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【第二部完結】アンタとはもう戦闘ってられんわ!

阿弥陀乃トンマージ

第16話(2)心がピョンピョンする

「軍隊でその恰好はどうなんだという話だな……」

 タイヤンが訝し気な表情で話す。

「まあ、ほら、ウチは自由な社風が売りだから」

「いや、勝手に決めんといてもらえます 」

 アレクサンドラの言葉に隼子が眉をひそめる。そこに警報が鳴り響く。大洋が驚く。

「何だ 」

「セバスティアン!」

「……島の北端にタエン帝国の機体、プロッテが八機上陸した模様です」

 セバスティアンが冷静に情報をアレクサンドラに告げる。閃が首を傾げる。

「……タエン帝国が思いっ切り兵を出しているけど?」

「セバスティアン!」

「……地球圏連合も一枚岩ではないということ、こちらのコネクションがやや弱かったこと、情報が錯綜している間にお嬢様の身柄を確保するか、始末してしまおうと現場レベルに近い者が判断したということ……などなど、複合的な理由が考えられます」

「……ですって!」

 アレクサンドラは腕を組んで皆に告げる。

「い、いや、ですって! ってドヤ顔で言うてる場合ちゃいますがな!」

「ジュンジュン、まずは落ち着こう」

 閃が隼子の背中を優しくさすり、隼子は幾分か落ち着きを取り戻した。

「せやかてオーセンよ……どないするこの状況?」

「ユエとタイヤンはひとまずお嬢様と執事さんを戦艦まで送り届けて!」

「なるほど、ここにいるよりは安全ね! ……でも敵さんもそれは百も承知じゃない?」

「恐らく島の南端部のこちらに最速距離で向かってくるはず!」

 閃は情報端末のディスプレイを周りに見えるようにして、説明を続ける。

「敵は島の中央を進んでくるだろう。そこを左翼から私の『電』で砲火、右翼上空からジュンジュンの『石火』で爆撃する……」

「挟撃するってわけね」

 ユエの言葉に閃は頷く。タイヤンが問う。

「その後はどうする?」

「足が止まった相手の正面から大洋の『光』が突っ込む!」

「しょ、正面からとは流石に素直過ぎないか?」

「いや、案外こういうのが効果的なのよ」

 タイヤンが戸惑うがユエは太鼓判を押す。タイヤンは尚も首を捻る。

「そうだろうか?」

「そうよ、ただ……」

 ユエが閃の方を見る。

「大洋と言えど、八機全ては無理じゃない、撃ちもらしがあったらどうするの?」

「大洋の機体とプロッテのデータを比較したところ、かなりの性能差を確認した。相手は無理せず、後退を選ぶはず……そこで『奇異兵隊』の出番ってわけなんだけど……」

「! あ、は、はい、えっと……」

 奇異兵隊のリーダーである太郎は自分たちが呼ばれるとは思っていなかったようで、慌てて前に進み出るが、ブーツの紐でも絡んだのか、派手に転んでしまう。

「ううっっ……」

 太郎はそのつぶらな瞳に大粒の涙を浮かべている

「泣くのは全部終わってからにしな、太郎。すまねえ、代わりに特攻隊長のオレが聞く」

「ならば……」

 閃は玲央奈に説明する。説明を聞いて、玲央奈は両の拳を突き合わせる。

「……よく分からねえが、要は暴れれば良いってこったな!」

「う~ん、思った以上に脳筋タイプか……まあ、いいか」

「ええんか 」

「ほらほら、時間が無いよ、各自出動だ」

 閃がポンポンと両手を叩く。各人がそれぞれの持ち場に散る。大洋が倉庫に置いてあった光に乗って即座にモニター画面を確認する。

「さて……相手は閃の読み通り、真っ直ぐこちらに向かってくるな」

「島民や軍港関係者の居住地域に到達する前に足止めするよ!」

 大洋に閃から通信が入り、それと同時に閃の駆る電が左腕のガトリングガンを発射する様子がモニターに飛び込んできた。

「続くで!」

 隼子が石火を戦闘機形態のまま飛行させ、上空から爆撃を仕掛ける。電の攻撃とともに、固まって動いていたプロッテの部隊に命中する。部隊は動揺したように見られた。この隙を逃さず、大洋が光を勢いよく突っ込ませ、相手に向かって斬りかかる。

