私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~

阿弥陀乃トンマージ

とりあえず採用

「というわけで彼女が私の護衛役を務めることになった西東イザベラさんです!」

 翌日、葵が将愉会の会室に集まった将愉会の爽と小霧と景元に伝える。

「「「……」」」

「あ、あれ、皆反応が鈍いな~どうしたのかな?」

「……だからどうしたもこうしたも、なにがどうなったらそんなことになるんですの 」

 小霧が椅子から立ち上がって、葵に問いかける。

「せ、生徒会長からの紹介で……」

「生徒会長の?」

「そう、腕は確かなんだって!」

「腕は確かって……」

「こう言ってはなんですが胡散臭いですね……」

「それは百も承知だよ」

「承知してしまったんですの……」

「一も十も承知してはならないでしょう……」

 小霧と景元がそれぞれ頭を抱える。爽が黙ってイザベラの方に目をやる。イザベラは黙って爽を見つめ返す。

「……」

「……まあ、今回の夏合宿で城下を離れるに当たって、護衛を増やした方が良いだろうとはわたくしも一応考えてはいました」

「そうなんですの?」

「ええ、出来れば女性の方をね。黒駆君だけではどうしても限界が生じます。特に合宿は例えば女湯など、彼が入ってこられないような場所がありますからね」

 爽の言葉に葵は笑う。

「秀吾郎なら構わず忍び込みそうだけどね」

「流石に最低限のモラルは備えているとは思いますが……」

「職務熱心なあまり、モラルを破りがちな傾向があるよ」

「それは随分と困った傾向ですね……」

 爽は首を傾げながら、改めてイザベラの方に向き直る。

「西東さん? わたくしの方からいくつか質問してもよろしいでしょうか?」

「構わなイ……」

「西東イザベラ、御本名ですか?」

「半分、仮名ダ……」

「学年とクラスは?」

「二年生ということにしておこうカ」

「腕が立つというお話ですが?」

「銃器類は大抵扱えル、格闘術もメジャーなものは習得していル」

「この世で一番信用出来るものは?」

「金ダ、それ以外になイ」

「ご趣味は?」

「スイーツ食べ歩キ」

「よろしい、採用です」

 爽は腕を組んで満足気に頷く。葵たちが驚く。

「ええっ  良いの、サワっち 」

「スイーツ好きに悪い人はいませんから」

「どんな理屈 」

「お金が一番という価値観もポイント高いです。とても現実的で女性らしいです」

「貴女の価値観に疑問符が付きますわ!」

「銃器の扱いに長けているというのも心強いです」

「むしろ心配の種なんだが……」

「わたくしが反対しても、葵様のことです、どうせ採用なさるのでしょう?」

「勝手についてきちゃっているんだけどね……昨日も何度か撒こうとしたけど全然撒けなかったし……」

 葵はイザベラの方を向きながら苦笑気味に呟く。

「あの程度のスピードならばついていくのは造作もなイ……」

「なんというか、尋常じゃない気配を漂わせているじゃない?」

「ま、まあ、それはヒシヒシと感じますわ……」

 小霧がうんうんと頷く。

「でしょ? だから……う~ん、護衛役をお願いしちゃっても良いかなって♪」

「軽いな 」

 景元が驚く。

「まるでちょっと高い家電や家具を買うときの様なテンションですね」

 爽が苦笑を浮かべる。

「ということで宜しくね、西東さん♪」

「宜しくお願いします、西東さん。申し遅れました、わたくし―――」

「伊達仁爽……二年と組の副クラス長で、将愉会副会長……冷静沈着な参謀」

「リサーチ済みということですか、流石です」

「わたくしは……」

「高島津小霧……と組のクラス長、会の会長補佐……中心的な存在」

「ふむふむ、どうしてなかなか見所がある方ですわね」

「チョロいな! 僕は……」

「大毛利景元……以下省略」

「いや、略するな!」

 景元が抗議する。爽がそれを無視して、話を進める。

「改めて宜しくお願いします、西東さん」

「イザベラで良イ……」

「え?」

「そちらの方が、馴染みがあル……」

「そうですか……」

「分かった! よろしくね、ザべちゃん!」

「  ザ、ザべちゃん……?」

 葵の唐突な発言にイザベラは困惑する。

「あれ、気に入らなかった?」

「す、好きに呼べば良イ……」

 イザベラはスッと表情を戻し、葵に答える。

「よし、これで報告は終了!」

 葵が席に座る。

「では、目安箱を見て参りますので、若下野さんはお待ち下さい」

「わたくしも参りますわ」

「うん、お願いね、景もっちゃん! さぎりん!」

 景元と小霧が会室を出て行く。爽がイザベラに声を掛ける。

「愛称呼びは驚きましたか?」

「多少ナ、だガ……」

「だが?」

「不思議と悪い気はしないナ……」

 イザベラが葵を見つめながらわずかに微笑む。

「それはなにより……ああ、葵様」

「ん? 何?」

「伝えるのが遅れました。本日はお客様がいらっしゃいます」

「お客さん? 誰?」

「間もなくいらっしゃる時間です……」

「王手、アタリ、チェックメイト……」

 プラチナブロンドのロングヘアーをなびかせて女性が会室に入ってきた。

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