を振る。その様子を遠巻きに眺めながら、ユエとタイヤンが会話する。

「俺たちは疾風大洋について行かなくて良かったのか?」

「……流石に三人も一緒に移るのは許可されなかったでしょ。こちらの艦も戦力が潤沢っていうわけじゃないし」

「ならば俺かお前がどちらかがついて行くのは?」

「それにしたって不自然過ぎるわ。咄嗟に理由も思いつかなかったしね」

「……大丈夫だろうか?」

「念の為、界隈には偽の情報を流しておいたわ」

「偽の?」

「ええ、色々とね……」

「そうか、なるほどな……」

 タイヤンが納得したようにこくこくと頷く。その二人を離れたところで腕組みしながら、ウルリケが見つめる。梅上が声をかける。

「どうしたの、そんな難しい顔をして?」

「我々奇異兵隊は常人より耳が良いのですが……」

 ウルリケはニット帽を外して、オオカミ耳をわざとピクピクさせる。

「ああ、実質四つあるわけだからね……それで?」

「あの二人……」

 ウルリケは顎をしゃくって、さり気なくユエたちを指し示す。

「え? ユエとタイヤン? どうかしたの?」

「こちらに聞こえてくる内容と口の動きが違いますね」

「そ、そんなことが出来るの?」

「どうやら出来るようですね」

「な、なんのために?」

「聞かれるとマズいことを話しているようですね」

「マズいこと……?」

「それが何かまでは分かりませんが」

「そもそもあの二人何者なのかしら? どう見ても少年少女だけど……」

「注意していた方が良いかもしれませんね。他の面子は警戒心が薄すぎます……」

 ウルリケは呆れたような視線を周囲に向ける。松下と太郎が将棋を指している。

「王手」

「ま、待った!」

「待ったは無しだぞ、太郎」

「う、うう……」

「何をしているのかと思ったら将棋か」

「あ、美馬さん……あ、あの、自分は奇異兵隊の隊長なんです」

「見かけによらずそうらしいな」

「経験豊富な松下さんからリーダーとしての心構えを教わろうと思いまして……」

「それで将棋か、おっさんが自分の趣味に付き合わせているだけじゃないか?」

 美馬はからかうような口調で松下に話しかける。

「将棋というのは色々なことを学べる……」

「そういうものか」

「大体、美馬よ、お前は向こうの世界に行った十年前に十八歳くらいだったのだろう? それならば俺とそんなに歳は離れていないだろうが」

「向こうとこの世界は時間の経過は違うようだからな、単純に歳を十足すわけではない」

「ふん、そうきたか」

 松下は苦笑を浮かべる。

「美馬の兄貴!」

 玲央奈が駆け寄ってくる。

「なんだ……?」

「兄貴に聞きたいことがあるんだけどよ!」

「兄貴はやめろ……」

 美馬はうんざりした顔になる。

「ポッローリでの武勇伝を聞きたいんだよ!」

「パッローナだろう……」

「それだ! 話を聞かせてくれよ!」

「断る……」

「頼むよ~救世主さんよ~」

「ちょっと馬鹿にしているだろう……」

「そんなことないって!」

「その手の話なら、ナーにでも聞けば良い……」

「いや、それがご覧の通りでよ……」

「?」

 美馬が視線をやると、三人の男女がワイワイと騒いでいた。

「オーウ! ナイスなマッスルね、ミスター竹中!」

「ホンマや、二頭筋がデカいで! まるでダチョウの卵や!」

「はっはっは! そういうお前らもナイスバルクだぞ!」

「そ、そうかな……」

「そうだ、波江! 肩が三角チョコパイだぞ!」

「うわ、自分ええなあ! ええ感じの掛け声かけてもうてるやん!」

「ナー! お前も良いぞ! 背中がカブトムシの腹のようだ!」

「ホンマか! クワガタとちゃうんか 」

「いいや! カブトムシだ!」

「カブトムシか!」

「……あんな感じでマッチョだけの世界に行ってしまってよ……」

 玲央奈が肩をすくめる。

「馴染んでいるのならそれはそれで喜ばしいが……」

 美馬がため息交じりに呟く。その時、ラウンジに警報が鳴り響く。

「広島市郊外から救難信号をキャッチ! 黙って見過ごすわけにはいかないわ! 全機直ちに出動して頂戴!」

 アレクサンドラからの通信が入る。全員が格納庫へ走り、順次出撃する。飛行機能があるテネブライと戦闘機形態に変形したファンとヂィーユエが先行して、現場付近に着く。

「こ、これは……?」

 タイヤンが首を傾げる。ユエが美馬に尋ねる。

「救世主さん、心当たりは 」

「……どうだ、ナー?」

「いいや、さっぱりや!」

「どうなっているの 」

 アレクサンドラからの通信にユエが答える。

「映像を繋ぎます……」

「な、なに、これは 」

 そこにはかなりの大きさでかつ透明なアメーバ状の生物が何十匹も空中を浮遊している様子が映っていた。

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