「喰らえ、横薙ぎ!」

 光の持つ名刀光宗が四機のプロッテの脚部を一気に切断する。バランスを失った四機は地面に崩れ落ちる。

「よし! 続いて…… 」

 残りの四機のプロッテは既に後退を始めており、光と距離を取っていた。

「冷静な判断だね!」

「逃がすか!」

「おおっと、兄ちゃん! 美味しいところはオレらに任せてもらうぜ!」

 光のモニターに四人の男女が映る。

「奇異兵隊か!」

「いっくぜー!」

 玲央奈が叫び、島の北端に後退していたプロッテ四機に追い付く。

「あ、あの機体は?」

「珍しい、四足歩行型の機体だね」

 大洋の問いに閃が答える。モニターには白いカラーリングを基調とした、獣のような形状のロボットが高い機動力で退却しようとするプロッテに接近する。

「狩ってやるぜ!」

 玲央奈の威勢の良い叫び声とともに彼女の乗る、四体の中では中くらいの大きさであるロボットが文字通り噛み付き、プロッテの右腕部と右脚部を同時に噛み千切る。

「か、噛んだ 」

「ライオン型ロボットか……」

 驚く隼子とは対照的に閃は冷静に呟く。

「へへっ、どうだ!」

「いちいち騒がしい奴だ……もっとスマートに狩れんのか……!」

 今度はウルリケと名乗った女のクールな声が聞こえてくる。それとほぼ同時に、四体の中ではやや小さい機体がプロッテの左脚部を自身の左前脚で裂き、続け様に首の部分に飛びついて噛み切った。プロッテの頭部が虚しく地面に転がる。

「ま、また噛みよった 」

「冷静に喉元を噛み千切った……狼型ロボットかな」

「さっきのよりは俊敏性に優れているな」

 落ち着いて分析する閃に大洋が同調する。

「次はミーの番だな!」

 ベアトリクスと名乗った女が、自身の駆る大型のロボットを突っ込ませ、プロッテの頭部を掴み、持ち上げて、地面に叩き付ける。プロッテは動かなくなった。大洋が驚く。

「大型のわりに結構素早いな!」

「速さと強さを兼ね備える……熊さん型ロボットかな」

 閃の言葉に頷きながら、大洋が戦況を確認する。

「残り一機だ!」

「ミーが行くぞ!」

「待て、トリクシー……大事な出向初陣だ、ここは我らが隊長に華を持たせろ」

「む……仕方が無いな」

「アホナも良いな?」

「玲央奈だ! わざと間違えてんだろ!」

「それはスマンな、日本語はまだまだ不得手でな」

「本当に不得手な奴が不得手とか言わねえんだよ!」

 奇異兵隊の賑やかなやりとりがそのまま大洋たちに通信される。隼子が呆れる。

「や、やかましい連中やな……」

「でも、実力は確かでしょ!」

 アレクサンドラが通信に割って入ってくる。得意気に胸を張っている。

「さっきまで、『正直ハズレ掴まされたかも……』ってネガティブだったのに……」

「ちょいちょい、ユエ! 状況というのは絶えず変化するものなのよ!」

 アレクサンドラは脇から茶々を入れるユエをたしなめる。

「さて、隊長機はどのような機体なのか……」

「四体の中では一番小さい機体やな」

「獅子、狼、熊ときて……狐かな?」

「狸はダメか……?」

「ダメかってなんやねん」

「パンダに夕飯の豚骨ラーメンを賭けるわ!」

「ユエ、お前まで混ざるな……」

「……タイヤンの!」

「俺の 」

「はっはっは! どうやらエブリワンの注目がタロウに集まっているようだな!」

「期待に応えてみせろ、太郎……」

「ビシッと頼むぜ、太郎!」

「ううっ……い、行きますよ!」

 太郎が涙目になりながら機体を動かす。頭部のアンテナが二本伸びる。

「あ、あれは 」

 大洋が驚く。閃が顎に手をやって呟く。

「まるで長い耳……成程、ウサギさんか」

「ウ、ウサギ型ロボットやと 」

「……タイヤン、全員に奢りね」

「何で俺の一人負けなんだ 」

「どうやって戦うのかしら……?」

 アレクサンドラが興味津々に呟く。

「ううっ……モニター越しでも皆さんの視線がヒシヒシと……」

「太郎、いつもの奴カマシてやれ!」

 玲央奈が檄を飛ばす。太郎が機体の両の前脚を頭部の両脇に持ってくる。前脚の先端は折り曲げている。

「『ウサギピョンピョンミピョンピョン♪合わせてピョンピョンムピョンピョン♪』」

 太郎の機体はしゃがみ込んだような体勢のままで前後左右にピョンピョンと跳ねる。戦場を一瞬沈黙が支配する。

「こ、これは……大洋……」

「あ、ああ……」

 閃の問いに大洋が頷く。

「「カワイイから良し!」」

「良いことあるか!」

 何故か声を揃える大洋と閃に隼子が突っ込む。

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